DX時代に適応するために必要なリスキリングとは?実施方法と成功のポイント
現在、目まぐるしく発展するデジタル技術に対応するべく、従業員のスキルをアップデートするリスキリングへの注目が高まっています。
この記事では、リスキリングの概要や実施方法、利用できるツールなどについて説明します。また、リスキリングに成功した企業事例も紹介するので、ぜひ参考にしてください。
リスキリングについて
「リスキリング」は、デジタル技術の発展に対応できるよう従業員に新しいスキルを習得させることを指す言葉です。近年、リスキリングは国際社会でも重要性が指摘され、多くの企業から注目が集まっています。
ここでは、リスキリングの定義や必要性について解説します。
リスキリングとは何か
リスキリングとは、企業が従業員のスキルや知識を向上させることで、新しいビジネスモデルや製品、サービスの提供や競争力の強化を図る取り組みのことです。具体的には、デジタル化やAI(人工知能)技術に対応するためのスキル習得を指します。
2020年11月には、経団連が「新成長戦略」でリスキリングの必要性に言及しています。さらに、2022年10月には岸田総理が所信表明演説でリスキリング支援に1兆円を投資すると表明するなど、リスキリングは経済界や政界からも注目を集めています。
(出典:日本経済団体連合会 新成長戦略、日本経済新聞「リスキリング支援「5年で1兆円」 岸田首相が所信表明」2022/10/3)
最近では、オンラインでの学習プログラムやモバイルアプリなど、様々な形でリスキリングが行われています。企業は、従業員のニーズに合わせた研修プログラムを提供するとともに、経営層自身が積極的に学ぶ姿勢を従業員に見せることが重要です。
リスキリングの意義
企業にとってのリスキリングは、従業員のスキルアップを通じて企業の生産性や競争力の強化、新規事業の開拓などが期待できる取り組みです。また、従業員個人にとってもスキルアップの機会が提供されるため、自己実現やキャリアアップにつながるとされています。
現代は「第4次産業革命」と呼ばれる変化が起きており、技術革新や市場変化によって、デジタル化やAI活用が進んでいます。一方で、デジタル化や自動化では対応しきれない、人間だけができる業務をこなす人材が必要とされています。
リスキリングを実施することで、企業はそうした人材を確保し、常に新しいビジネスモデルや製品、サービスを提供し続けられるでしょう。
企業にとってリスキリングが必要性になった背景
リスキリングとは、急速な技術革新や市場変化によって求められるスキルや知識の変化に対応するために、従業員に新たなスキルや知識を習得させることを指します。今日では、競合他社との差別化やブランドイメージの向上、デジタル技術の導入に対応するために、企業にとって不可欠な取り組みとなっています。
国際社会でも注目が高まっており、2020年に開催された世界経済(ダボス)会議では、「2030年までに地球人口のうち10億人をリスキリングする」という目標が発表されました。また、新型コロナウイルス流行によって、リモートワークやオンライン接点を作るための新しい技術が必要になり、リスキリングの必要性がより高まっています。
(出典:一般社団法人日本能率協会「『リスキル革命』~ダボス会議で「2030年までに10億人のリスキル」が提唱」)
企業が従業員のスキルアップに注力することで、生産性や競争力の強化、新規事業の開拓などが期待できるだけでなく、従業員個人にとっても自己実現やキャリアアップにつながります。これからますます進展するであろうテクノロジーの進歩に対応し、常に新しいビジネスモデルや製品、サービスを提供するためにも、リスキリングの実施は必要不可欠でしょう。
リスキリングの実施方法
デジタル技術の発展が進み、今後もリスキリングは継続的に必要になるでしょう。では、一体どのように自社の従業員をリスキリングするべきなのでしょうか。
ここでは、具体的なリスキリングの実施手順や、実施時に起きがちな課題と解決方法、成功するポイントなどを解説します。
リスキリングの実施手順4ステップ
リスキリングの実施手順を、下記4ステップに分けて紹介します。
- Step1. リスキリングの目的や目標を設定し、必要なスキルや知識を把握する
- Step2. プランニングを行い、実施方法やカリキュラムを決める
- Step3. 研修を実施する
- Step4. リスキリングの成果を評価し、必要に応じて改善策を立てる
