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ビジネスの生産性とは?効率との違いや計算法・高め方、事例も紹介

働き方改革が推進される現代において、限られた人材でビジネスの効率化を図るためには、生産性の向上が必須です。しかし生産性を高める方法や指標の見方がわからず、お悩みの企業担当者も多いのではないでしょうか。

本記事では、生産性の意味と重要性、計算方法、よくある誤解と生産性を高める方法について解説します。生産性を高めた成功事例や失敗事例も紹介しますので、自社の生産性を高めるためにお役立てください。

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目次

生産性とは?

生産性とは?
生産性とは?

「生産性」とは成果とそれを生むために投入された資源との比率のことで、「産出(アウトプット)÷ 投入(インプット)」で算出されます。近代経済学の父、アダム・スミスが生産性(productivity)を論じた

概念であり、現代では企業や国、経済の健全性や成長性を判断する重要な指標として注目されています。

まず始めに、生産性とは何か、重要性と種類、測定方法について解説します。

「生産性」がなぜ重要か?

総務省「令和3年版 情報通信白書|生産性向上の必要性」によると、労働生産性向上が国民の経済的な豊かさの実現に不可欠としています。就業者1人1時間あたりの労働生産性は、2019年時点でG7各国の中で最下位、1位の米国と比較すると約6割という低水準のためです。

少子高齢化が進み、労働人口が減少し続ける日本においては、国内のGDPや経済成長率を向上させるために、生産性の向上が不可欠です。

さらに生産性と労働生産性向上の鍵を握るのは、労働者の働く意欲と幸福感であるともいわれます。2022年2~3月パーソル総合研究所 「グローバル就業実態・成長意識調査(2022年)」によると、調査対象18ヵ国の中で「働くことを通じて幸せを感じている」割合が、日本は49.1%ともっとも低い数値でした。

これにより、日本人の労働意欲の低さと生産性向上の難しさが伺えます。

日本人の労働意欲と幸福感を向上させるためには、日本企業の課題である長時間労働に対する、意識改革が必要です。しかし、高度成長期以降、時間外労働が常態化し、残業や休日出勤が当たり前の企業文化が醸成され、労働者の幸福やワークライフバランスとは程遠い労働環境が、長期にわたり続きました。

近年のDX化や2019年施行の「働き方改革」により、改善傾向にあるものの、依然として日本企業の生産性向上には課題が山積しています。近年の人材確保が困難な局面においては、企業の競争力を強化するうえでも、従業員1人ひとりの生産性向上が必須です。

(出典:総務省|令和3年版 情報通信白書|生産性向上の必要性
(出典:グローバル就業実態・成長意識調査(2022年) – パーソル総合研究所

生産性の種類(労働生産性、資本生産性など)

生産性とは、産出物(製品やサービスなどの生産物)と、それを生み出すために投入された資源(機械設備や土地、建物、エネルギー、原材料など)の比率を指すもので、次のように算出されます。

  • 生産性=産出(output) ÷ 投入(input)

生産性には、次の一覧に挙げた「労働生産性」「人時生産性」「資本生産性」「全要素生産性」の4種類があります。

生産性の種類計算式指標の使われ方・特徴
労働生産性生産量 ÷ 労働投入量企業における一般的な生産性の指標
人時生産性生産量か生産額 ÷ 従業員の総労働時間従業員ごとの生産性比較
資本生産性生産量 ÷ 資本ストック量労働生産性とは相反関係
全要素生産性生産量 ÷(労働+資本+原材料など)合成投入量技術革新、経営戦略・ブランド戦略・業務革新・知的財産・無形資産の有効活用、労働能力向上 など

1つずつ解説します。

労働生産性

労働投入量(労働者数・労働時間)に対する産出成果物の比率のことです。一般に生産性とは労働生産性を指す場合が多く、1人あたりと1時間あたりの成果物産出を示すものがあります。

