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資格手当のメリット・制度設計のポイントを分かりやすく解説

業務に必要な資格を取得した従業員に与えられる資格手当は、従業員や求職者が注目する福利厚生制度のひとつです。

この記事では、企業が資格手当を導入する目的やメリット、支給方法について解説します。自社で資格手当導入を検討されている場合に役立つ、制度設計のポイントも紹介しています。

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目次

資格手当とは何か?

資格手当とは何か?
資格手当とは何か?

資格手当は、企業ごとに設定された制度です。ここでは、資格手当の定義や目的、メリットに関して解説します。

資格手当とは

資格手当とは、業務に関わる特定の資格を持つ従業員に支給される手当のことです。資格手当の支給の有無や対象資格は、企業によって異なります。さらに、資格手当の支払方法や金額もまちまちです。毎月一定額が給与に上乗せされる場合や、取得後1回だけ支給される場合もあります。

また、一般的には、資格の難易度によって資格ごとに手当の金額が違うケースが多く見られます。自社の資格手当について調べたい場合は、勤務先の就業規則を参照しましょう。

なお、厚生労働省の2020年の調査によると、資格手当を支給している企業の割合は50%を超えています。

(出典:厚生労働省「令和2年就労条件総合調査の概況」

資格手当は、特定の資格を取得すると給与が加算されるため、従業員のモチベーションややる気を高める効果があります。また、資格手当は、従業員のスキルアップやキャリアアップにも繋がるため、自己啓発にも役立ちます。

資格手当の目的と背景

資格手当の主な目的は、企業が高度なスキルや知識を持つ人材を確保・維持することです。資格手当は、従業員に対して資格取得を奨励し、高度なスキルや知識を習得することを促すインセンティブです。これにより、企業は優れた人材を確保し、競争力を維持・向上できます。

また、資格手当は従業員のモチベーション向上やキャリアアップをサポートする役割も果たしています。資格取得には学習や試験の労力が伴いますが、その努力が報われることで従業員のモチベーションが高まります。

さらに、資格手当によって経済的な報酬も得られることで、従業員は自己啓発やスキルアップに積極的に取り組むようになります。これによって、従業員の能力向上やキャリアの発展が促進され、企業と従業員の双方に利益をもたらすでしょう。

また、資格手当が導入される背景には、業界や業種によるニーズの変化や技術革新もあります。現代のビジネス環境は急速に変化しており、新たなスキルや知識が求められます。

資格手当は、こうした変化に対応し、従業員が必要なスキルを習得するための支援を行うことで、企業の競争力を維持・向上させる役割を果たす施策です。

資格手当のメリット・デメリット

資格手当のメリットは、従業員の学び意欲を促進できることです。企業の競争力向上やブランディングにも寄与します。従業員にとってもスキルアップを実現できる施策のため、モチベーションを高める効果もあります。人材の確保やリテンション向上にも繋がるでしょう。

一方で、デメリットとしては、資格取得のための過度な競争や偏りが生じるリスクがあります。無駄な資格取得が増え、真のスキルアップの目的を見失う恐れもあるでしょう。経費の増加や制度運用の複雑さも発生します。さらに、受検費用も負担する場合など、経営状況へのインパクトも考慮しなくてはいけません。

資格手当の導入には、メリットとデメリットを総合的に判断する必要があります。効果を最大化し、弊害を最小化する運用が重要です。企業と従業員のwin-winの関係を築くことが肝心です。

資格手当の対象となる資格

資格手当の対象となる資格
資格手当の対象となる資格

一般的に、資格手当の対象は業務に直結する資格です。ここでは、ビジネス上役立つとされ、資格手当の対象となる資格を紹介します。

一般的に対象とされる主な資格一覧表

資格手当の対象となる、主な資格の一覧をまとめました。一般的に、取得難易度や専門性が高い資格ほど手当相場が上がる傾向にあります。

資格名国家資格/民間資格業界・職種資格手当相場
危険物取扱者国家資格製造業・運送業など1,000~3,000円
宅地建物取引士国家資格不動産10,000~30,000円
電気工事士国家資格建築業1,000~10,000円
建築士国家資格建設業8,000~30,000円
中小企業診断士国家資格コンサルタント10,000~30,000円程度
社会保険労務士国家資格人事・労務30,000~50,000円程度
管理栄養士国家資格医療・飲食など5,000~30,000円程度
理学療法士国家資格医療10,000~20,000円
介護福祉士国家資格医療5,000~10,000円
衛生管理者国家資格飲食など2,000~10,000円程度
TOEIC民間資格全般3,000~20,000円程度
日商簿記民間資格経理など3,000~20,000円程度

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資格手当の支給

資格手当の支給
資格手当の支給

ここでは、資格手当の一般的な相場や支給の方法について説明します。

一般的な相場

企業によって、資格手当の金額や支給方法は自由に決められます。一般的には1,000円~数万円程度が多く見られます。専門性が高く、その資格がないと業務を遂行できないという場合には、金額は高めに設定される傾向があります。