Step1. リスキリングの目的や目標を設定し、必要なスキルや知識を把握する
リスキリングを行うためには、リスキリングの目的や目標を設定し、必要なスキルや知識を把握することが重要です。ただし、リスキリングは自社の経営戦略に沿って行うことが重要です。
そのため、各企業が実施すべき内容は異なります。従業員のスキルを可視化することで、企業がどのようなスキルや知識を強化すべきかを把握でき、リスキリング計画を立てることが可能です。
具体的な手順としては、まずは自社の経営戦略に沿って必要なスキルをリストアップすることから始めます。次に、従業員それぞれが持っているスキルを調査します。このステップによって、経営戦略を達成するために足りないスキルが可視化されるため、そのスキルをリスキリングの目的や目標に盛り込むことが可能になります。
従業員のスキル可視化には、スキルマップと呼ばれるツールが便利です。スキルマップとは、業務に必要な能力・スキルをリストアップし、各従業員がどのレベルのスキルを持っているかを一覧の表にまとめたものです。
スキルマップを作成することで、従業員のスキルの把握や評価がしやすくなり、リスキリング計画の立案に役立ちます。
Step2. プランニングを行い、実施方法やカリキュラムを決める
リスキリングの目的が決まったら、具体的な計画を立てましょう。具体的には、実施方法やカリキュラムの策定が必要です。
リスキリングの学習方法には、e-ラーニング、外部のITスクールの受講、社内に講師を招聘して講義をしてもらう方法、社内でOJTを行う方法などがあります。それぞれ必要なコストが異なるので、どの方法を選択するかは、各社の事情に合わせて決めましょう。
また、具体的なカリキュラム作成も重要です。受講対象者を事前に決め、彼らの持っているスキルレベルをもとに難易度や内容を決める必要があります。受講者に比べてレベルが高すぎる講義内容にすると、脱落者が多くなってしまうでしょう。また、期間を長くすると受講者が通常業務を進められず、負荷がかかります。そのため、カリキュラムは適切な期間・内容で設定することが大切です。
Step3. 研修を実施する
リスキリングの計画に沿って研修を実施しましょう。実施後、アンケートを実施し、受講者や講師からのフィードバックを集める必要があります。結果を基に今後の改善点を明確にすることで、次回の研修に生かせます。
Step4. リスキリングの成果を評価し、必要に応じて改善策を立てる
リスキリングの成果を評価し、改善策を立てることがリスキリングの継続的な実施につながります。研修後には、受講者からのアンケート調査を実施することで理解度や満足度を把握しましょう。
また、制作物のクオリティを確認することも重要です。受講生の理解度が低いと見受けられる場合は、アフターフォロー研修の実施も検討しましょう。
さらに、改善点があった場合は、次回以降の改善策を策定する必要があります。デジタル技術の発展が続く現代では、リスキリングを継続的に実施することが必要です。スキルアップに効果的な研修を提供するために、常に研修内容のブラッシュアップを心がけましょう。
リスキリング研修に多い課題とその対策
リスキリングを実施する際によくある課題は以下の3点です。
以下で、それぞれの説明と解決方法を解説します。
リスキリング実施にはコストや時間が必要
リスキリング研修を実施するには、コストや時間がかかります。
社内で研修を内製化する場合、担当者の業務負荷が増大することが懸念されます。一方、外部研修会社に依頼すれば、カリキュラム作成の時間などはかからずに済むものの、費用がかかるという問題もあります。なお、外部研修の中でもe-ラーニングは比較的安価ですが、受講者の進捗管理などを行う担当者が必要となります。
内製、外製ともにメリットとデメリットがあるので、自社で割ける費用・期間を考慮してバランスのいい方法を選ぶのが大切です。
従業員のモチベーション低下
リスキリングを実施する際、研修期間中は受講者の普段の業務が滞るため、業務負荷がかかって研修へのモチベーションが下がるリスクがあります。
また、研修で学んだスキルを具体的にどのように活かせるかが分からない場合も、従業員の研修効果が下がってしまいがちです。そのため、研修内容やトレーニングプログラムを工夫し、従業員の参加意欲を高める必要があります。