  • 1人あたり労働生産性=生産量 ÷ 労働者数
  • 1時間あたり労働生産性=生産量 ÷ 労働者数 × 労働時間

労働生産性を算出すれば、労働者1人または1時間にどれだけ成果に貢献しているのかを可視化することが可能です。

人時(にんじ)生産性

従業員1人が1時間働いた産出成果物の比率のことです。数値が高いほど効率よく利益を出すことができ、従業員間の成果を比較する際に使われます。計算式は次のとおりです。

  • 人時生産性=生産量か生産額 ÷ 従業員の総労働時間

資本生産性

土地や設備などの資本ストック量(有形固形資産)の投入に対し、生み出した付加価値の比率のことです。計算式は次のとおりです。

  • 資本生産性=生産量 ÷ 資本ストック量(有形固形資産)

稼働率を上げると成果物が増加するため、資本生産性は高まります。また、最新設備を投入すれば従事する労働者数が減るため、労働生産性は上がり資本生産性は下がるなど、一般的に労働生産性とは相反関係になる傾向です。

全要素生産性(TFP)

全要素生産性(Total Factor Productivity)とは、労働力・資本・設備・原材料など、すべての生産要素トータルに対し、上がった生産性の伸び率を表す指数で、計算式は次のとおりです。

  • 全要素生産性=生産量 ÷(労働+資本+原材料など)合成投入量

技術革新や、経営戦略・ブランド戦略・業務革新・知的財産・無形資産の有効活用、労働能力向上といった、数値で表しにくい生産性を表す指数として使われます。

生産性の分類には上記4つのほか、成果物の種別により「物的生産性」「付加価値生産性」に分類する方法があります。

物的生産性

労働の投入により産出されるもの(アウトプット)を「生産量」「額」などの物的成果物として、生産性を把握する際の指標です。生産量の効率性を示しており、次の計算式で求められます。

  • 物的生産性=生産量または販売金額 ÷ 労働投入量(労働者数または労働時間)

製造業における設備投資の判断や、品質管理の向上、営業といった事業部門の生産性を把握するために使用されます。

付加価値生産性

労働の投入により算出される成果物(アウトプット)を「付加価値」として生産性を把握する際の指標で、次の計算式で算出します。

  • 付加価値生産性=付加価値額 ÷ 労働投入量(労働者数または労働時間)

主に管理部門や企業全体の生産性を把握するために使用されます。

生産性を測定する方法

生産性を測定するには、前の項で解説した生産性の計算式に、必要な項目を当てはめて求めることが可能です。計算に使われる主な項目は次のとおりです。

  • 売上高
  • 仕入高
  • 減価償却費
  • 人件費
  • 原材料費
  • 販売費
  • 外注費
  • 運用費

生産性を測定するために、複数の指標がある理由は、1つの指標だけで経営状態を判断することが必ずしも適切でないためです。

例えば、業務に機器を導入して自動化を図れば、同じ労働者数で多くの業務を遂行でき、労働生産性は向上するでしょう。しかし機器の導入費用が利益の上昇分を上回れば、全要素生産性(TFP)は下がります。

企業の生産性を見る場合には、設備投資や人件費など、どの要素について分析したいのかにより、見るべき指標が異なります。企業全体の経営状態を総合的に判断するためには、複数の指標から多面的に判断することが必要です。

生産性を高めるヒント

生産性を高めるヒント
生産性を高めるヒント

生産性を高めるためには、各企業に適した戦術を用いる必要があります。

ここでは、テクノロジー、人的資源、組織文化と生産性の関連性についてヒントを提供します。

テクノロジーと生産性

ITツールやAIを活用すれば、生産設備投資や人件費を投じるよりも、少ないコストで業務を効率化でき、生産性を高めることが可能です。

ITツールでは工程管理やタスク管理、報告書類作成といった定型業務を自動化することで、従業員の労働時間を削減できます。また、社内SNSなどのコミュニケーションツールを活用すれば、リアルタイムで情報共有が可能です。近年は会議ツールによるオンライン会議やミーティング、商談もできるようになり、ツールを活用すれば集合するための移動時間や交通費を削減できます。

