DX認定制度とは?取得するメリットや申請方法、事業者の一覧も紹介
「DX認定」という言葉を聞いたことはあるものの、認定制度を取得するとどんなメリットがあるのかイメージが湧かない方は多いですよね。また、DX認定制度を取得する条件や、申請方法がわからない方もいるはず。
そこで、今回はそもそもDX認定制度とは何なのか、その特徴を取得するメリット・デメリットも交えて解説します。DX認定制度を取得する条件や申請方法、申請時の注意点も紹介するため参考にしてください。
なお、次の記事ではそもそもDXとは何なのか、その特徴や導入するメリット・デメリットを事例も交え詳しく解説しているので良ければ参考にしてください。
DX認定制度とは?
DX認定制度とは「情報処理の促進に関する法律」に基づき、国が策定した基準に沿い優良な取り組みを行う企業を認定する制度です。法人や個人事業主など、すべての事業者が対象です。
DX認定制度は、下記4つのレベルに分けられます。
DX認定企業になれるのは、DX-Readyに該当する事業者です。DX-Emerging企業とDX-Excellent企業は、DX認定企業から選定されます。
DX-Readyとは、簡単にいえば「DXを導入する準備ができた状態」です。実際にDX推進の計画を実行している必要はありません。
DX推進の環境整備には時間が必要なため、DX認定は準備が整った段階で審査されます。「専門的な知識が必要なのではないか」「DXを推進する環境の整備は難しいのではないか」などと考えている人もいるかもしれませんが、のちほど紹介する条件をクリアすれば申請は可能です。
次のようなIT事業をメインにしていない企業がDX認定を取得している点からも、取得難易度は低いといえます。
DX認定を取得するメリット
DX認定企業になるには手間や時間がかかるものの、取得するメリットは多いのです。ここでは、DX認定を取得するメリットを4つ紹介します。
下記にて、それぞれのメリットを詳しく解説します。
税額控除を受けられる
DX認定を取得すると、税額控除が受けられます。DX投資促進税と呼ばれる制度で、DX認定を受けてから事業適応計画を作成・申請すれば適用可能です。
対象となるのは、青色申告を行う法人です。適用が認められると、ソフトウェアや繰延資産・器具備品・機械装置などに対して税額控除と特別償却を適用できます。
対象設備 | 税額控除 | 特別償却 |
---|---|---|
ソフトウェア 繰延資産 機械装置 器具備品 | 3%(他社とのデータ連携にかかわるものは5%) | 30% |
3%または5%の税額控除と、投資額の30%までの特別償却のどちらかを選べるため、どちらがより有利になるか検討してみてください。
なお、適用期限は2023年3月31日までです。そのため、税額控除を受けるには、早めにDX認定を取得しなければいけません。
DX投資促進税の詳細に関しては、下記国税庁のサイトを参考にしてください。
→ 国税庁
企業のイメージアップにつながる
DX認定は国が実施している制度のため、取得すれば次のような企業であることをアピールできます。
- 積極的にDXへ取り組む企業
- 積極的に新しいことへ取り組む企業
- 業務効率化に力を入れている企業
社員の残業や休日出勤などが減るだけでなく、仕事自体をスムーズに進められ生産性の向上を期待できます。企業の生産性の向上は、社員の働きやすさにつながります。そのため、DX認定取得のための取り組みを継続すれば、優秀な人材の獲得も期待できるでしょう。
このようにDX認定を取得すれば、企業イメージアップによる恩恵を受けられます。
「融資優遇措置」の対象になる
DX認定を取得すれば、対象の融資優遇措置を受けられる可能性があります。
具体的には、下記のような融資を受けられます。
融資先 | 制度内容 | 優遇内容 |
---|---|---|
日本政策金融公庫 | IT活用促進資金 | 中小企業等経営強化法の規定に基づき、DX認定を受けた方は2億7千万円まで特別利率で融資を受けられる |
情報処理の促進に 関する法律 | 中小企業信用保険法の特例 | ・情報処理システム運用・管理資金 ・普通・無担保・特別小口保険について限度額別枠 |
日本政策金融公庫では、DX認定を取得した企業を対象に「IT活用促進資金」という制度を用意しています。IT活用促進資金を利用できれば、2億7,000万円までと特別利率で融資を受けられるのです。
またDX認定を取得すれば、中小企業信用保険法の特例に該当します。この特例では、情報システム(DXを含む)の整備費用に関する融資について、普通保険などとは別枠で追加保証や保証枠の拡大が受けられます。
このように、DX認定を取得すれば各種融資優遇を受けられるため、社内のIT化を進めながらコストを抑えられるのです。