たとえば、業務量が比較的少ない時期に研修を実施する、リスキリングの目的を従業員に共有するなどの方法が有効です。従業員が研修で得たスキルを具体的に業務改善に役立てられるよう、イメージを共有することも大切です。
リスキリングを成功させるためには、従業員のモチベーションを高めることが欠かせません。
リスキリングの効果測定の難しさ
リスキリング研修を実施しても、その効果を測定することは簡単ではありません。特に、研修によって実際の業務改善にどの程度効果があったかや、経営戦略の達成度合いを測定することは難しいとされています。
リスキリングの計画段階で効果測定の方法や基準を明確にし、成果の可視化を図ることが必要です。
具体的には、受講後用のアンケートや簡単なテストを実施することで、受講者のスキルレベルの変化を測定できます。また、研修内容に関連した業務の成果を計測することで、リスキリングの効果を可視化できるでしょう。リスキリングの効果測定は、研修をより効果的に活用するために必要不可欠な作業です。
リスキリングを成功させる3つのポイント
リスキリングを成功させるには、次の3つのポイントが重要です。
- Point1. リスキリングの目的を従業員と共有する
- Point2. 従業員自身のキャリアプランやニーズを取り入れる
- Point3. リスキリングに必要な予算や人員を確保し、継続できる環境を作る
Point1. リスキリングの目的を従業員と共有する
リスキリングを成功させるためには、従業員とリスキリングの目的を共有することが欠かせません。従業員がリスキリングに参加する意義や、今後の経営戦略にどのように貢献するかを明確にすることで、受講者のモチベーションが向上し、研修効果も高まります。
また、会社として従業員にどのようなスキルを身に付けてほしいのかを具体的に説明することも重要です。期待するスキルや期限を設け、受講者が今何を学ぶ必要があるのかを明確化することで、スキル習得に向けた具体的な目標が分かりやすくなり、受講者の自己成長への意欲が高まります。
リスキリングは、経営戦略にとって重要な要素であり、従業員にとってもスキルアップのチャンスです。リスキリングを成功させるためには、従業員とのコミュニケーションをしっかりと取り、目的や期待するスキルを明確にすることが必要です。
Point2. 従業員自身のキャリアプランやニーズを取り入れる
リスキリングを実施する際は、従業員自身のキャリアプランやニーズを取り入れましょう。従業員が自ら研修を受けたいという意欲がある場合、それを支援する体制づくりが必要です。
たとえば、社内公募でリスキリング研修受講者を募ったり、従業員の意見を取り入れつつ研修カリキュラムを作成することで、従業員の意欲を引き出せます。
また、日々の業務を実施している従業員自身が業務改善のアイデアを持っていることも多いため、それを取り入れることでより効果的な研修カリキュラムを作成できます。従業員が自らのキャリアアップにつながると感じることで、研修に積極的に取り組むようになるでしょう。
リスキリングは、従業員自身の成長やキャリアアップにつながるものであり、その意義を理解して取り組むことが重要です。
Point3. リスキリングに必要な予算や人員を確保し、継続できる環境を作る
リスキリングを成功させるためには、予算や人員を確保し、継続的に実施できる環境を整えることが必要です。リスキリングには、研修費や教材費など多岐にわたるコストがかかります。そのため、経営層がリスキリングに必要な予算を確保することは必要不可欠です。
また、リスキリングを実施するためには、人的リソースを充実させることも重要です。従業員にリスキリング研修を行うための専門チームを設置するなどして、スムーズに研修を進められる環境を作りましょう。
そして、リスキリングはデジタル技術が発展する限り、都度必要になります。そのため、継続的に実施することが大切です。経営層は、リスキリングをビジネス戦略として位置付け、長期的な視点でリスキリングを継続して実施していくことが必要です。
侍の法人サービスがわかるお役立ち資料セット(会社概要・支援実績・サービスの特徴)をダウンロードする⇒資料セットを確認する
3種類のリスキリングと具体的な事例
リスキリングの具体的な内容は、企業が抱える課題ごとに異なります。ここでは、リスキリングの内容を以下の3種類に分け、それぞれの具体的な事例と共に紹介します。
技術的リスキリング