さらにAIを活用すれば、精度の高いデータ分析や入力、コンタクトセンターでの迅速なFAQ対応なども自動化できます。

しかしAIを導入する際には注意点もあります。運用までに学習のための膨大なデータが必要で、導入前に学習期間を設けなければならず、導入後も、精度を高めるための継続的な学習とメンテナンスが欠かせません。学習素材に問題があれば、学習したAIにも問題が生じてしまうため、AIの導入とメンテナンスにはある程度の専門知識とリソースが必要です。

人的資源と生産性

生産性を高める重要な戦術の1つに、モチベーションアップによる人的資源の有効活用があります。

従業員のスキルを可視化し、社内で共有することで、適材適所の人材配置が可能になり、人材育成にもつながります。適切な人材配置は従業員のモチベーションと労働生産性を向上させます。また、社内のスキルを把握できれば、組織で不足するスキルを持つ人材を採用する計画を立てることも可能です。

従業員のモチベーションを高めるためには、目標達成した際にプラスアルファの報酬が支払われる「インセンティブ制度」を活用することも有効です。金銭で給与に上乗せするのが一般的ですが、金銭的な報酬以外のインセンティブ制度も存在します。

例えば、他者からの評価をポイントなどで可視化する方法があり、評価基準も成果へのプロセスや勤怠など、企業で重要視する指標に基づき、さまざまなバリエーションを設定できます。

組織文化と生産性

組織の生産性を高めるためには、自律的でオープンな組織文化を醸成することが有効です。

自律性の高い組織では、一般にコミュニケーションが活発です。情報共有が活発なため、業務上の課題や解決方法、業務のノウハウが頻繁に共有され、結果として業務上の判断や課題解決が迅速化します。自律的な行動によりメンバーそれぞれが成長できるほか、チームや企業の目標・ビジョンを共有でき、チームワークを高めることも可能です。

一方、トップダウンの意思決定・伝達方式の組織では、部下が主体的に考え行動しなくなります。一見情報伝達が速く、業務遂行が迅速に感じますが、マネージャーが不在の時に業務が滞ってしまい、結果として、長期的な生産性が低下してしまうのです。

組織の生産性を長期的に向上させるためには、フラットあるいはボトムアップの意見交換ができる組織文化が必要です。

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生産性に関する誤解

生産性に関する誤解
生産性に関する誤解

生産性については、これまで多くの誤解がありました。例えば「忙しい=生産的」「多く働くほど生産性が高い」「マルチタスクは生産性が高い」などで、これらは逆に生産性を下げてしまう場合がほとんどです。

ここでは生産性に関するよくある誤解と解決法を解説します。

「忙しい=生産的」という誤解

多くの仕事をこなすことは、必ずしも生産性とイコールではありません。忙しさが効率低下の引き鉄となり、次の忙しさを招くことがあるためです。

仕事が忙しいと感じる人は、目の前の仕事に集中する代わりに、他の業務が目に入らない「トンネリング」という状態になります。この状態では、目先の問題に追われることでますます多忙になり、長期的に重要なことを後回しにした結果、さらに忙しくなる悪循環に陥るのです。

実際の業務日誌データをもとにした、創造的思考とプロジェクトの成果についての研究によると「効率を求め時間を気にするほど、思考が狭くなり、結果として最終的な成果の量が減少する」という結果が出ています。

仕事には集中が必要なものと、創造やアイデアが必要なものとがあり、人間の脳は集中(思考の狭窄)と創造(思考の拡散)の両方を同時に行うことはできません。仕事が多忙で集中を求められるほど、新しいアイデアが出にくくなり、生産性が低下するのです。

このことから、仕事で長期的な成果を生むためには、集中と創造をバランスよく行えるよう、適切なアイドリングが必要であると判明しています。

生産性と働き過ぎの関係

「多く働く人ほど生産性が高い」という社会通念も、生産性に対する誤解の1つです。

近年の働き方改革で、仕事と生活の調和を意味する「ワークライフバランス」の実現が求められています。しばしばプライベートに重きを置くという意味合いに受け取られますが、本来は個々の労働者が自身の生活スタイルに合わせ、主体的に仕事と生活の調和を作り上げるという意味です。

