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働き方改革とは?推進の目的と取り組みの課題・導入手順を解説

多様な働き方を推進する「働き方改革」の制度適用が始まり、新しい勤務体系を導入する企業が増えています。従業員の生産性を高め、自社のブランド力を向上できると期待できる一方で、自社の働き方改革にはどの制度を導入すればよいのか、労務管理の注意点は何か、疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。

本記事では、働き方改革の目的と背景および内容、導入による成果と課題について、わかりやすく解説します。導入手順も紹介しますので、ぜひ自社での導入にお役立てください。

また、侍の法人研修は45,000名以上の指導実績から確立した独自メソッドにもとづき、貴社の抱える課題や目的にあわせてオーダーメイドでカリキュラムを作成。短期間で最大の効果を出す最適なプランをご提案します。

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目次

働き方改革の目的と背景

働き方改革の目的と背景
働き方改革の目的と背景

「働き方改革」は長時間労働を削減し、多様な働き方を推進する目的で施行されました。政府は同時に、日本の労働生産性を向上させることも主要な目的としています。

始めに、働き方改革の概要と背景、経済成長と過度な労働、それにより引き起こされた過労死との関連について解説します。

働き方改革とは

働き方改革とは、働く人が自分のライフスタイルにあわせて、働き方を選べる社会を実現するための取り組みのことです。政府が「一億総活躍社会」を掲げ2018年7月に公布した「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律(働き方改革関連法)」に基づき、施行された施策の総称でもあります。

労働関連法の改正が行われた背景には、少子高齢化による、生産年齢人口の減少があります。日本の生産年齢人口は1995年をピークに年々減少を続け、2065年には約半数にまで減少する見込みであることから、不足する労働力を補う必要性が生じています。これまで以上に多くの高齢者や障がい者、女性などが、労働に参加しやすい仕組み作りが求められているのです。

また、共働き世帯の増加や、要介護者人口の増加により、育児や介護と両立できる働き方が必要とされるようになりました。こうした働き方のニーズの多様化も、働き方改革が推進されている理由です。

さらに、先進国の中で日本の労働生産性が低いことも、国が働き方改革を推進する理由の一つです。主要先進7ヵ国で日本の労働生産性は最下位、OECD(経済協力開発機構)加盟国36ヵ国でも20位前後であることから、国の競争力を高めるための施策として、日本の労働のあり方を変える必要があります。

日本の労働力不足と労働ニーズの双方を解決でき、柔軟な働き方を推進しながら労働生産性を高める施策が、政府の進める働き方改革なのです。働き方改革が進めば、多様な人材が仕事で能力を最大限に発揮できるでしょう。その結果、社会の多くの課題が解決されると期待できます。

(参考:雇用・労働『働き方改革』の実現に向けて 厚生労働省)

経済成長と過度な労働の関係

働き方改革が進められた背景には、日本の経済成長とともに深刻化した長時間労働の問題がありました。

1965年からの10年間で、日本は経済規模が2倍になる成長を遂げ、働けば働くほど企業も個人も潤う時代となり、残業の常態化が進みました。従業員としても会社の指示に従い働くことで昇格・昇給できていたため、長時間労働がそれほど問題視されませんでした。同じ時期に導入された年功序列・終身雇用制度により、従業員の帰属意識が強くなったことも、残業を断りにくくし、長時間労働を誘発する要因となっています。

しかしバブル崩壊により企業の業績が頭打ちになると、以前のような長時間労働をしても労働者の処遇が改善されることはなくなりました。生活や健康を犠牲にして長時間労働することに対し、社会全体で問題意識が芽生えたのです。

近年は政府・企業ともに労働時間の短縮を図っており、2021年のOECDの調査によると日本の年間労働時間は1,607時間で、OECDの44ヵ国の平均値を下回る数値です。ただし統計にはパートタイム労働者など短時間労働者が含まれるため、フルタイマーだけで見るとさらに長時間である点に注意が必要です。

(参考:労働時間 (Hours worked) – OECD

過労死・過労自殺問題について

働き方改革には、長年日本社会の課題であった過労死や、過労自殺をなくす目的もあります。

過労死とは、極度の疲労に起因する脳や心臓の疾患による死亡のことで、過労自殺とは、極度の疲労やハラスメントに起因する自殺のことです。過労死という言葉が生まれたのは1978年、社会に認知されたのは1988年の「過労死110番」以降です。過労死としての初めての労災認定は1991年でした。