技術的リスキリングとは、企業が新しい技術やツールを導入する際に、従業員のスキルアップを目的として実施されるリスキリングの一種です。
近年、AIやIoT、ブロックチェーンなどの新しい技術の導入が進み、これらの技術に関する専門的な知識やスキルが求められるようになってきました。このような状況下で、企業は従業員に対して、新しい技術に関する研修やトレーニングを提供し、スキルアップを促す必要があります。
たとえば、三井住友トラスト・ホールディングスでは、新入社員に対して半年間の外部研修を提供し、高度なAI知識を学ばせています。研修後、一部の社員は企画部門に配属され、既存事業の効率化や新事業へ向けた技術導入を行います。
(出典:日本経済新聞「リスキリングでAI人材育成、140社が実施 日経調査」)
機能的リスキリング
機能的リスキリングとは、従業員が新しい職務に就くために必要なスキルや知識を習得するために実施されるリスキリングの種類です。企業が新しいビジネスモデルを採用した場合や、業務改善のために業務プロセスの変更が必要な場合に、機能的リスキリングが必要になります。
たとえば、営業担当者がマーケティングに関する知識を習得するための研修を提供するケースが挙げられます。また、Amazonでは物流センター作業員などの非技術系人材を技術職に移行させるために、「アマゾン・テクニカル・アカデミー」というプログラムを実施しています。
(出典:WWD「アマゾンが756億円かけて従業員10万人に教育プログラム 人材確保が狙い」)
機能的リスキリングは、従業員の能力開発やキャリアアップにもつながります。従業員が新しい職務に就くために必要なスキルや知識を習得することで、自己実現ややりがいを感じることができ、モチベーションアップにもつながるでしょう。企業は従業員のスキルアップを促進することで、結果的に業務プロセスの改善や新しいビジネスモデルを実現できます。
ブランド価値リスキリング(ブランド価値再構築)
近年、サブスクリプションサービスの登場などビジネスモデルが変化した影響で、ブランドの概念も変化してきています。たとえば、ユーザーがサービスに参加する段階で、そのサービスの存在意義やパーパスを重要視するようになりました。このような変化に対応するためには、ブランド価値の再構築が必要です。
ブランド価値リスキリング(ブランド価値再構築)では、新しいターゲットに向けた広告戦略や、サービスの存在意義やパーパスを明確にするためのマーケティング研修などが提供されます。
たとえば、ブランドのイメージが古くなってしまった場合、新しいターゲットに向けた広告戦略を展開することが必要です。そのためには、マーケティングのスキルを習得する研修が必要となるでしょう。
リスキリングで成功した企業3社
ここでは、リスキリングに成功した企業の事例を3社紹介します。
トヨタ自動車株式会社
トヨタ自動車は、自動車メーカーからモビリティカンパニーに転換するためのリスキリングに力を入れています。具体的には、自動運転技術や電気自動車など、自動車業界に大きな影響を与える新技術に対応するため、従来の新車製造・販売事業の人材をCASEに対応するソフトウェア人材に配置展開するためのリスキリング教育を実施しています。
(CASE:自動車業界に影響を与える新技術の頭文字を組み合わせた用語。Connected(コネクテッド)、Autonomous(自動運転)、Shared (カーシェアリング)、Electric(電気自動車))
2021年時点で、トヨタグループのソフトウェア開発企業に400人以上を派遣しており、2025年までには9,000人にリスキリング教育を受講させる予定です。トヨタ自動車株式会社は、CASE技術に対応する人材の育成を進め、モビリティカンパニーとしてのビジネス領域の拡大を目指しています。
(出典:トヨタ自動車「統合報告書2022」)
三井住友銀行
三井住友銀行は、デジタル化に伴い、従業員のITスキルアップを進めるためのリスキリングに取り組んでいます。2016年に設立された社内教育機関「デジタルユニバーシティ」をはじめ、2021年からはグループ全従業員を対象に「デジタル変革プログラム」を開始しました。このプログラムは、従業員に「なぜITスキルを学ぶ必要があるのか」というマインドセットの変革を重視して設計されています。
また、実践的なオンラインワークショップ研修や学習アプリによって継続学習の機会を提供することで、実務に活かせる技術を身に付けることが目標です。
