研修で人材育成を成功させるには?実施方法や事例を紹介
企業にとって、「研修」は従業員のスキルアップを図る非常に重要なプロセスです。少子高齢化や人口減少によって新入社員獲得が難しくなっている現在、既存の従業員を育成する必要性はますます高まるでしょう。
この記事では、研修を成功させるためのポイントや実施方法、成功事例を紹介します。
研修の基本知識
研修とは、受講者のスキル・知識習得を促進することです。企業にとって、研修は従業員のスキルを上げ、企業全体の競争力を高める重要な施策です。ここでは、研修の重要性や種類、注意点について解説します。
研修の重要性とメリット
企業において、従業員のスキル向上は重要な要素です。研修を通じて従業員全員のスキルを底上げすることで、組織全体の競争力が向上します。
また、従業員のスキル向上は、彼らのパフォーマンス向上につながります。研修を受けた従業員は、最新の知識やスキルを習得し、業務においてより効率的に取り組めるようになるでしょう。たとえば、コミュニケーションスキルやリーダーシップスキルを挙げれば、チーム内で円滑に業務を進められます。その結果、生産性や品質の向上、顧客満足度の向上などが見込まれるでしょう。
さらに、従業員全員のスキルを底上げすると、組織の競争力を高める効果もあります。研修によって、組織内での専門知識や技術の共有が進めば、他社と技術的な面での差別化が図れます。
加えて、研修は従業員のモチベーションやエンゲージメントの向上にも効果的です。研修によって、従業員は自身の成長やキャリアパスに関心を持ち、より意欲的に業務に取り組むようになります。また、組織が従業員の成長をサポートする姿勢を示すことで、人材の定着率が向上し、組織全体の安定性や成果にもつながるでしょう。
研修の種類と目的
企業が実施する研修は、対象者によって異なります。ここでは、代表的な種類を紹介します。
まず、新入社員向けの研修では、基本的なビジネスマナーやメールの書き方といった総合的な内容を中心に扱います。研修期間は半年ほどと、比較的長めなケースが多いでしょう。新入社員向け研修の目標は、企業の文化やルールを理解し、スムーズに業務に取り組む人材を育成することです。
次に、管理職向けの研修が挙げられます。たとえば、リーダーシップ研修やプロジェクト管理研修などです。管理職は部下を指導し、チームの成果を最大化する役割を担っています。そのため、リーダーシップやコミュニケーションスキルの向上が求められます。また、プロジェクト管理の研修では、効果的なプロジェクトの計画や進行管理、リスク管理などについて学びます。これにより、管理職は組織の目標達成に向けてリーダーシップを発揮できるようになります。
さらに、他の従業員にも、業務上の必要に合わせた研修が実施されます。たとえば、技術スキルの向上やコミュニケーションスキルの研修などです。
技術スキルの研修では、最新の技術や業務に必要なツールやシステムの使用方法を学び、業務の効率化や品質向上に活用することが目標です。一方、コミュニケーションスキルの研修では、効果的なコミュニケーションやチームワークの構築方法を学び、従業員同士や他部門との円滑なコミュニケーションを促進するねらいがあります。
研修の注意点
研修を実施するにあたっては、組織の目標に沿って研修の目標を設定する必要があります。研修は単なるスキル向上だけでなく、組織全体の目標達成に貢献することが求められます。研修の目的が明確であり、組織の戦略やニーズと一致していることを確認しましょう。
次に、研修プログラムの評価と改善を継続的に行うことが重要です。研修の効果を定量的・定性的な指標で評価し、フィードバックを収集しましょう。受講者の満足度やスキル向上の程度を測定することで、研修の改善点や課題を把握できます。継続的な評価と改善により、研修プログラムの質の向上が可能です。
さらに、受講者のニーズと学習スタイルに合わせて、研修のカリキュラムや期間をカスタマイズする必要があります。1つの研修プログラムが全ての受講者に適しているとは限りません。受講者のバックグラウンドやスキルレベル、学習スタイルに合わせて、個別のニーズに応える柔軟性が求められます。
最後に、適切な予算配分とリソース管理も重要です。研修には費用や人的リソースがかかるため、十分な予算を計画しましょう。また、継続的に実施することも視野に入れて予算配分をしておく必要があります。