ワークライフバランス実現を目指し、業務効率化を図り労働時間を削減することで、過剰な労働を抑制し、労働意欲を高めながら生産性を向上させる効果が認められています。

生産性向上のためには、仕事の効率化と同時に、効果的な仕事の遂行が求められます。よく効率と効果は混同されますが、イコールではありません。「効率」ができる限り時間・リソース・工程の無駄を省くことであるのに対し、「効果」は費やすリソースにかかわらず、産出された改善や価値・成果を表します。

実際の業務遂行では、効率のみを優先すると方向性を誤る可能性があるため、効果性を優先するのが鉄則です。企業の目標を従業員と共有し、目標に向かって進捗していると確認できたら、効率化を進めるという手順が適切です。

効果性と効率性が高まれば、従業員は働き過ぎなくても生産性を上げることができます。

「マルチタスク」の罠

マルチタスクとは複数のタスクを並行し、同時進行することです。例えば「電話を受けると同時にメールの処理を行う」「会議に参加しながら議事録を作成する」「複数デバイスの同時作業」などがマルチタスクにあたります。

実は人間の脳は一度に1つのことしか実行できず、複数作業の同時進行は脳内の複数箇所を高速で切り替えているに過ぎません。一般的にいうマルチタスクの上手・下手は、切り替えの速さの違いです。同時進行を問題なく行えている人は稀で、通常は複数タスクにより意識が分散してミスが増え、結果的に生産性を下げてしまいます。

社会学者ジョン・ロビンソン博士たちの研究によると「ある作業から別の作業へと注意の切り替えを行うほど、時間に対するプレッシャーが増していく」との結果が出ています。 具体的には、マルチタスクにより作業者の脳にストレスが加わり、脳の偏桃体(感情をコントロールするエリア)を刺激します。その結果、脳が時間を細切れのように認識し、時間に追われているような感覚に囚われる「時間汚染」が起こってしまうのです。

時間汚染への対策としては、コロンビア大学の考案した「タスクシフト※」という手法で時間を管理することが有効です。

まず、マルチタスクをシングルタスクの集まりと捉え、実行すべきシングルタスクを洗い出し、重要度と時間により優先順位をつけます。次に、1週間の勤務時間を120分の「タスクボックス」に分け、洗い出したタスクを優先順位に則り、ボックスに割り振るというものです。

複数タスクを計画的に実行することで、同時進行するよりもかえって効率的に業務を遂行でき、生産性を高められます。

※タスクシフト:複数タスクに対し、あらかじめ切り替えのタイミングを決めておくタイムマネジメント手法。複数タスクを同時進行するよりも全体的な効率を高められる。

(出典:ATUS home : U.S. Bureau of Labor Statistics

「個人」の生産性を高める方法

「個人」の生産性を高める方法
「個人」の生産性を高める方法

従業員の生産性を高めるためには、個人の生活スタイルや仕事環境に合わせて、長く継続できる働き方を選択する必要があります。

ここでは、個人の生産性を継続的に高めるための、タイムマネジメント、効果的な休憩の取り方、ツールやアプリの活用について解説します。

タイムマネジメントの重要性

限られた時間を有効活用するためには、数あるタスクに優先順位をつけ「やること」と「やらないこと」を決めることが大切です。

より重要なタスクに集中するために、洗い出したタスクを緊急度と重要度で分類します。具体的には重要度を縦軸に、緊急度を横軸にしたマトリクスを作成すると、タスクを容易に整理することが可能です。

  • 1. 緊急度と重要度の両方が高いタスク:期限があること、クレーム処理、危機に関連する問題など
  • 2. 緊急度が低く重要度の高いタスク:人材教育、計画や準備、技術改善など 
  • 3. 緊急度は高いが重要度の低いタスク:電話・メールの対応、雑用など
  • 4. どちらも高くないタスク:待機時間、重要度の低い会議、雑談のコミュニケーションなど