この取り組みによって、営業部署がクライアント向けにIT勉強会を開催できるような、デジタル技術を業務に活かす風土が整い、顧客サービスの向上や業務効率の改善につながっています。
(出典:udemy business「学びで新たな価値創造へ——SMBCグループが取り組む「お客さま本位」のデジタル人材育成」三井住友銀行 人材戦略)
東京ガス株式会社
エネルギー業界においてデジタル化や脱炭素化が進む中、新たなビジネス領域の開拓や技術力強化が不可欠となっています。そのため、東京ガス株式会社では、社員のスキルアップを目的としたリスキリング研修を全社的に実施することで、人材の多様性を高め、変化に対応できる人材の育成を目指しています。
特にDX人材育成に力を入れており、社外講師によるDX講演会や、eラーニングを活用した知識習得、実践型の研修を実施しています。実践型研修には、AIやプログラミング、BI、RPAなど、業務改善に直結する10以上のテーマが用意されており、従業員が自由に選択して受講する形式です。
また、東京ガスでは、2025年までに全社員がリスキリング研修を受講することを目標に掲げています。
(出典:東京ガス「人材育成」、「東京ガスグループ 2023-2025年度 中期経営計画」)
侍の法人サービスがわかるお役立ち資料セット(会社概要・支援実績・サービスの特徴)をダウンロードする⇒資料セットを確認する
リスキリングに必要なスキルやツール
リスキリングで学ぶスキルや、リスキリングを実施するツールはさまざまです。どんなスキルを習得させたいのか、という目的を明確化した上で、効率的にリスキリングを行えるツールを活用しましょう。
ここでは、リスキリングで得られるスキルや利用できるツールを紹介します。
リスキリングで学ぶスキル
リスキリングで習得すべきスキルは、企業の抱える経営課題ごとに異なります。ここでは、代表的なスキルを5点紹介します。
ITスキル
現代のDX化が進む環境において、従業員が持つITスキルの向上は重要な課題です。現在、業務で利用するソフトウェアもアップデートを続けており、エンジニア職はもちろん、非IT職でもMicrosoft Office系ソフトや基礎的なプログラミングを学べば、業務改善に直結するでしょう。
また、プログラミングの習得は論理的思考力の養成にもつながります。ITスキルを身に付けることで、さまざまな業務に役立ち、自分自身のキャリアアップにも繋がります。
データ分析スキル
現代のビジネスでは、データを活用して効果的な意思決定を行うことが求められています。そのため、データ分析スキルの習得は、キャリアアップや業務改善に直結する重要なスキルです。
データ分析の方法やツールの習得を通じて、ビジネスにおけるデータの有効活用ができるようになります。
マーケティングスキル
デジタルマーケティング技術は、顧客接点の主軸がインターネットやSNSに移り変わった現在、企業にとって不可欠なスキルとなっています。
顧客の行動や心理を分析すれば、効果的な広告配信やコンテンツ制作に活かせます。データを活用したマーケティング手法を学ぶことで、企業の売上向上やブランド再構築につながるでしょう。
コミュニケーションスキル
コミュニケーションスキルは業務全体において不可欠です。特に、テレワークの普及に伴い、オンラインでのコミュニケーションスキルも求められるようになりました。
コミュニケーションスキルの向上は、チームワークや問題解決力、営業力やプレゼン力の向上にも大きな効果があります。
問題解決スキル
問題解決能力は、現代ビジネスにおいて重要なスキルの一つです。リスキリングにより、経営課題に対して従業員が主体的に取り組み、新たな視点から問題解決ができるようになります。
問題解決能力は、業務の効率化や新規ビジネスの創出につながります。
リスキリングに活用できるツール3選
内容が多岐にわたるリスキリング研修を、自社内のみで企画・実行するのは非常に業務負荷がかかります。リスキリングを効果的に実践するのに役立つツールを3つ紹介します。
外部ITスクールのオンライン講座
外部ITスクールが提供するオンライン講座を利用すると、リアルタイムで講師に質問できる環境で学べます。さらに、グループワークや演習も実施できるため、実践的なスキル習得が可能です。
また、自社業務に合わせてカスタマイズしたカリキュラムを実施できるサービスもあるため、効率的な学習ができます。たとえば、「侍エンジニアBiz」は、企業課題をもとにオーダーメイドでカリキュラムを作成して研修を実施するサービスです。