過労死を問題視した政府は、時間外労働について労災認定の基準とする「脳・心臓疾患の労災認定基準(通称:過労死ライン)」を設けています。過労死ラインとは、健康障害のリスクが高まるとされる時間外労働の時間を示す言葉で、次の数値で設定されています。

  • 発症日の直近1ヵ月で、残業時間が月100時間を超えている
  • 発症日前2ヵ月~6ヵ月間の残業時間がつき平均80時間を超えていること

(参考:脳・心臓疾患の労災認定基準 改正に関する4つのポイント 厚生労働省)

さらに2021年9月以降は上記ラインに達していなくても、これに近い労働時間や労働時間以外の負荷要因があると、健康障害との関連性が強いとされ、労災認定される可能性が高くなりました。

また、労働時間以外の次の負荷要因についても、企業に適切な管理が求められています。

  • 休日のない連続勤務
  • 勤務間のインターバルが短い勤務
  • 事業場外における移動をともなう業務
  • 心理的負荷をともなう業務
  • 身体的負荷をともなう業務

(参考:脳・心臓疾患の労災認定基準 改正に関する4つのポイント 厚生労働省)

労災認定において、疾患や死亡と業務の因果関係を証明することは困難であることから、厚生労働省では目安として、時間外労働時間を用いています。

働き方改革の主な内容と施策

働き方改革の主な内容と施策
働き方改革の主な内容と施策

政府が進める働き方改革には、さまざまな施策があります。ここでは労働時間に関連する、次の4つの施策について詳しく解説します。

労働時間の上限規制

「時間外労働の上限規制」とは、働き方改革により導入された、時間外労働の上限を明確化する制度です。2019年4月に大企業に適用され、2020年4月には中小企業にも適用されています。

2019年以前から1日8時間・週40時間を超えて働く残業は原則禁止でしたが、「特別条項付き36協定(通称36協定)」による労使の合意があれば、超過する残業が認められていました。

しかし2019年の法改正で、特別条項による時間外労働に次の上限が設けられています。

原則:月45時間・年間360時間まで
特別条項:臨時的な特別な事情がない限り、上記を超えてはならない。かつ、特別な事情があっても、下記の範囲内とする

  • 年間720時間以内
  • 時間外労働+休日労働が月間100時間未満
  • 時間外労働+休日労働の2~6ヵ月平均がすべて80時間以内
  • 月45時間を超えることができるのは年6ヵ月まで

(参考:時間外労働の上限規制 | 働き方改革特設サイト |  厚生労働省)

上記に違反した場合、6ヵ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科されることがあるため、労務管理に誤りがないよう、注意が必要です。

時間外労働に関連し、労働基準法とあわせて労働安全衛生法も一部改正され、休日出勤を含む時間外労働が月80時間を超えた従業員は、産業医の面接指導が義務づけられています。

フレックスタイム制度の推進

フレックスタイム制とは、一定期間の総労働時間をあらかじめ定め、その範囲内で労働者が始業・終業時刻、労働時間を決めることのできる制度です。⽇々の都合に合わせ、時間をプライベートと仕事に自由に配分できるため、ワークライフバランスがとりやすい勤務体系です。

2019年の法改正では、総労働時間の清算期間の上限が、1ヵ月から3ヵ月へ延⻑され、より柔軟な働き方が可能になりました。

フレックスタイムが適切に運用されれば、労働時間の効率的な配分が可能となり、労働⽣産性の向上が期待できます。従業員にとっては子どもの保育園の送り迎えや、オフピーク通勤などが可能となり、企業にとっても従業員の離職を減らせるメリットがあります。

テレワークやリモートワークの普及

テレワークとは、ICT(情報通信技術)を利用することで、時間や場所を有効に活用できる、柔軟な働き方のことです。テレワークには在宅勤務、モバイルワーク(場所や時間に囚われずに働くこと)、サテライトオフィス勤務の3種類があります。

勤務地が自由になり、地方での勤務や、在宅介護との両立などが可能となることがテレワークの利点です。また通勤時間の削減効果も、従業員の心身負担の軽減につながります。

企業にとっても、テレワークの導入により労働時間の削減効果を高めることが可能です。実際にテレワークを積極採用している企業の6割以上で、労働時間が減少しています。

政府は全労働人口の10%をテレワーカーにする目標を掲げているほか、テレワークを推進する従業員1,000名以下の企業に対し、1企業上限500万円の助成金を用意するなど、新しい働き方の普及に注力しています。