緊急度だけが高い業務は不意に降りかかるため、つい優先してしまいがちですが、実際には重要度の高いタスクほど将来の事業にプラスになる可能性が高いため、計画的に実施することが必要です。例えば人材育成や新規プロジェクトの準備などが挙げられます。

重要度の高くないタスクに関しては、ツールを活用し自動化する方法もあります。やること・やらないことを取捨選択し、適切なタイムマネジメントを行うことが、生産性を高めるコツです。

効果的な休憩方法

仕事の休憩を効果的に取ることで、生産性を高められます。

集中力と生産性を高めるタイムマネジメント法として「ポモドーロテクニック」があります。ポモドーロテクニックとは、25分の作業時間と5分の休憩をワンセットとし、作業・休憩を4セット繰り返したら、15~30分のまとまった休憩を取るというタイムマネジメント手法です。短時間のセッションにより集中的に作業を行えば、モチベーションを維持しながら生産性を高めることが可能です。

ポモドーロテクニックのメリットは集中力が高まることと、精神疲労が軽減されること、プロジェクトの計画性を高められることです。4セット頑張れば長い休憩が取れるため、モチベーションを高める効果もあります。

実施する際には、タイマーを使用し、タスク完了までにかかったポモドーロ(作業・休憩の1セット)の回数を記録しましょう。今後のスケジュールを立てやすくなります。また、着信などでタスクを中断せずに済むよう、事前に対処法を決めておくことをおすすめします。

休憩時間には完全に仕事を離れ、脳をリフレッシュさせることが大切です。慣れることにより休憩で心身ともに充足されることを実感でき、タスクへの集中力がいっそう高まります。

ツールとアプリの活用

生産性を上げるために有効な方法は、デジタルツールの活用です。

ツールを導入することで、社内外での情報共有がスピーディーになるほか、チームの業務を一括管理できます。また、決裁や契約の締結なども簡素化され、手続きの時間が短縮されます。

特にリモートワークの進展が著しい近年では、チームのタスク管理と情報共有が特に重要視されるようになりました。プロジェクト管理ツールを導入すれば、進捗管理やチームメンバーとの情報共有が容易になり、業務の効率化を図れます。

プロジェクト管理ツールではガントチャート、ファイル共有、Wiki、掲示板、メッセージ・チャット、予算管理をトータルで管理が可能です。中には、タスク管理に特化したツールもあり、作業のステータスや時間を管理します。プロジェクトごと・タスクごとにも管理でき、マネジメントを効率化できます。

さらにタイムトラッキングが可能なアプリで作業時間を可視化できれば、時間がかかるタスクを洗い出し、原因を分析・改善するのに便利です。時間を意識することで集中力が上がるほか、分析結果を今後のスケジューリングに活かせます。

ツールによっては、個人のタスク管理ツールと職場のツールを連携して使うことも可能です。

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「組織」の生産性を高める方法

「組織」の生産性を高める方法
「組織」の生産性を高める方法

組織全体の生産性を持続的に高めるためには、個人の生産性を高めるだけでなく、組織としての戦略と行動計画が必要です。

ここでは組織の生産性を向上させるフレームワークについて、チームワークとコミュニケーション、プロセスの最適化、モチベーションを高める報酬の観点から解説します。

チームワークとコミュニケーション

チームワークの重要性は、メンバー間で能力を補完する関係性が構築され、業務が円滑に遂行されることです。チームワークが機能すると、業務負担が平準化され進捗が改善します。共通の目標に向けコミュニケーションを取るため、チーム全体の士気が向上します。

良いチームワークを構築するためには、役職の上下を問わず双方向のコミュニケーションが行われ、活発な意見交換ができることが求められます。

活発な意見交換を可能にするためには、チーム内の信頼関係と、会議の効率化が必要です。相互の信頼性を構築するためには、多様な考え方を尊重し合い、オープンなコミュニケーションを図る必要があります。