e-ラーニングサービス
e-ラーニングは、リスキリングに取り組むための便利なツールです。e-ラーニングは、比較的安価でかつ、受講者が自分のペースで学習できるため、リモートワークを導入している職場や複数の拠点がある職場にとって有効です。
また、サービスによっては、管理者が各受講者の学習状況をモニタリングできるため、管理が容易になるというメリットもあります。
社内SNS
リスキリングの情報を社内SNSで発信すると、リスキリングに必要な情報交換がスムーズに行えます。また、社内でのデジタル技術活用事例などを共有すれば、コラボレーション力の向上にもつながります。
さらに、従業員からの研修への要望も汲み取りやすくなるため、リスキリング研修の効果改善も期待できるでしょう。
AIを活用したリスキリング
AIを活用して、効果的なリスキリング研修を実施する技術も発展しています。
たとえば、AIを使って従業員それぞれの受講履歴や理解度を分析し、最適な学習プログラムを提案できます。これにより、従業員が効率的にスキルアップできます。
また、AIによって映像教材内の講師の講義内容を自動文字起こしをして、キーワード検索で該当教材を検索できるようにすることも可能です。これにより、従業員が自分に必要な情報を迅速に取得することができ、学習の効率が高まります。
リスキリングの成果の評価と指標
リスキリングを実施した後、「実際に業務改善ができたのか」といった成果を振り返ることは非常に重要です。また、効果が低かった場合は改善点を洗い出し、次回以降をブラッシュアップする必要があるでしょう。
ここでは、リスキリングの成果の指標や測定方法について紹介します。
成果を評価する指標
リスキリングの成果を評価するためには、具体的な指標を設定することが必要です。
まず、どのような目的を持ってリスキリングを実施するのかを明確にし、その目的に沿った指標を設定します。たとえば、新しい技術やツールの習得を目的とした場合には、学習後の評価テストの成績やプロジェクトでの成果を指標に設定すると効果的です。
また、業務遂行能力や生産性の向上を目的とした場合には、実際の業務での成果が指標となるでしょう。たとえば、業務に要する時間の短縮や品質の向上、エラーの減少などが挙げられます。
さらに、従業員のモチベーション向上を目的とした場合には、従業員の満足度調査や、業務への取り組み姿勢の改善、自己成長意欲の向上などが指標に適切です。
また、成果を評価しやすくするためには、実施前に従業員のスキルマップを作成しておくと効果的です。スキルマップは、従業員の現在のスキルや知識を整理した表です。このスキルマップをもとに、リスキリングの目標や指標を設定し、研修成果を評価できます。
成果を測定する方法
リスキリングの成果測定方法は、成果の指標に合わせて設定しましょう。
アンケート調査は、受講者からのフィードバックを得るための代表的な方法です。アンケートでは、受講者が学んだことや研修プログラムについての感想、改善点などをヒアリングでき、受講者の満足度などを測れます。
評価テストは、受講者の理解度を測定するための方法です。テストの難易度や出題範囲を事前に決めておくことで、目的に合わせた評価ができます。
売上向上やミス発生率の低下など、業務のクオリティに注目した方法も有効です。これらを計測して研修前後で比較すれば、リスキリングが業務にどのような効果をもたらしたのかを評価することができます。
また、e-ラーニングシステムを利用すると、学習歴を把握しやすく、スキル向上を定量的に測定できます。
効果を最大化する評価方法
リスキリングの効果を最大化するためには、評価方法が重要です。
まず、実施前に従業員の意見やニーズをヒアリングし、リスキリングの目的に合わせた内容を設計することが重要です。そして、実施後には、アンケート調査や評価テストなどで従業員のフィードバックを収集し、改善点を洗い出します。また、従業員が新たに習得したスキルや知識を実際の業務にどの程度活かせているかを把握し、業務効率や生産性の向上を評価しましょう。
更に、リスキリングの実施は一回限りではなく継続的に行うことが重要です。従業員の成長に合わせて、カリキュラムの見直しやフォローアップ研修などを実施することで、より効果的なリスキリングを実現できます。
侍の法人サービスがわかるお役立ち資料セット(会社概要・支援実績・サービスの特徴)をダウンロードする⇒資料セットを確認する