また、資格の内容やレベルによって、金額に差を付ける場合もあります。手当金の金額を決める際は、業務への関連性など具体的な基準を設けましょう。

他社がどのような支給金額を採用しているのか調査し、どれほどの額を設定すれば従業員にとって効果的なインセンティブになるか探るのも有効です。

支給方法

資格手当には2種類あります。

基本給に上乗せして支給する資格手当です。支給期間は取得から数年のケースから退職まで、企業が自由に決められます。また、企業によっては資格受験料なども負担するケースがあります。

さらに、資格取得後には原則として1度だけ支払われる「合格報奨金」制度を設けている企業もあります。この制度では、資格を取得した従業員に対して一定の金額が支給されます。

基本給への上乗せによる支給は、従業員のモチベーションを長期的に向上させる効果がありますが、コストも高くなる可能性があります。どちらの方法を取るかで、今後予想される経費の額も変化します。資格手当制度設計の際は、費用対効果を考慮して検討しましょう。

資格手当とその他の手当の違い

資格手当とその他の手当の違い
資格手当とその他の手当の違い

ここでは、資格手当と混同されがちな、その他の各種手当との違いについて解説します。

資格手当と業績手当

資格手当とは、資格の有無やレベルに基づいて、支給される固定的な手当のことです。一般的には、企業の社内規定に基づいて支払われる期間や金額が定められています。

資格手当は、社員のスキルや知識を評価し、それに応じた報酬を与える仕組みです。たとえば、特定の資格を取得した社員には、その資格に応じた手当が支給されることがあります。また、資格のレベルによっても手当の額が変動することがあります。

一方、業績手当は、会社の営業成績や目標達成度に応じて、支給される報奨金のことを指します。会社が販売や契約受領などの営業ノルマを達成した社員には、業績手当が支給されることがあります。

業績手当は、社員の業務成果や目標達成度によって額が変動するため、頑張り次第で手当の額が増える可能性があります。

資格手当と役職手当

資格手当は、特定のスキルや知識を認定する資格を持つ人に支給される手当のことです。企業が従業員の専門知識やスキルを評価し、資格手当を支給することで従業員のモチベーションを高められます。

一方、役職手当は、役職や職階に応じて支給される追加の手当のことです。たとえば、部長や課長などの上級職に就いている人には、役職手当が支給されることがあります。

役職手当は、その人の責任や業績に応じて支給されることが一般的です。役職手当は、給与に加えて支給されるため、モチベーション向上や責任感の醸成に役立ちます。

資格手当と役職手当は、それぞれ異なる要素に基づいて支給される手当ですが、どちらも働く人のモチベーション向上や成果の評価に役立つものです。企業は、適切な手当制度を導入することで、従業員のやる気を引き出し、組織全体の成果向上に繋げられます。

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資格手当を導入する際の注意点

資格手当を導入する際の注意点
資格手当を導入する際の注意点

ここでは、資格手当を導入する際に検討すべきことについて解説します。

制度設計のポイント

制度設計において重要なポイントは、資格手当の支給方法、金額、対象です。資格手当は会社独自で決められます。しかし、支給する際にはいくつかの考慮点があります。

まず、資格手当を支給すると、残業単価がその分増加することを考慮する必要があります。資格手当を受ける従業員は、その分の手当を受け取るために、より多くの残業をする可能性があります。そのため、残業に対する単価を適切に設定することが重要です。

また、一度資格手当を設定すると、将来手当金を減額する必要が出た時に従業員からの反発が予想されます。そのため、将来に渡る経営への影響も含めて、手当金の設定には慎重に考える必要があります。

さらに、制度導入時には社内外への情報開示や文書の残し方にも注意が必要です。制度の公平性や透明性を保つために、制度の内容や運用方法を明確にして公開しましょう。

従業員や組合とのコミュニケーション

資格手当の導入には明確な意図や背景の共有が欠かせません。企業は従業員や組合とのコミュニケーションを通じて、なぜ資格手当を導入するのか、どのような目的を持っているのかを明確に伝える必要があります。

資格手当の導入により、従業員のスキル向上やモチベーションの向上を図るなど、具体的な目標を示すことで、共通の理解と協力を得られます。

次に、フィードバックの取り組みが重要です。従業員や組合からの意見や要望を積極的に収集し、資格手当制度の改善や調整に反映させましょう。

定期的なアンケート調査や意見交換の場を設けることで、従業員や組合の声を聴き、制度の問題点や改善の可能性を把握できるでしょう。

資格手当の事例3選

資格手当は企業ごとに制度設計の自由度が高いため、導入時にどのような制度にするか迷う場合もあるでしょう。ここでは、実際に資格手当を運用している事例を3社紹介します。