お互いの考え方が尊重される組織では、新たな発想を生み付加価値を産出しやすいため、生産性が向上します。また、会議では参加者の役割分担(ファシリテーターなど)を明確にしたうえで、会議の内容を事前にまとめ、会議のゴールを設定しておくことで、生産的な話し合いが可能です。

会議では参加者の集中力を維持できるよう、終了時刻を決めておくほか、事前に会議のアジェンダを配布することで、参加者に主体的に意見を考えてもらうことも、会議を生産的・効率的に進めるポイントです。

プロセスの最適化

業務プロセスの最適化により、組織の生産性を高めることも可能です。

社内手続きなどの業務フローは、一般に「申請→承認→決裁」の3つのステップを経なければなりません。このフローでは手続きが複雑化しやすく、決裁までに時間を要してしまい、ビジネスチャンスを逃すことにもなりかねません。紙ベースの決裁書類を電子化するだけでも、経由するステップを減らせるため、大幅に効率が上がります。

また近年はプロセス最適化のために、「リーン思考」「アジャイル」のように、小さなサイクルの改善を繰り返す業務プロセスが注目されています。

リーン思考とは、価値を顧客目線で定義し、生産工程の無駄をカットする考え方です。新たな製品を開発したり、新しい事業を開始したりする際に、必要最低限の機能を持った形で世に出し、利用者の声を聞きながら改良します。。段階ごとに改良を行ったり、内容を変えるなどして軌道修正を行えるため、一度完成した製品を改良するよりも無駄を省くことが可能です。

一方の「アジャイル思考」とは、「試行錯誤を繰り返して価値を高めていくこと」を重視する価値観のことです。アジャイルは「計画」「設計」「実装」「テスト」という開発工程を短期間で繰り返す、ソフトウェア開発の手法から生み出された手法で、短期間でPDCAを回して試行錯誤しながらソフトウェアの価値を高めます。計画段階で修正・変更を織り込み、小さな単位で修正を繰り返すため、手戻りによる無駄を最小限に抑えられることが特徴です。

リーン思考もアジャイルも、従業員が自律的に改善と実行を高速で繰り返す必要があるため、一般にトップダウンではなく、ボトムアップ意思決定プロセスが用いられます。組織を取り巻く環境の変化が速い現代では、生産性を高めるために柔軟かつ迅速に対応できる組織構造が求められるのです。

報酬とモチベーション

組織の生産性を高めるためには、従業員のモチベーションを高める報酬制度の導入も有効です。

従来の年功序列制度は、終身雇用の時代には従業員のモチベーションを高める効果がありました。しかし実力とは無関係に報酬が決まるため、人材の流動化が進んでいる現代では不適切です。

近年は、成果主義制度:従業員の仕事の成果などに応じ、給与・社内の地位などといった待遇を決定する成果主義制度を採用する企業が増えています。成果主義では、成果に至るプロセスも評価することが一般的で、実力に応じて報酬が決まるため納得を得られやすいことが特徴です。

モチベーションを高めるために、非物質的な報酬を提供する事例も増えています。次に挙げるのは、実際に生産性を上げている企業で導入している、非物質的報酬制度の例です。

  • 成績や自己研鑽、勤怠などに応じてポイントを付与し、好きなアイテムと交換できる
  • 福利厚生の一環として社内仮想通貨を導入、貯まったマイルに応じて商品や旅行券がもらえる
  • スタッフ同士の感謝や称賛の気持ちをポイント化し、1ポイント1円で給与に上乗せ支給する

金銭的報酬に加え、仕事のやりがいや、成長できる環境、ネームバリュー、ワークライフバランス、心理的安全性などの非金銭的報酬を提供することを「トータルリワード」と呼びます。企業にとっては、金銭的報酬よりも管理が煩雑な一方で、比較的ローコストで実施できるメリットがあります。従業員にとっては、金銭的報酬と非金銭的報酬の両方により、経済的安定を得ながら、仕事に自発性を持つことが可能です。