有給休暇の取得促進

厚生労働省は年次有給休暇の取得を促進するために、雇用者に対し、労働者に年5日間の有給を取得させることを義務付けています。

有給休暇(年次有給休暇)とは、従業員の心身のリフレッシュを図る目的で、原則として、従業員が請求する日時に与える休暇です。

従来は有給休暇を取得するために、従業員が自ら申請する必要があったため、上司や同僚に気兼ねして申請できないケースもありました。また、雇用者に対する年次有給休暇の義務づけがなかったため、取得できないまま2年の時効を迎えてしまうことも頻発しています。

国は働き方改革において、年次有給休暇の取得促進のために、雇用者側の管理体制について次のことを定めています。

  • 年次有給休暇管理簿の作成と3年間の保存
  • 就業規則への規定
  • 罰則(年5日間の有給休暇を取得させなかった雇用者には30万円以下の罰金が科せられる)

(参考:年5日の年次有給休暇の確実な取得 厚生労働省)

さらに厚生労働省は、企業が従業員の有給休暇を管理しやすい方法として、基準日を年始や年度始めや月初に統一するなどの提言をしています。また、休暇の取りにくい業種に対しては、製造業における企業や事業所の一斉付与方式(一斉休暇)、流通・サービス業における班・グループ別交代制付与方式などの提言を行い、休暇取得を促しています。

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働き方改革の導入手順

働き方改革の導入手順
働き方改革の導入手順

国は働き方改革のさまざまな施策を実施していますが、自社ではどのように働き方改革を導入すればよいか、わからない企業もあるでしょう。

ここから、実際に働き方改革を導入する場合の手順を紹介します。

現状の労働環境を分析

まず、自社従業員の労働状況について、現状の課題の把握と分析を行うことから始めます。

具体的には、従業員の労働環境に対する満足度をアンケートやヒアリングで調査すると同時に、部署ごとに労働時間と生産性のデータを収集し、分析して課題を洗い出します。

あわせて、従業員の健康被害を防ぐために、ストレスチェックの実施と実施結果のデータ化・分析を行いましょう。

目標を明確に設定

洗い出した自社の課題から、解決すべき目標を明確にします。解決したい課題が複数ある場合は、優先順位をつけましょう。

育児や介護との両立、資格取得に向けた自学といった、従業員一人ひとりのワークライフバランス実現への道筋を立てるために、労働時間短縮・生産性向上のための具体的な目標(KPI)設定を行いましょう。

柔軟な働き方を導入

柔軟な働き方を導入
柔軟な働き方を導入

設定した目標に沿って、柔軟な働き方の制度を導入します。

フレックスタイム、リモートワークや、複数の組み合わせなどから、自社の業態にあう施策を選択します。

ただし、給与や労働時間などの労務管理が煩雑になることや、制度が浸透するまで従業員の戸惑いも予想されます。制度への正しい理解を深めるために、新しい働き方のルールづくりやガイドラインを策定し、社内へ浸透を図りましょう。

労働環境を改善

働き方改革の導入とあわせて、制度を適切に運用できる職場環境を整備します。

具体的には、十分な休憩場所の確保や、労働現場の照度、温度・湿度の調整など、労働安全衛生法の衛生基準に基づき、安全で快適な職場環境を整えます。

産業医による相談を受けやすい環境を整えることも、健康被害を防ぐうえで重要です。産業医の認知度を高めると同時に、利用しやすい文化を作ることにも留意しましょう。

評価とフィードバックを継続的に実施

先に設定したKPIに基づき、働き方改革の進捗管理と効果測定を行います。

具体的には労働時間の短縮や、業務の効率化、生産性の向上について分析と改善案の策定を実施します。

ただし、導入してから効果が出るまでには時間がかかります。従業員からの意見とフィードバックを活かし、改善へ向けてPDCAサイクルを回しましょう。

社内文化の形成

働き方改革を実施し定着させるためには、従​​業員の意識改革も必要です。

従業員の中には、新しい制度に戸惑う者や、従来の業務体系に固執する者もいるでしょう。その際に対話を通じて一人ひとりの意見に耳を傾け、事情を把握することも求められます。