研修が企業にもたらす付加価値
研修は企業にとってさまざまな付加価値をもたらします。代表的なものとしては下記2点が挙げられるでしょう。
それぞれ解説していきます。
従業員のスキルとパフォーマンスの向上
まず、研修によって、従業員は新たな知識やスキルを獲得でき、従業員自身のキャリアの発展や自己成長につながります。
さらに、座学研修で学んだ知識をeラーニングなどで復習し、実務で実践する機会があるとより効果的です。研修で得た知識やスキルを定着させることで、従業員はより効率的に業務を遂行できます。
研修によって従業員のスキルとパフォーマンスが向上すれば、企業全体の生産性も向上します。高度なスキルを持った従業員が増えれば、業務の品質や効率が向上し、結果として企業の競争力が強化されるでしょう。
加えて、研修を受けた従業員同士のコミュニケーションが深まることもあります。こうした機会によって、従業員同士の信頼関係やチームワークが構築され、業務の円滑な進行が期待できます。
リーダーシップの強化と組織の成長促進
研修は企業やビジネスにおいて、リーダーシップの強化と組織の成長促進に欠かせない要素です。
まず、研修によって従業員のリーダーシップスキルが発展します。特にグループワークなどを通じて、自己成長し、チームを効果的に指導する能力が向上します。管理職がリーダーシップスキルを身に付けると、組織全体のパフォーマンス向上につながるでしょう。
また、研修はチームマネジメントスキルの向上にも貢献します。リーダーはチームをまとめ、目標達成に向けてメンバーを指導する役割を果たします。研修によってチームマネジメントのノウハウやベストプラクティスを学ぶことで、リーダーはより効果的なチームビルディングやコミュニケーションスキルを習得可能です。
さらに、部下を育てるトレーニングスキルも向上できます。企業を持続的に成長させるには、従業員同士で自律的に人材を育成できる体制が必要です。トレーニングスキルが上がれば、部下のニーズや成長機会を理解し、適切なサポートを提供できるでしょう。
さらに、研修は組織文化の形成にも寄与します。研修によって企業独自の価値観や行動指針を共有すると、従業員同士の文化形成に大きな影響を与えます。互いに切磋琢磨するような文化が形成されれば、従業員の成長やスキル向上に対するモチベーションが向上するでしょう。
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研修の計画と設計
研修を成功させるには、計画段階での目標設定やカリキュラム設計を適切に実施する必要があります。ここでは、研修を計画・設計するにあたってのポイントを解説します。
研修ニーズの分析
研修プログラムの効果を最大限に引き出すには、最初に従業員のニーズを正確に把握することが不可欠です。
まず、企業全体の目標と戦略に基づき、従業員が習得すべきスキルを明確化しましょう。組織が追求する目標や競争戦略によって、必要なスキルや知識は異なります。組織のビジョンや戦略を踏まえ、研修の目的や重点領域を設定します。
次に、現状の従業員のスキルを把握し、目標とのギャップや成長のニーズを特定し、研修プログラムを計画します。従業員自身からのフィードバックも重要な情報源です。従業員の意見や要望を反映することで、研修の受講意欲や満足度も高まるでしょう。
さらに、ニーズ分析ツールやアンケート調査などの手法を活用すると、より効果的な分析が可能です。研修ニーズを定量的または定性的に評価し、データに基づいた意思決定ができます。従業員への匿名アンケートやグループインタビューなどを活用して、従業員の意見やニーズを集めることが重要です。
研修の形式
代表的な研修形式を5種類紹介します。
OJT/Off-JT研修 | 開催方法 | 概要 | メリット | デメリット |
---|---|---|---|---|
OJT研修 | 対面が中心 | 上司・先輩が指導者となり、実務をこなしながら指導を行う | 実務に即した学習ができる職場の文化や雰囲気を体感できる | 指導者のスキルや時間の制約受講者のスケジュールの調整が必要 |
Off-JT研修 | 対面研修 | 複数名で会議室・ITスクールなどに集まって実施する | 受講者同士の交流やネットワーキングが活発に行えるリアルタイムの対話やディスカッションが可能 | 受講者の移動や出張が必要会場や設備の確保が必要 |