現在、トータルリワードはダイバーシティ経営に不可欠なマネジメント体系といわれ、導入を検討する企業が増えています。

生産性が向上した成功事例と失敗事例

ここまで、生産性についての基礎知識や詳細、企業の生産性を高めるさまざまな方法について解説してきました。

最後に、生産性の向上に成功した企業の事例3社と、失敗した事例を紹介します。自社での生産性向上の取り組みの参考にしてください。

ダイニチ工業株式会社

石油ファンヒーターなどの製造販売を行う「ダイニチ工業株式会社」では、アフターサービスを請け負う営業所の時間外労働増加という課題を抱えていました。

各営業所では、事務担当者1人で顧客の問い合わせに応じていたため残業が多く、休暇も取りにくい状況だったのです。そこで同社は、営業所の問い合わせ対応や受付業務を本社のコールセンターに集約し、コールセンターから営業所へ対応を割り振るシステムへと転換。各営業所員の残業時間を大幅に削減でき、休暇取得率を向上させることにも成功しました。

同社ではほかにも、業務で年間繁閑差のある開発職で変形労働時間制を、事務職でフレックスタイム制を導入。また、短時間勤務の従業員のためにも、特別に製造ラインを設けるなど、従業員が働きやすい環境を整備することで、生産性を向上させています。

(出典:ダイニチ工業ダイニチ工業株式会社

太洋工業株式会社

電子基板を製造する「太洋工業株式会社」では、会議の開催ルール制定により、業務改善に成功しています。

同社ではワークライフバランの取り組みを推進する中で、従業員に残業についてのヒアリングを実施。業務効率化施策の1つとして、17時以降の会議開催を禁止し、時間は45分までとしたほか、早く終了できるよう会議を立ったまま実施する工夫を実施しました。

同社ではほかにも、職種による変形労働時間制を導入するなど、さまざまな改革の結果、3年間で平均所定外労働時間の約10時間削減を実現。売上と営業利益を増加させながら、業務時短と生産性の向上に成功しています。

(出典:太洋工業株式会社太洋工業株式会社:働き方・休み方ポータルサイト

株式会社ザカモア

靴のインターネット販売会社「株式会社ザカモア」では、新人教育のOJTを体系化することで、業務の効率化に成功しています。

同社では受注業務の新人教育に時間がかかることに頭を悩ませていました。新人の一人立ちを早めるために、受注行程の業務を抽出し、タスクを作業順に並べてチェックリスト化するとともに、マニュアルを作成しています。

さらに実務でチェックリストを効率的に活用できるよう、各自に紙のリストでなくiPadを配布。入力内容を全社で共有できるようになり、効率のよい業務環境も実現しました。教育体系の改革とマニュアル化により、それまで1年かかっていた新人教育が、最短1週間まで短縮されたことは大きな進歩です。

役職および評価制度を止め、2週間に1回の1on1ミーティングを実施するなど、フラットでオープンな組織文化を持つ同社では、すべての従業員が主体的に業務改善に取り組み、生産性を向上させています。

(出典:株式会社ザカモア

生産性が低下した事例

生産性向上の取り組みに成功した企業がある一方で、失敗した事例もあります。

全国に支社と営業所を持つある企業では、生産性向上のために本社業務をデジタル化しました。ところが、全国の営業所では個人用パソコンを配布しておらず、FAXによる情報伝達が必須なうえ、行政への申請手続きを紙で行う必要があったため、紙の業務を削減できません。結果的に、各支社では紙とデジタルとの変換作業や、紙のファイリング・保管業務が生じ、全社的な業務標準化が大きく遅れてしまいました。

この事例では、デジタル化に先立って、支社や営業所の業務実情をヒアリングなどで把握し、全社で業務を最適化できる道筋を立てておく必要がありました。

生産性向上の失敗事例はほかにも、選択したツールが自社の目的に合わないケースや、準備が不足したままリモートワークを導入し、業務効率が低下するケースなどが挙げられます。