リスキリングの将来性
リスキリングは近年急速に注目を集めています。今後もデジタル技術の発展は続くと予想されるため、リスキリングで重視される内容も変化していくでしょう。
ここでは、リスキリングの最新トレンドや今後の将来性について解説します。
リスキリングの最新トレンド
現在のリスキリングのトレンドは、コミュニケーションスキルやリーダーシップスキル、技術スキルの向上に重点が置かれています。特に、現在はメンバーがそれぞれオフライン・オンライン勤務と異なる環境で働く職場も増えているため、多様な働き方に対応したチームマネジメントに必要なスキルが重視されています。
また、技術的なスキルとしては、AWSをはじめとするクラウド技術や、Microsoft Power Platformのようなローコード(プログラムコード量を最小限に抑えてソフト開発を行う方法)アプリ開発が注目されています。さらに、AIやVR/AR技術を活用した研修プログラムも増加しています。
今後の課題と将来性
現在、リスキリングはビジネス環境の変化に対応するために必要不可欠な取り組みとなっています。しかし、その実施には膨大なコストや時間がかかることから、課題が残っています。
その一つが、自社課題を分析して適切なカリキュラムを作る方法です。企業によって求められるスキルやニーズは異なるため、そのようなニーズに合わせたカリキュラムを作ることが必要です。
また、リスキリングの実施後に従業員のモチベーションを維持する方法も課題です。継続的な学習を維持し、スキルアップにつなげるためには、従業員のやる気を引き出す工夫が必要です。
そこで、AIを活用した学習コンテンツの提供や、外部の専門家の協力など、テクノロジーや専門家の力を借りることが解決策として考えられます。
一方で、今後も新しいビジネス環境に合わせたスキルアップやキャリア形成が求められるため、リスキリングの需要は一層高まると予想されています。リスキリングは今後も必要不可欠な取り組みであり、その重要性はますます高まっていくことでしょう。
よくある質問(FAQ)
ここでは、リスキリングに関するよくある質問と回答を紹介します。
- 「リスキリング」と「リカレント教育」とは何が違うのでしょうか?
-
リスキリングは、企業において必要なスキルや知識を習得するために、現在の業務内容に関係した研修プログラムを実施することです。
一方、リカレント教育は、社会全体の高齢化や働き方の多様化に伴い、職業能力の更新・向上のための教育のことを指します。
- リスキリングで資格を取得できますか?
-
リスキリングの内容によっては資格を取得できる場合がありますが、必ずしも資格取得が目標になるわけではないので注意しましょう。
基本的なITリテラシーであればITパスポートや基本情報技術者試験、Microsoft Office Specialist(MOS)などが代表的です。その他、データ分析スキルでは統計検定、マーケティングスキルではウェブ解析士、AI関連ではG検定などの資格があります。
- リスキリングを実施するための補助金はありますか? また、補助金を受ける条件は何でしょうか?
-
国や自治体、業界団体などから、リスキリングを支援する補助金が提供されている場合があります。経済産業省の「リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業」などが代表的です。
(出典:経済産業政策局「令和4年度補正予算「リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業」の公募について」)
補助金を受け取るには、制度ごとに一定の条件を満たす必要があります。たとえば、従業員数や事業規模などの条件が設けられている場合があるため、申請前にチェックしましょう。
侍の法人サービスがわかるお役立ち資料セット(会社概要・支援実績・サービスの特徴)をダウンロードする⇒資料セットを確認する
効果的なリスキリングを行うには、まず自社課題の分析から
従業員のスキルをアップデートするリスキリングは、変化の激しい現代社会で企業が生き残るために必要な方策です。しかし、その内容は各企業がもつ経営ビジョンと現状のギャップによって異なります。
リスキリングを成功させるには、まず自社の課題や従業員のスキルを分析し、適切なカリキュラム作成に力を入れましょう。