Off-JT研修 | オンライン研修 | 複数名かつオンライン上で実施する | 場所や時間に制約がなく、柔軟な受講が可能受講者のコストや効率性が向上 | 対面でのコミュニケーションや実技演習が難しい |
Off-JT研修 | ハイブリッド研修 | 対面・オンラインを併用する | 場所や時間に制約がない対面のコミュニケーションや実践的なトレーニングも行える | 受講者のスケジュールの調整が必要 |
Off-JT研修 | eラーニング | 動画やテキストを閲覧して学習する | 場所や時間に制約がなく、自己ペースでの学習が可能学習の進捗や成績を追跡・評価できる | 対面でのコミュニケーションやグループ学習が難しい受講者の自己管理能力やモチベーションの維持が課題となる |
※OJT(On the Job Training)研修:先輩社員が指導役となり、実務をこなしながら学ぶ研修
※Off-JT(Off The job Training)研修:教室での集合研修など、実際の職場を離れて実施する研修
研修プログラムの設計方法
研修プログラムを設計するにあたっては、最初に研修の目標や学習成果を設定しましょう。設定した目標を受講者に共有すれば、研修プログラムの方向性や、明確な学習目標を示せます。
次に、目標に基づいてカリキュラムを作成し、トピックを選定します。研修の内容や順序を組み立てる際には、目標達成に必要な知識やスキルを包括的にカバーするように配慮しましょう。具体的なトピックや教材を選定し、研修の内容を体系的に組み立てます。
スケジュールの策定も重要な要素です。研修期間や回数、各トピックの配分などを考慮して、スケジュールを作成します。受講者が業務負荷を感じず、適切なペースで学習を進めることができるように、時間配分やトピックの順序に配慮しましょう。
また、適切な教材や学習リソースの選択も大切です。受講者のスキルレベルをあらかじめ把握して、難易度がちょうどよく、実践に役立つ教材やリソースを選定しましょう。グループワークなど、インタラクティブな課題を設定することで、受講者の興味やモチベーションを高められます。
研修の効果測定と評価
研修は継続的に実施する必要があるため、毎回効果を測定し、次回以降の改善へとつなげる必要があります。ここでは、効果測定の方法や評価の重要性について、詳しく解説します。
研修効果測定の方法
研修効果の測定には、さまざまな方法があります。まず、受講者のフィードバックを収集するためにアンケート調査が効果的です。受講者自身の感想や学びの具体的な成果を尋ねることで、研修の満足度や効果を把握できます。
また、受講者の評価だけでなく、上司や同僚からの評価を含めた360度フィードバックを取ることも重要です。これにより、客観的な視点から研修の成果を評価できます。
さらに、定量的な調査を行うことも重要です。たとえば、事前にパフォーマンス指標やKPI(Key Performance Indicators)を設定し、研修前後で業務生産性を比較する、またはスキルテストを実施して受講者のスキルレベルの変化を測定するといった方法があります。
研修評価の重要性
研修評価は、研修の効果を客観的に評価し、改善点を把握するために非常に重要です。研修プログラムの効果を正確に把握することで、組織が投資した時間とリソースの価値を確認できます。
研修の評価にはさまざまな方法があります。受講者からのフィードバックを収集するアンケート調査や、上司や同僚からの評価を含めた360度フィードバックを活用することで、研修の効果を客観的に評価可能です。
さらに、研修プログラムが組織の戦略的目標やニーズに合致しているかを評価することも重要です。研修が組織の戦略とリンクし、求められるスキルや知識を提供しているかどうかを改めて確認しましょう。
研修評価は単なる終了後の手続きではなく、継続的な活動です。研修プログラムの品質や効果を継続的に向上させるために、評価結果を分析し、改善点を特定して次の研修に反映させましょう。
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研修の効果的な実施方法
企業にとって、研修はリソースがかかるプロセスです。「せっかく費用や時間をかけたのに、あまり効果が得られなかった」というケースを避けるために、研修の効果的な実施方法について説明します。