株式会社アプティ

自動車産業専門のマーケティング・人材会社の株式会社アプティでは、MBAや中小企業診断士、日商簿記2級など、業務関連資格に1,000~30,000円の資格手当を支給しています。全部門共通および部門ごとの対象資格が設定されており、日商簿記2級のような汎用的な資格から、管理部向けの社会保険労務士のような、専門性の高い資格まで、カバーされているのが特徴です。

さらに、ITパスポートやウェブ解析士などIT系の資格は全部門共通となっており、DX推進を目指す会社の姿勢も読み取れます。

また、正社員だけではなくアルバイトも対象のため、アルバイトから正社員登用を希望する従業員のモチベーションも上がるでしょう。

(出典:株式会社アプティ「福利厚生」

株式会社フェニックス管理

不動産管理会社である株式会社フェニックス管理は、不動産関連、建築関連、法律関連の資格を対象にした資格手当制度を運用しています。合格後の報奨金と毎月の資格手当の両方が支給されるのが特徴です。

特に報奨金は10万~100万円とレンジが高く、従業員の中には5つの資格を取得し、合計125万円の報奨金を得た事例もあります。同社ではそうした事例を社外に発信し、求職者向けのアピールとしても活用しています。

また、専門知識が必要となる不動産業界は、従業員のスキルアップを促進する仕組みとして資格手当が効果的に機能していると言えるでしょう。

(出典:株式会社フェニックス管理「資格手当で報奨金125万円&年収54万円アップした社員を紹介!専門知識&給与アップにつながる福利厚生」

ヤンマーアグリ株式会社

農業関連機械メーカーのヤンマーアグリ株式会社では、社内検定制度を設置し、合格者に資格手当を出しています。社内検定の内容は、国の技能検定制度(農業機械整備技能士)のものに加え、同社商品のメンテナンスに関する知識を盛り込んで作成されており、厚生労働省にも認定を受けています。

同社では、検定に合格した従業員に対し資格手当を支給し、従業員のサービスレベルを上げつつモチベーション向上にも取り組んでいます。また、社内検定の取得は昇格要件ともなっており、人事制度と連携させることで検定の形骸化を防いでいる点も特徴です。

(出典:厚生労働省「認定社内検定活用事例集」p.9-10)

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「資格手当」に関するよくある質問(FAQ)

よくある質問
よくある質問

ここでは、資格手当に関するよくある質問と回答をまとめました。

資格手当を導入する企業の主な目的は何ですか?

資格手当を導入する企業における主な目的は、人材のスキルアップやモチベーション向上を促進することです。高度な専門知識や技能を持つ人材の確保・維持を図り、企業ブランディングや業界内での競争力強化を目指します。

資格手当は毎月支給されるものなのでしょうか?

一般的には、資格手当は毎月固定的に支給される場合が多いです。しかし、すべての企業で同じ支給方法が採用されているわけではありません。一部の企業では、期間に制限があったり、合格後の一時報奨金のみが支給される場合もあります。

具体的な支給方法については、勤務先の社内規定を確認する必要があります。

資格を持っているのに資格手当がもらえない場合、どのような原因が考えられますか?

企業の対象外の資格である可能性や手続きや申請の不備、一定の期間や実務経験の要件がある場合が考えられます。勤務先の社内規定を確認して資格手当制度や条件を正確に理解し、必要な手続きや要件を満たすようにしましょう。

人気や需要が高い資格に関連する資格手当のランキングはありますか?

人気や需要が高い資格に関連する資格手当のランキングは、業界や企業によって異なります。ただし、一般的には専門性が高く、需要が高い分野では資格手当が高額になる傾向があります。

特にIT、医療、建築などの専門性の高い分野では、その分野に関連する資格を持つことで手当が支給されることが一般的です。

なお、下記記事では、DX(デジタルトランスフォーメーション)推進向けのおすすめの資格を紹介しています。

資格手当が廃止された場合、既存の従業員への影響はありますか?

資格手当が廃止されると、給与面での減額による従業員のモチベーション低下、離職率の増加などが懸念されます。また、資格手当の廃止にあたって、法的・契約上の問題や組合との交渉が必要になる場合もあります。

資格手当のある求人を探す際のおすすめの方法やポイントはありますか?

資格手当のある求人を探すには、求人情報サイトやエージェントを活用し、業界や資格に特化した求人情報を重点的に収集しましょう。また、企業HPなどを参照し、福利厚生や手当に関する情報をしっかりと読み取ることも大切です。

資格手当で従業員のスキル・モチベーション向上を目指そう

資格手当は、従業員にとってスキルアップへのインセンティブとなる施策です。また、給与面に影響するため従業員にもたらすモチベーション向上効果も高く、求職者へのアピールとしても活用できます。

一方で、制度設計によってはコストがかさむリスクもあるため、対象資格や金額については慎重に検討しましょう。

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