また、働き方改革の導入・運用の成功事例を学ぶことで、ノウハウを自社や組織での運用に取り入れることも、制度を浸透させ自社文化に根づかせるために有効です。

働き方改革の影響と成果

働き方改革の影響と成果
働き方改革の影響と成果

働き方改革を推進すれば、労働生産性が向上し、従業員の健康とワークライフバランスが改善され、結果的に企業の業績が向上する効果が期待できます。

ここから、働き方改革の影響と成果について一つずつ解説します。

労働生産性の変化

働き方改革で多様な働き方が実現すれば、従業員の集中力と生産性向上が望めます。労働時間の短縮と業務効率化により、企業の収益性を高めることも可能です。

またICT技術の利活用で、ペーパーレス化やコミュニケーションの即時化、不要な移動の削減による、業務効率化が実現できます。例えば営業部門でCRM(顧客関係管理)などのツールを活用すれば、オフィスへ出社しなくても営業日報の記録や管理、顧客への迅速かつ的確な対応などが可能になります。

さらに働き方改革で、仕事と育児や介護との両立が可能になった結果、能力のある従業員の離職防止や、女性管理職の登用といった、人材活用の選択肢が増えるのです。

従業員の健康とワークライフバランスの改善

残業規制と労働時間管理の徹底により、従業員の過労が減少します。有給休暇の取得率アップで休養時間の確保が可能になるほか、柔軟な勤務体系で通勤負担の軽減も可能です。

働き方改革には、メンタルヘルスの維持・向上の効果もあります。過重労働の防止による心身不調の予防や、有給休暇取得や柔軟な働き方によるリフレッシュ効果がその例です。

フレックスタイム制やテレワークで、自分の用事や家族との時間を確保できるため、仕事の満足度も向上するでしょう。

企業の業績と働き方改革の関連性

働き方改革を導入した結果、従業員の満足度が向上し、業績改善にも結びつきます。

まず、ワークライフバランスを改善することで、従業員の満足度が向上し、仕事へのモチベーションを高めることが可能です。また、柔軟な働き方を採用すれば、ある程度自分の裁量で仕事ができるため、集中力が高まりイノベーションが生まれやすく、結果として成果にもつながりやすくなります。

さらにICT技術の利活用で、顧客の要望するタイミングでのコミュニケーションが可能となり、顧客満足度の向上も図れるのです。

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働き方改革の課題

働き方改革の課題
働き方改革の課題

働き方改革にはメリットが多い一方で、課題もあります。例えば、労働時間が短縮されれば給与が減少する問題が発生し、中小企業では働き方改革の導入が困難な実態もあります。また、多様な人材を受け入れることに馴染めない企業もあるでしょう。

最後に、働き方改革の課題と解決方法について、一つずつ解説します。

短縮労働時間と給与の問題

働き方改革が導入されると、残業が減ることで、人によっては収入が減る可能性があります。

残業規制が機能しない時代に制定された給与体系の中には、みなし残業を含む残業手当てを、厚く設定するケースも少なくありませんでした。この場合、働き方改革が始まったことで支給される残業代が減り、支給総額が大きく減少してしまうでしょう。

さらに、フレックスタイム制やテレワークの導入により、給与体系を再編する必要が生じます。労働時間の管理と時間外労働の管理、さらには時間外労働の時間数に応じて割増賃金が発生するなど、管理面での困難が生じることも導入時の課題です。

手取り収入の減少による従業員のモチベーション低下を防ぐためには、制度に見合う新しい賞与や手当を設けたり、福利厚生を手厚くしたりといった方法で、従業員へ新たなベネフィットを提供することを検討しましょう。

中小企業における実施の難しさ

働き方改革には、制度改変に多くの資金とリソースが必要にもかかわらず、多くの中小企業では改革のためのリソースが不足していることも事実です。

人材や資金、ICT技術が不足した状態で働き方改革を導入すると、業務の遅延やサービスの質の低下が発生しやすくなります。それでも業務を遂行しようとすると、隠れ残業へ移行する可能性もあります。

このような状態で強引に働き方改革を推進すれば、かえって従業員の不満がつのり離職を招いてしまうでしょう。さらに中小企業では、大手と比べると人材採用面でも不利であるため、ますます人材不足が進みます。