研修受講者への動機づけ
研修の効果を上げるには、受講者に適切な動機づけをするのが有効です。動機づけをモデル化した概念をARCSモデルと呼びます。ARCSモデルは以下4点の略語です。
- Attention(注意):受講者の興味を惹く
- Relevance(関連性):受講者の関心・経験と関連させる
- Confidence(自信):ゴールを提示し、受講者に「自分でもできる」と感じさせる
- Satisfaction(満足感):受講者が研修を通じて満足度を得られるようにする
この4点をコンテンツの内容に盛り込むと、受講者の学習意欲が高まります。たとえば、Relevanceを取り入れるには、事前に受講者にアンケートを取って研修へのニーズを調査し、カリキュラムに反映させるとよいでしょう。
研修講師やトレーナーの選定と育成
研修プログラムの質を高めるためには、専門知識と豊富な経験を持つ講師やトレーナーを選定することが重要です。また、受講者との相性も考慮しましょう。たとえば、新入社員向けの研修であれば、年齢が近い社員が理解しやすく、共感を得やすいケースが多いです。
従業員を講師に選定する場合は、コミュニケーションスキルや教育手法のトレーニングを提供しましょう。講義内容が受講者に伝わりやすくなる上、講師役の従業員自身も他者に説明することで自分の業務理解を深められます。受講者だけではなく、講師役の従業員にも定期的な評価やフィードバックを実施し、彼らの成果や改善点を把握しましょう。
また、実践的なフィードバックとコーチングのサポートも重要です。受講者が研修で学んだことを実践に活かすために、上司や先輩社員からの具体的なフィードバックやアドバイスを得られる体制を作りましょう。
研修を効果的に実施する方法
研修の効果を最大化するには、インタラクティブな学習環境を提供しましょう。受講者が積極的に参加し、自ら学びを深めるためには、対話や参加型のアクティビティが必要です。たとえば、グループディスカッションやロールプレイなどを取り入れることで、受講者同士の意見交換や学びの共有が促進されます。
また、実践的な活動を導入しましょう。ケーススタディやシミュレーションなどの実際の業務に近い活動を通じて、受講者が理論を実践に結び付ける機会を提供します。これにより、習得した知識やスキルを実際の業務に活かす能力を育むことができます。
最後に、受講者の理解度を確認し、フォローアップを行いましょう。定期的な確認テストや演習などを通じて、受講者の学習状況や理解度を把握します。必要に応じて個別のサポートや追加の説明を行い、受講者がより効果的に学びを進められるようサポートすると効果的です。
研修の課題と解決方法
研修実施には、「効果測定が難しい」「費用がかかる」といった課題がつきものです。ここでは、代表的な課題と解決方法について説明します。
研修効果測定の課題と解決策
ここでは、研修の効果測定における課題と解決策を紹介します。
研修効果測定の課題
研修効果測定にはいくつかの課題が存在します。まず、指標の設定とデータの収集が難しいことがあります。研修の効果を客観的に評価するためには、明確な指標やパフォーマンス評価の基準が必要ですが、業務によっては決めづらいというケースもあるでしょう。
また、データの収集には時間とリソースが必要であり、組織や研修プログラムの制約によって制約されることもあります。
加えて、受講者のフィードバックを収集することも難しい課題の一つです。受講者の意見や感想を正確に把握するためには、適切な方法やタイミングを設ける必要があります。
研修効果測定の解決策
研修効果測定の課題を解決するためにはいくつかの方法があります。まず、目標の明確化と測定可能な指標の選定が重要です。業務の成果物に着目し、成果物のクオリティを上げる、ミス率を減らすといった指標を設定すると、効果測定がより具体的かつ客観的になります。
次に、受講者が答えやすいような設問を絞ったアンケートを実施することも効果的です。必要な情報を的確に収集するために、質問をシンプルかつ具体的にすることがポイントです。
さらに、アンケートや確認テストなどのデータをデジタル化し、集計しやすくするのもおすすめです。Google Formなどのデジタルツールを活用することで、データの集計や分析が迅速かつ効率的に行えます。
研修予算の制約とコスト削減