DX銘柄の候補になる
上場企業であれば、DX認定を受けるとDX銘柄の候補になれます。
DX銘柄とは、次の機関が選定する株式銘柄です。
DX銘柄に認定されると、株式市場での注目が高まり、株価の上昇が見込めます。またDX銘柄に認定されなくても、DX認定を取得するだけで株主に自社の取り組みをアピールし、事業者としての評価を高められる点はメリットです。
なお、DX銘柄に認定されるにはDX認定以外に細かい条件があり、DXを含む優れたデジタル活用実績が求められます。DX認定を取得すれば必ず、DX銘柄に選ばれるわけではありません。
DX銘柄について詳しく知りたい方は、下記IPA 独立行政法人 情報処理推進機構のサイトをご参考ください。
侍の法人サービスがわかるお役立ち資料セット(会社概要・支援実績・サービスの特徴)をダウンロードする⇒資料セットを確認する
DX認定を取得するデメリット
DX認定の取得には、手間や時間といったコストがかかります。
DX認定制度の申請に必要なDX推進計画の作成や計画の実施に必要な人材の確保、計画の実施には手間と時間がかかるのです。
しかし、社内のIT環境が整備される点や企業イメージの向上につながる点を考慮すれば、デメリット以上にDX認定を取得するメリットは大きいといえます。
DX認定事業者・一覧
下記に、DX認定事業者を一覧でまとめました。先ほども解説したように、IT関連企業だけでなく幅広い業種の企業がDX認定事業者に選ばれています。
会社名 | 主な事業内容 |
株式会社夢真ビーネックスグループ | IT分野・建設・製造事業 |
日本製鉄株式会社 | 鉄鋼関連事業 |
カシオ計算機株式会社 | 時計・計算機など電機製造事業 |
東京電力ホールディングス株式会社 | 電力事業 |
株式会社九電工 | 電気設備工事事業 |
三井住友海上火災保険株式会社 | 損害保険事業 |
株式会社スギ薬局 | 薬局での販売事業 |
コニカミノルタ株式会社 | 電気機器販売事業 |
株式会社りそなホールディングス | 金融関連事業 |
大和ハウス工業株式会社 | 住宅販売事業 |
侍の法人サービスがわかるお役立ち資料セット(会社概要・支援実績・サービスの特徴)をダウンロードする⇒資料セットを確認する
DX認定を取得する条件
DX認定を取得する条件は、次のガバナンスコードに基づく内容です。
- 経営ビジョン・ビジネスモデル
- 戦略
- 組織づくり・人材・企業文化に 関する方策
- ITシステム・デジタル技術活用 環境の整備に関する方策
- 成果と重要な成果指標
- ガバナンスシステム
DX認定では、企業のDX施策を評価し取得の審査を行います。具体的には、下記の項目を達成する施策が求められます。
DX認定制度の申請書の項目 | 概要 |
企業経営の方向性及び情報処理技術の活用の方向性の決定 | デジタル技術を活用する経営ビジョンの作成 |
企業経営及び情報処理技術の活用の具体的な方策 (戦略)の決定 | 経営ビジョンをもとにしたDX戦略の作成 |
戦略を効果的に進めるための体制の提示 | 戦略の推進に必要な体制・組織の検討 |
最新の情報処理技術を活用するための環境整備の具体的方策の提示 | 戦略の推進に必要な環境整備の具体案作成 |
戦略の達成状況に係る指標の決定 | DX施策の成果を測る指標作成 |
実務執行総括責任者による効果的な戦略の推進等を図るために必要な情報発信 | DX推進活動に関する経営者の積極的な対外発信 |
実務執行総括責任者が主導的な役割を果たすことによる、 事業者が利用する情報処理システムにおける課題の把握 | 企業のDX推進に関する課題・現状の把握 |
サイバーセキュリティに関する対策の的確な策定及び実施 | DX推進に最低限必要なサイバーセキュリティ対策 |
デジタル技術を活用し、どのような企業にしていくのか経営ビジョンを作成したうえで、具体的なビジネスモデルやDX推進計画を具体的に作成しなければいけません。
また、DX推進施策を実行するだけでなく、計画の達成度をのちに測れる仕組みも求められます。さらに、経営者による決定した施策の対外発信や、DX推進に最低限必要なセキュリティ対策も必要です。
これらの条件を考えると、難易度が高く見えるかもしれません。しかし、先ほど解説したとおり、DX認定は施策を実行していなくても取得できます。
DX認定の取得に必要なもの
DX認定を取得するには、先ほど紹介したガバナンスコードに沿った計画を立てる必要があります。ここでは、DX認定の取得に必要なものを紹介します。
目標となる経営ビジョン
DX認定を申請するには、まず目標となる経営ビジョンを作成しましょう。経営ビジョンがなければ、具体的なDX推進施策の方向性は分かりません。そのため、最初に計画の基礎を作成してください。
