こんにちは! Web制作ライターのナナミです。
昨今、オリンピックのロゴ盗作問題など、デザインの著作権について色々話題になりますよね。
そんな中、Webデザインの著作権って一体どうなっているのでしょう?
今回はWebデザインをやるなら覚えておきたい著作権のあれこれをご紹介していきます。
あなたが被害者に、そして加害者にならないために、しっかり把握しておきましょう!
Webデザインの著作権、3つのポイント
そもそも著作権とは、デザインや文章などを作成した本人に使用や公表の権利があることを明言しているものです。
細かく分けると、使用する権利である「著作権(財産権)」と、製作者である事実としての「著作者人格権」の二つに分かれます。さらに細かく分けることができるのですが、今回は割愛しますね。
使用する権利は読んで字のごとく、その制作物を使って何かをする権利です。著作者人格権は、「これは私が作ったデザインです」と、作成の事実を保証するものですね。よくある「自分が作ったわけじゃないのに自作発言をする」というのはこれの侵害にあたります。
著作権と著作者人格権はどこかに申請を出す必要なく、著作した時点で自動的に発生します。子供の落書きにだって発生します。イラストの盗用とか本当にやめましょうね!
さて、基本を押さえたところで、これらの著作権はWebデザインにどのように発生するのでしょうか?
Webデザインは「著作物」
まずWebデザインは「著作物」に当たります。そのため著作権は自動的に発生します。
著作物は、著作権法によれば下記の定義となります。
著作物
思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。
引用:著作権法 第一節 第二条 一
しかしデザインの仕事をしているとその辺りが曖昧になりがちです。相手がその知識を持っていないと、著作物であると認めてくれないことも……
正直これは言ったもの勝ちです。自分のクリエイティブな成果であることを明確にするために「これは著作物です」と先手を打って言ってしまうのもアリですね。もちろん、自分が作り出したものに限りますが。
レイアウトと色は「著作物」ではない
ここがWebデザインのややこしいところ。実はレイアウトと色は「著作物」ではありません。
レイアウトと色は、創作を表現するための手段という位置付けです。音楽を作るときにギターの音色そのものは「著作物」とは言いづらいですよね。それと同じ扱いなのです。
つまり乱暴に言ってしまうと、レイアウトや色を全く同じにしても、著作権の侵害とはなりません。とはいえ丸ごと同じにするとそれは明らかなパクリ行為です。著作権侵害と言われても仕方ありません。
下記の記事で「いろんなサイトを参考にしましょう」とお話しているのは、そういう背景もあるのです。
著作権が認められないパターンもある
「デザインは著作物である、でもレイアウトや色は著作物ではない」この2つの定義が微妙に折り合わず、著作権が認められないパターンもあります。
実際の判例として、平成24年1月12日の大阪地方裁判所の判例が挙げられます。この裁判はWeb制作会社がクライアントに対して著作権侵害を訴えたものです。
原告は,本件デザイン画について,これらは著作物性を有し,これを創作したのは原告の従業員であるから,原告に本件デザイン画にかかる著作権が帰属すると主張する。
また,原告は,本件デザイン画の著作物性の根拠について,写真,背景の色や文字を,商品のイメージ,アイデア,コンセプト等に合わせて,独自の発想に基づいてデザイン,レイアウト,配色,仕上げ作業等を行って制作したことを理由として述べる。
しかし,商品イメージやキャッチフレーズ,モデルの写真などの素材は,被告らから提供されたものであって,原告が制作過程において行った作業(製造過程における作業を除く。)は,デザイン,レイアウト(素材のレイアウト),配色,仕上げの各作業に過ぎず,本件デザイン画に著作物性を認めることはできない。
引用:著作権侵害差止等請求事件
つまり独自性を持ってレイアウトや配色を行ない、デザインとして仕上げたことを主張したものの、あくまでも提供された資材をまとめて仕上げ作業を行っただけであり、著作物としては認められなかったということです。
Webデザインは絵や文章などと違い、暗黙のルールやデザインの再現性による制限などにより、レイアウトの延長線のものでしかないと言われがちなのです。
著作権を明確にするためにやっておくべきこと