「研修にあまり予算を割けない」という課題は多くの企業が直面しますが、いくつかの解決策があります。まず、費用対効果の高い研修の選択が重要です。たとえば、オンライン研修やデジタル学習は比較的安価に実施できる上に、場所や時間の制約が少ないという特徴があります。
さらに、内部講師やトレーナーの育成を進めることも一つの手段です。組織内の専門知識や経験を活用することで、外部講師を招へいするコストが減ります。一方で、内部講師に選定された従業員は通常業務に時間を割けなくなるという点も考慮する必要があります。
外部研修会社は金銭的コストがかかりますが、高いトレーニングスキルと専門知識を併せ持つ講師が担当してくれるため、研修効果が高くなるというメリットもあります。
自社の状況に合わせて、最も費用対効果の高い方法を選びましょう。
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研修の成功・失敗事例
研修を成功させるには、他企業の成功・失敗事例を参考にするのも効果的です。ここでは、成功事例や失敗事例、業界別の研修事例について紹介します。
成功した研修プログラムの事例紹介
ここでは、高い効果を上げた研修プログラムの事例を2社紹介します。
ソフトバンクグループ
ソフトバンクグループでは、「ソフトバンクユニバーシティ認定講師制度」を設け、一定のスキルを持つ従業員を講師に定めています。従業員自身が講師を務めることで、受講者は実務に即したノウハウを学習可能です。
さらに同社は、従業員同士が自律的に研修を企画・実施する仕組みを作ることで、研修へのモチベーション向上や、多様性のある人材育成を目指しています。
(出典:ソフトバンク「キャリア開発・能力発揮」)
スターバックスジャパン
スターバックスジャパンでは、全従業員向けのグループワーク「価値観ワーク」を実施しています。まず、受講者に5分間かけて3つ重要な価値観を選択させた後、グループに分かれて「なぜそれを選んだか」を議論させるプログラムです。
ディスカッションを通じて従業員同士のコミュニケーションを促進させるとともに、従業員個人に自分の働くモチベーションが何か気づかせるという狙いがあります。
(出典:日本の人事部「スターバックスの人材マネジメント ~企業文化をベースとした組織開発への挑戦~」)
失敗する研修の特徴
一方、研修の失敗から学ぶことも貴重な経験です。過去の事例から得られる教訓を活かし、より効果的な研修を実施することが重要です。
たとえば、研修の目標設定が不明確だった場合、受講者のモチベーションが上がらず、効果が薄い結果になることがあります。このような問題を解決するためには、目標の明確化と受講者のニーズ分析が欠かせません。研修プログラムをカスタマイズし、受講者にとって有益な内容を提供することが重要です。
また、研修のフォローアップが不足していた場合、学んだスキルや知識の定着や実践への移行が困難になることがあります。フォローアップの不足を解消するためには、研修プログラム実施後に復習の機会を設けましょう。
さらに、上司や同僚のサポートを活用することも効果的です。定期的な振り返りや実践のサポートを通じて、研修の成果を最大限に引き出すことができます。
業界別の研修事例
ここでは、製造業界とIT業界の研修事例を紹介します。
花王株式会社
花王株式会社では、工場勤務の従業員向けに安全意識向上と事故予防のための研修プログラムを実施しています。
この研修の特徴は、ビデオを活用した安全講義や、事故の様子を再現した危険体感装置を利用して、従業員に事故の恐ろしさを体験させる点です。年4回継続的に実施することで、事故件数の減少や労働環境の改善などの成果が出ています。
(出典:花王株式会社「花王株式会社における職長の役割と安全衛生教育」)
富士通Japan株式会社
富士通Japan株式会社では、全社員向けにオンデマンド型教育プラットフォーム「FUJITSU Learning Experience」を創設しました。AI(人工知能)、クラウド、IoTなどの最新技術をテーマにしたコンテンツを用意し、従業員が自身のタイミングで受講できる仕組みです。
技術発展スピードが速いIT業界では、従業員が継続的に技術知識を学ぶことでイノベーション力の強化につながります。
研修の最新トレンド4選
ビジネス環境が急激に変化する現代、従業員に必要なスキルや研修方法も変わってきています。ここでは、研修の最新トレンドを4つ紹介します。