こうした負のスパイラルに陥らないためには、できるところからDXにより業務の無理・無駄・ムラをなくしていくことが有効です。

多様な働き手のニーズへの対応

働き手の多様なニーズに応えることの必要性も、働き方改革の大きな課題です。

労働人口の減少による人材不足、働き手の価値観の変化のほか、近年は顧客ニーズの多様化と国際化も、企業の市場環境を左右する重要な要素です。国際的な需要に対応するために、企業には多様な価値観が生み出すイノベーションが求められます。また国内においても、高齢者や主婦、地方在住人材の登用などが今後ますます求められます。

長年にわたり年功序列・終身雇用制の均一的な採用を行なってきた企業が、多様な雇用体系に切り替えることは容易ではありません。企業が多様な人材を受け入れ、活躍の場を提供するためには、育児・介護休業制度などを利用しやすい環境を整備し、従業員にダイバーシティ研修を実施することから始めることをおすすめします。

企業が多様性を受け入れるメリットは、多彩な視点によるイノベーションが生まれること、グローバル市場での競争力が高まること、社会的信用が得られることです。その結果、企業のブランド力が向上し、競争力も高まるのです。

「働き方改革」に関するよくある質問(FAQ)

よくある質問
よくある質問

最後に、働き方改革に関するよくある質問にお答えします。働き方改革が始まった時期、残業規制、改革の3つの柱、改革における厚生労働省の役割について解説していますので、参考にしてください。

働き方改革はいつから始まったのですか?

働き方改革の始まりは、2019年4月に「働き方改革関連法」の改正法が施行されたことです。政府の法改正の背景には、少子高齢化による労働人口の減少、長時間労働の慢性化、正規・非正規雇用労働者間の賃金格差があります。

改正法は、大企業は2019年4月に、中小企業は2020年4月に適用されています。なお自動車運転業、建設業、医師などについては、業種の特殊性により2023年3月までの適用猶予が設けられています。

働き方改革による残業制限はどのようになっていますか?

働き方改革による残業制限は、次のとおりです。

原則:月45時間・年間360時間まで
特別条項:臨時的な特別な事情がない限り、上記を超えてはならない。かつ、特別な事情があっても、下記の範囲内とする。

  • 年間720時間以内
  • 時間外労働+休日労働が月間100時間未満
  • 時間外労働+休日労働の2~6ヵ月平均がすべて80時間以内
  • 月45時間を超えることができるのは年6ヵ月まで

上記に違反した場合、6ヵ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科されることがあります。

(参考:時間外労働の上限規制 | 働き方改革特設サイト | 厚生労働省

「働き方改革の3つの柱」とは何ですか?

「働き方改革の3つの柱」とは、次の3つを指します。

  • 労働時間の是正
  • 正規、非正規間の格差解消
  • 多様で柔軟な働き方の実現

労働時間の是正は、かつて多発した過重労働による過労死の防止を目的としています。

正規・非正規間の格差是正は、同じ仕事内容に対し同じ賃金(同一労働同一賃金)を支払うことで、正規・非正規間の賃金格差の解消を図る目的です。

多様で柔軟な働き方とは、「高度プロフェッショナル制度」や「フレックスタイム制」を指し、出退勤や仕事の裁量に柔軟性を持たせた働き方により、労働生産性の向上を図る目的で推進されています。

厚生労働省は働き方改革にどのような役割を果たしていますか?

働き方改革において厚生労働省は、改革の推進と監督の役割を担っています。

実施施策は、労働時間の短縮などの労働環境の整備、多様な就業形態の普及および雇用・就業形態の改善、多様な人材の活躍促進など、多岐にわたります。

また、施策ごとの統計と分析・評価を実施しているほか、取り組み事例紹介などを通じて導入ノウハウを広く社会に提供しています。

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まとめ

働き方改革を導入し適切に運用すれば、従業員のワークライフバランスが改善し、モチベーションと自社エンゲージメントの向上が期待できます。さらに全社的な労働生産性の向上により、自社のブランド力と競合優位性を高めることも可能です。

働き方改革を効果的に運用するためには、自社の課題を解決する明確な目標を設定したうえで、継続的な評価とフィードバックによる改善のサイクルを回すことが求められます。また、多様な人材が自社で活躍できるためには、従業員への意識改革やダイバーシティ教育による環境改善が必要です。

近年、働き方改革を実施している企業が増えています。ぜひ新しい組織運営を学び、自社で導入する方法をご検討ください。

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