大阪の判例のようなことにならないためには、事前の対策が重要になります。自己防衛するためにやっておきたいことを確認していきましょう。
企業相手の場合
とにかく契約書はしっかり読みましょう。面倒臭がって適当に読んでしまうと「著作権は無償でクライアントに移譲する」なんて書かれてたりすることもしばしば……。
明記されていなくても要注意、相手は著作権に関しては素人の可能性もあります。なので「うちのために作ってくれたんだから、うちに全部くれるんでしょ?」と勝手に思っている可能性もあるのです。
- 著作権が発生すること
- 著作権は原則著作者にあること
- 著作権を移譲する場合は相応の対価が必要であること
- 著作権を移譲しても、著作人格権は移譲しないこと
などをしっかり説明し、理解してもらうことが大事です。
依頼とはいえ、作り出したデザインはあなたの大事な作品です。こちらの権利は明確にしていきましょう。
個人の場合
という場合、実はちょっと難しくなります。
この場合、誰かと契約を交わしている訳ではないので、明確に「自分が著作者だ」と証明できるものが少ないのです。
例えばサイトの場合、開設日などから自分が先に作ったことを証明できますが、先ほどの大阪の判例のように、レイアウトの延長線と見られてしまうとどうしようもありません……。
しかし明らかにパクリで、そのせいで自分のサイトが害されているなら、当事者に連絡を取るなどの措置をするべきです。個人相手なので大変だと思いますが、自分の権利を守るために頑張りましょう。
あなたが加害者にならないために
著作権は、被害者にならないための自己防衛だけ考えればいい訳ではありません。もしかしたらあなたが無意識のうちに加害者になってしまうこともあるのです。
加害者にならないために知っておきたいことや実例をまとめたので、心に留めておいてください。
どこまでが「パクリ」?
そもそもどこからどこまでがパクリと言われるのか、これには明確な定義はありません。特にWebデザインはレイアウトが似ているだけでパクリっぽく見えてしまうので、さらに定義が曖昧になります。
最終的な結論は「誰が見てもこれは似すぎていると思うか」という、非常に感情的な視点になってしまうのです。
例として、はてなブログのテーマ「ONIHITODE」の問題が挙げられます。
このテーマはWordPressの有料テーマ「SANGO」に酷似しており、多くの人から指摘を受けました。結果、テーマの配布は取り下げ、Web上に汚名を残す羽目になってしまったのです。
参考:賞賛してる人大丈夫?はてなブログテーマ「ONIHITODE」がヤバいので警告
この例では、他の人から見た「SANGOに似ている!無料で使えて嬉しい」という言葉が、パクリである証明と相手の利益を損害していることを明らかにしています。
このようにレイアウトだけでなくイラストのタッチまで似てしまうと、明らかに著作権侵害と言えるでしょう。
画像や文章の著作権
さらに気をつけなければいけないのは、画像や文章にも著作権が発生しているということです。
Webサイトを作る上で、素敵な画像をメインビジュアルにしたいですよね。そしてWeb上には素敵な写真がたくさんアップロードされています。
それらを勝手に使うのは、著作権侵害です。写真にも当然著作権はあるし、人が写っている場合には肖像権も発生しているのです。
ちゃんと購入した画像や、フリー素材であることを明記してあるならば問題ありません。しっかりそこを確認して使うようにしましょう。
文章の場合は、引用であれば問題ありません。今回ご紹介した判例なども、
- 引用元を明記する
- どこからどこまでが引用なのかを明確にする
という引用のルールに基づいて使わせていただいています。
NGなのは「さも自分が書いたかのように掲載すること」です。私はこの記事を一から書いているので、この記事には著作権が発生しています。それが丸々コピーされて他のブログでそのまま投稿されていたら、それは著作権侵害となるのです。
デザイナーには敬意を
Webデザインの著作権は感情的な判断基準に依存してしまっています。だからこそ、Webデザインに関わる皆様には、著作者への敬意を持って取り組んでいただきたいです。
デザイナーという立場にあるからには、何か独創的なものを生み出したいというクリエイティブな気持ちが強くあると思います。それは周りのデザイナーも同じなのです。
お互いに敬意を払い、パクリではなくリスペクトで取り組めば、デザイン業界はさらに盛り上がっていくと思います。
ぜひそんなデザイナーになるため、今回の記事の内容を覚えておいていただけると幸いです。