コーチング研修
コーチング研修とは、相手の潜在能力やポテンシャルを引き出すためのスキルを学ぶ研修プログラムです。コーチングは傾聴や質問を通じて相手を支援し、自己成長や目標達成を促す技術を指します。
特にマネジメント職や研修担当者にとって、コーチングスキルは非常に重要です。コーチングを通じて部下や受講者とのコミュニケーションが深まり、彼らのモチベーション向上や成果の向上につながることが期待できます。
コーチング研修では、具体的なスキルやテクニックを学習できます。相手の本音を引き出すための傾聴技術や、問題解決に役立つ質問方法などが代表的な内容です。実践的なロールプレイやケーススタディを通じて、コーチングスキルの習得と実践力の向上が期待できるでしょう。
ロジカルシンキング研修
ロジカルシンキング研修とは、合理的かつ論理的な思考方法を学ぶ研修プログラムです。ビジネスの現場で必要とされるスキルであり、業務上の課題を分析・解決するために有効です。ロジカルシンキングを身に付けることで、複雑な問題を論理的に整理し、客観的な判断を行うことができます。
また、ロジカルシンキングの習得はコミュニケーションスキルの向上にもつながります。複雑な概念やアイデアを他者にわかりやすく伝えるための方法を学ぶことで、効果的なコミュニケーションが可能となるためです。
ロジカルシンキング研修では、ロジカルシンキングの思考方法について体系的に学ぶことが一般的です。具体的な手法やフレームワークを学び、グループワークやケーススタディを通じて実践的な演習を行います。これにより、受講者は実際のビジネスシーンでロジカルシンキングを活用する力を養うことが可能です。
オンライン学習
オンライン学習は、Zoomなどオンライン会議ツールなどを利用して実施される研修プログラムのことです。
オンライン学習の最大の魅力は、地理的な制約がないことです。場所や時間に縛られずに学習ができるため、仕事や生活のスケジュールに合わせて柔軟に学ぶことができます。また、大勢の受講者が同時に受講できるため、スケーラビリティにも優れています。
また、オンライン学習では動画やテキスト教材を用いて、自分で学習を進められるeラーニング形式もあります。こちらは時間的な制約がなく、受講者が好きなタイミングで学習を進められます。eラーニングサービスによっては、研修担当者がそれぞれの受講者の進捗状況を把握することも可能という点がメリットです。
マイクロラーニング
マイクロラーニングとは、1回5分程度の短い学習モジュールやコンテンツに焦点を当てた学習アプローチです。この方法では、コンパクトで消化しやすい学習コンテンツを提供し、学習者が自分のペースで学ぶことができます。
マイクロラーニングは、モバイルデバイスやスマートフォンでの利用に適した形式です。いつでもどこでも学習ができるため、通勤時間や空き時間を有効活用できます。また、学習コンテンツはビデオ、音声、テキストなどの多様な形式で提供され、視聴や読み込みにかかる時間も短く抑えられています。
マイクロラーニングのもう一つの特徴は、学習コンテンツを何度も見返すことができることです。繰り返し学習することで、情報の定着や理解を深め、実務に応用できるスキルを習得できます。
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研修おすすめ3選
法人向け研修を実施する外部研修会社は数多く存在します。「いったいどれが自社に合っているんだろう?」と迷う場合も多いでしょう。ここでは、おすすめの研修サービスを3選紹介します。
侍エンジニアBiz
「侍エンジニアBiz」は、それぞれの企業が抱えるIT課題に合わせてオーダーメイドでカリキュラムを作成、実施するサービスです。自社の経営戦略や目標に合わせて研修の内容や期間を自由にカスタマイズできる点が魅力です。
また、講師は現役エンジニアが担当するため、実務に直結するスキルを学べます。内容もPC初心者向けからエンジニア向けまでと、幅広いレベルの受講者に対応しており、従業員のITスキル底上げを目指す企業におすすめのサービスです。
株式会社リクルートマネジメントソリューションズ
株式会社リクルートマネジメントソリューションズは、高い実績を持つ人材紹介会社、株式会社リクルートのグループ会社であり、さまざまな業種、職種に対応した研修実施の実績があるのが特徴です。また、新入社員向け、管理職向けなど、対象者の年代も多種多様です。