こうした事例を踏まえ、業務改善を生産性向上に結びつけるためには、以下の点に留意しましょう。

  • 業務改善の目的設定を具体的・明確にする
  • 業務改善の策定には、必ず現場業務に精通した者にも参画させる
  • 課題抽出と分析を入念に行う
  • ITツール導入時は教育とフォローを万全にする
  • 現場に対し業務改善の意図・ゴールを明確に説明する
  • 現場の実情に則した改善策を策定する

生産性向上のための施策を実施する際には、新しい業務フローに慣れるまで、現場に混乱が生じることもあります。そのため、従業員が一体となって改革に取り組めるよう、施策の意図を明確に伝え、意思疎通を図ることが肝心です。

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「生産性」に関するよくある質問(FAQ)

よくある質問
よくある質問
生産性の意味をわかりやすく説明してもらえますか?

生産性とは、労働力や設備・原材料などの投入(input)と、そこから得られる製品などの成果物(output)の割合のことです。生産性=生産量(output)÷投入量(input)で求められます。

「生産性が高い」とは、限られた時間やリソース・コストで成果を出す効率の高い状態、無駄のない状態、を指します。逆に「生産性が低い」とは同じ成果を出すために、多くの時間や労力などを必要とする状態です。

生産性を上げるためには、設備投資を行い工程を短縮する方法や、人材の配置転換を行い作業効率を上げる方法もあります。

「労働生産性とは」を簡単に説明してください。

「労働生産性」とは、労働投入量に対し、どれだけの成果物を生み出したかの割合のことです。労働者1人あたりで見る場合と、1時間あたりで見る場合とがあります。労働生産性は次の計算式で算出されます。

  • 労働生産性=生産量÷労働者数(または労働者数 × 労働時間)

労働生産性を高めるには、労働時間の短縮、ITツール導入による業務自動化、業務の標準化などの方法があります。

ビジネスの文脈で「生産性とは」何を指しますか?

ビジネスの文脈でいう「生産性」は、一般に「労働生産性」を指します。ビジネスにおいては業務効率化と効果性の向上(高付加価値化)との両面から、生産性向上を図ることが必要です。

市況が不透明な近年は、効果性向上が重視される傾向にあり、中にはユニークな報酬制度を導入することで従業員のモチベーションや創造性を高め、業績を上げている企業もあります。

仕事で「生産性とは」何を意味しますか?具体的にはどう影響するのですか?

仕事における「生産性」とは、仕事の質とタスク完了までの時間との比率を指すのが一般的です。

仕事における生産性向上の方法としては、ITツールを導入し定型作業の自動化を図るなどが挙げられます。また従業員のモチベーション向上のために、報酬制度の見直しやキャリアパスの明確化も有効です。

「生産性が低い」とはどういう状態ですか?どう対処すればいいですか?

「生産性が低い」とは、同じ成果を出すために、より多くの時間や労力・リソースを必要とする状態です。生産性が低い主な原因は、長時間労働の常態化、マルチタスク傾向、業務スピードの不一致、情報共有の遅延や不足です。

企業において生産性を高めるために留意するポイントは、次のとおりです。

  • 業務改善の目的設定を具体的・明確にする
  • 課題抽出と分析を入念に行う
  • ITツール導入時は教育とフォローを万全にする
  • 現場に対し業務改善の意図・ゴールを明確に伝達する
  • 現場の実情に則した改善策を策定する

まとめ

生産性は、現代ビジネスのさまざまな指標として使われます。自社事業の評価に適切な指標を選び、効果的に測定することで、改善すべきポイントの把握が可能です。

企業と個人の生産性を上げるためには、自律的な人材の育成、適切なタスク管理とタイムマネジメント、従業員のワークライフバランス、良好なコミュニケーションが不可欠です。業務効率化とコミュニケーションの円滑化を図るためには、ITツールの導入も有効です。

生産性を高める組織文化を醸成するために、社員に自社の目標を明確に伝えるとともに、社員教育による意識改革を進めましょう。

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