まず現在のビジネス状況や経営環境を整理したうえで、デジタル技術(DXを含む)をどのように活用できるか検討します。そのうえで、今後自社が発展するための経営ビジョンを作成しましょう。
経営ビジョンを作成できれば、あとは実現するための具体的なビジネスモデルを作成してください。
経営ビジョンを実現するDX戦略
経営ビジョンを作成したら、次はビジョンを実現するための具体的なDX戦略を考えます。
経営ビジョンがあっても、具体的な施策がなければ意味はありません。自社の課題を解決するには、どのような人材・設備が必要なのか検討します。
たとえば、自社で使用するITシステムを自前のエンジニアで行うべきというアイデアが出たとします。その場合、確保すべきエンジニアの人材像や開発に必要な設備などを考えなければいけません。
このように、経営ビジョンを実現するためには、どのようなDX戦略が必要か計画を立ててください。
DX戦略の達成度を測る指標
具体的なDX戦略を作成したら、施策実施後に達成度を測るための指標を作成しましょう。施策をおこなったあとに、目標に対する達成度を確認し、次の行動に活かしましょう。
DX戦略の達成度を測るために、戦略の推進状況を管理できる仕組みを作成してください。仕組みの例でいうと、施策によって誕生したIT人材数や、社内アンケートによる業務満足度調査などが該当します。
施策によって具体的にどのような効果があったのか、数字やデータを用いて評価できる仕組みを作成してください。
DX戦略・推進状況の対外発信
DX認定を取得するには、DX推進の計画を作成するだけでなく、対外的に取り組みを発信しなければいけません。具体的には経営者か経営者と同等の権限を持つ人の対外発信が必要です。
申請要項に発信方法の指定はありませんが、一例として公式ホームページや公開文書などで発信すれば、対外発信とみなされる旨の記載はありました。
なお、対外発信をした場合でも、経営者の発信であることを確認できない場合は不備となり審査に落ちる可能性があります。事実を公表するのではなく、経営者本人の発信として取り組みをアピールしなければいけません。
DX推進状況の分析・課題特定
自社のDX推進状況を分析するために、DX推進指標での診断を受ける必要があります。DX推進指標での診断は、ここまで解説した準備と平行して行うべき工程です。
DX推進指標では、DX推進の取り組みがどれくらい進んでいるのか簡単に判断できます。情報処理推進機構で公開されているため、確認して自己診断を実施しましょう。
なお、自己診断は「DX推進ポータル」から提出できます。具体的な手順や詳細は下記のサイトに記載されているため、ご確認ください。
→ DX推進ポータル
サイバーセキュリティ対策の推進
DX推進を進めるにあたり、サイバーセキュリティ対策も求められます。
セキュリティ対策が万全でない場合、DXを推進しても情報漏洩やインシデントなどのリスクにさらされる可能性があります。そのため、DX認定を取得するにはセキュリティ対策に関する取り組みが不可欠です。
具体的にはセキュリティ監査の実施概要をまとめる、「SECURITY ACTION制度」に基づき2つ星の自己宣言を行っているのが確認できれば問題ありません。(中小企業の場合)
添付資料や公式サイトでの公表資料から判断されるため、忘れずに覚えておきましょう。
侍の法人サービスがわかるお役立ち資料セット(会社概要・支援実績・サービスの特徴)をダウンロードする⇒資料セットを確認する
DX認定制度の申請方法
ここでは、DX認定の申請方法を紹介します。ぜひ、参考にしながら申請をしてください。
ステップ1:申請に必要な「gBizID」を取得する
DX認定の提出はDX推進ポータルで行いますが、申請には「gBizID」の取得が必須です。gBizIDの取得は簡単で、下記の公式サイトで手続きをすれば発行されます。
なお、gBizIDは各種行政サービスへのログイン時にも使用します。ID・パスワードは、忘れないように管理しましょう。
ステップ2:認定申請書類のダウンロード・作成
gBizIDを取得したら、申請に必要な書類をダウンロードし作成しましょう。なお、申請に必要な書類は下記のとおりです。
- 認定申請書
- 申請チェックシート
- 各種添付資料
認定申請書と申請チェックシートは情報処理推進機構でダウンロードできるため、フォーマットに従い記載してください。
また申請には、記載内容を証明するための添付資料を別途求められる場合があります。具体例は数が多く記載できないため、下記の申請要項から確認してください。
ステップ3:DX推進ポータルから申請を行う
申請書類を作成したら、DXポータルから申請を行いましょう。
申請方法は下記のとおりです。