担当講師は厳しい選考や1年間の養成プログラムを受けたプロフェッショナルのため、「質の高い研修を実施してほしい」という場合に向いています。
(出典:株式会社リクルートマネジメントソリューションズ「トレーニング」)
株式会社インソース
株式会社インソースは年間66万人以上の受講者を誇る研修会社です。新入社員研修から中堅社員向け研修、IT技術の研修などさまざまなプログラムを展開しています。
コンテンツ開発専門の部署が存在し、最新の人材教育情報やデジタル技術情報を反映したカリキュラムを開発しているため、常にアップデートされた内容の研修を受講できます。
また、オンラインや講師派遣型の講座など、幅広い開催方式に対応しているため、自社に合った形式での受講が可能です。専用のLMS(教育管理システム)も用意されているため、人事担当者が研修受講状況を把握しやすいのもメリットでしょう。
よくある質問(FAQ)
ここでは、研修に関するよくある質問と回答をまとめました。
- 研修の予算の組み方を教えて下さい。
-
研修の予算の組み方は、研修の種類や規模、受講者数などによって異なります。一般的な予算の組み方は、研修プログラムの内容や目標に基づいて必要な経費を算出し、予算枠を設定する方法が挙げられます。
また、内部講師の活用といったコスト削減策も同時に検討しましょう。
- OJT研修とOff-JT研修の違いを教えて下さい。
-
OJT(On-the-Job Training)研修は、受講者に指導担当者がつき、実務を実施しながらフィードバックを受ける方法を指します。現場での実践的なスキルや知識を直接習得できるという点がメリットです。また、受講者と指導担当者の従業員とのコミュニケーションが促進され、円滑に業務を実施できるようになる効果もあります。
一方、Off-JT(Off-the-Job Training)研修は、実務の場を離れ、教室やセミナールームなどで実施する形式です。OJT研修に比べ、短期間で体系的な知識を習得できる点がメリットです。
OJT研修はアウトプットが、Off-JT研修はインプットが主体の方式のため、両者を組み合わせるとより研修全体の効果が高まります。
- BSM研修とはなんですか?
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BSM(Business Simulation)研修は、ビジネスの企画から実行までをロールプレイすることで、受講者が経営戦略の立案や意思決定を経験できるプログラムです。一般的には、受講者を数名のグループに分けて仮の企業を起業・経営させ、互いに業績を競うグループワークとして実施するケースが多いです。
経営者目線でのマネジメントや目標決定、チームでの意思決定、役割分担の重要性などを模擬的に体験し、受講者のリーダーシップやマネジメントスキルを向上できます。また、自社と同じ業界を想定することで、業界知識を深めることも可能です。
- A2E研修とはなんですか?
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A2E(Ability to Execute)研修は、組織や個人の能力向上を目指す研修プログラムです。A2E研修では、戦略の実行や業績向上に必要な能力を開発することが重視されます。たとえば、ロジカルシンキングスキル、プロジェクトマネジメントスキルなどが挙げられます。
A2E研修は若手社員が対象となることが多く、実践的なグループワークやケーススタディがメインのカリキュラムとなります。また、A2E研修の効果を上げるには、自社の経営戦略や課題解決に必要なスキルをあらかじめ整理しておくことが非常に重要です。
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研修を成功させるには、まず自社に必要なスキルの整理から
研修を実施し、企業を支える人材育成を成功させるには、研修の目的を明確化する必要があります。自社の経営戦略を分析し、従業員に必要なスキルを把握した上で、現状とのギャップを明らかにしましょう。
研修の目的をはっきりさせておくことで、従業員のモチベーション向上や、適切なカリキュラム設定が可能となります。