- 1.DX推進ポータルにアクセス
- 2.gBizIDでログイン
- 3.メニューから「DX認定制度」を選択し申請
申請資料は再申請時に必要になるため、提出した資料は大事に保管しておきましょう。
DX認定を申請する際の注意点
ここでは、DX認定を申請する際の注意点を3つ解説します。
申請書類に不備がないかを念入りにチェックする
申請時には、申請書類に不備がないか念入りにチェックする必要があります。
申請書類に記載した内容の間違いを確認するのはもちろん、記載内容は求められている情報量になっているかも大事です。
よくある不備の例 | 対処法 |
施策の確認に必要となる参照URLや公開資料の掲載箇所が示されていない | 公式ホームページなど、DX推進施策が確認できる資料を明示する |
経営者の対外的な発信であることが確認できない | DX戦略の事実を公表するだけでなく、経営者の立場で発信を行う |
経営ビジョンとDX戦略の記載内容が同じ | 経営ビジョンをもとに具体的なDX戦略を記載する |
たとえば、DX推進施策を記載する欄の場合、「DXを推進するためにDX研修を実施」と記載するだけでは具体性に欠けます。この場合、「DXを推進するために1ヵ月にわたるDX研修を実施。実施内容は…」のように、詳細を記載しなければいけません。
また、なかには申請チェックシートと申請書に似た項目もあります。ただし、記載すべき内容はそれぞれ異なるため、似ているからといって同じ文章を記載するのもNGです。
申請書類の書き方やよくあるミスについては、下記の申請要項に詳しく解説されています。申請前にチェックし、申請書類に不備がないか確認してください。
経営者はDX推進における課題を把握しておく
DX認定の審査に通るには、経営者がDX推進の課題や取り組みを把握する必要があります。
企業によっては、経営者はあまり施策を把握しておらず、DX推進担当者が率先して計画を作成している場合もあるでしょう。
しかし、DX認定には、経営者による対外発信が必要です。経営者がDX推進の取り組みを理解していることも求められます。
IT企業以外の企業や中小企業の場合、IT関連の仕事を専門社員に任せている場合もあるかもしれません。しかし、DX認定を取得するのであれば、DX推進の施策に関する会議などに参加し、積極的にかかわる必要があるでしょう。
DX推進における具体的な施策を立案しておく
DX認定を取得する場合、DX推進に関する具体的な施策を考える必要があります。DX認定では、おおまかな計画ではなく、具体的にどのような計画があるのかが問われます。
たとえば、「DX化を進めるためにDX研修を実施する」「社内で業務効率をアップさせるためのITシステム開発ができる人材を育成する」など具体的な計画を立てましょう。施策期間や研修の参加人数なども計画しておいてください。
なお、DX認定では、ソフトウェアの導入などバックオフィスの機器導入だけでは不十分とみなされる可能性があります。環境整備だけでなく、企業全体として前向きなDX施策を求められるのです。
侍の法人サービスがわかるお役立ち資料セット(会社概要・支援実績・サービスの特徴)をダウンロードする⇒資料セットを確認する
DX認定制度に関するFAQ
最後に、DX認定制度に関するFAQへ回答します。
取得するにはどれくらいの期間がかかるの?
申請から認可までの期間は、基本的に60営業日と記載があります。しかし、再申請の準備期間は審査期間に含まれないほか、申請の混雑具合によっては60日を超える場合も。
基本的には不備なく申請できれば、3ヵ月ほどで審査が完了すると覚えておきましょう。
申請が通らない場合はどうすればいいの?
申請が通らなかった場合は、不備を修正し再申請できます。
申請が通らなかった場合、IPAから不合格理由を記載したメールが送付されるため、不合格となった要因を確認して再申請してください。再申請方法は、1回目の申請方法と同じです。
場合によっては、複数回不合格になるケースもあるため、不合格理由をしっかり確認して再申請しましょう。
すでにDX推進の取り組みを行っている場合も取得できる?
DX認定は、すでにDX推進の取り組みを実施している企業でも取得できます。先ほど紹介した取得条件をクリアしており、必要書類を提出できれば認定される可能性が高いです。これからDX推進を進める企業、すでに推進している企業の両方とも対象になります。
まとめ
今回は、DX認定制度とは何なのか、その特徴を取得するメリット・デメリットも交えて解説しました。
DX認定を取得すれば、企業イメージのアップだけでなく、税額控除や融資の優遇を受けられるなどメリットは多いです。比較的取得難易度は低いため、DX推進の取り組みを検討している企業は、ぜひDX認定の申請を検討してください。