ICT活用推進校の取り組み例4つ|実践例と海外のICT教育について

ICT教育という言葉を聞くようになってからだいぶ経ちますが、現在はどうなっているのでしょうか。

ICTという言葉の定義を確認したうえで、日本国内ではどのようなICT教育が行われているのか事例をみていきます。また、海外でのICT教育についてもご紹介します。

目次

ICT教育とは?

ICT教育という言葉を耳にするようになって数年が経過しました。言葉の定義を確認しておきましょう。

「ICT教育」とは、インターネットなどを活用した教育手法のことです。従来の紙と鉛筆から、パソコンやタブレットの使用に軸足を移した勉強の方法をいいます。

「 ICT」は「Information and Communication Technology」 の頭文字です。日本語に訳すと「情報通信技術」になります。

ICT教育の研究レベルでの事例

実のところ、「ICT教育」は、すでに全国で行われています。総務省はフューチャースクール推進事業を、文部科学省は学びのイノベーション事業を掲げており、それをもとに全国で「ICT教育の実証研究」が実施されています。それを受けて、各自治体が教育の情報化を進めています。

実証研究で行われた「資料作成・グループディスカッション」と「通信を使った学習」の事例をご紹介します。

資料作成・グループディスカッション

従来、授業でグループディスカッションが行われる際は、事前に紙の資料を準備して、それを使って話し合いが行われました。ICT教育では、インターネットを利用して準備した資料をパソコンやタブレットを使って共有します。

ディスカッションの最中に新しい資料が必要になれば、その場で追加することも可能です。新たな情報に触れていくことの繰り返しで、考えて再編集する能力が深まると期待されています。

通信を使った学習

ICTを活用すれば、自分の教室に居ながらでも、いろいろな場所の人と交流できます。

他校との交流授業等が例として挙げられます。インターネットを使ったテレビ会議システムで、遠方の学校で学ぶ生徒たちと会話もできます。自分たちとは違った環境の人々と気軽に交流することで、「外の世界」と知る機会が得られます。

また、自宅のパソコンからクラウドにアクセスすれば授業の予習・復習が行えます。欠席した生徒が、自宅で授業を受けることもできるようになります。

ICT活用推進校の取り組み例

東京都では、2015年からICT活用推進校として指定された12の学校でICT教育を実施しています。

教育の現場では、どのようにICTが活用されているのでしょうか。東京都教育委員会で報告された4つの事例をみていきます。

取り組み例1:テストを撮影して添削を共有

1つめは、ICTがテストの場面で活用されている例です。テストが終了したら、生徒は自分の解答を手元にあるタブレットで撮影し、教師に送信します。

教師は間違いが多かった問題を選び、解説しながら添削します。生徒はそれを手元にあるタブレットで確認しながら振り返ります。フィードバックをクラスで共有することで、問題意識も共有され、生徒の意識づけに役に立ちます。

取り組み例2:インターネットで必要な情報を検索

2つめは、ICTを利用して情報を検索する例です。まず、教師は生徒に課題を与えます。例えば「どのような家に住みたいか」をテーマに、二人組を作ります。

生徒はパートナーに希望する住宅を伝え、聞いた生徒は希望に合う住宅をインターネットで検索します。検索した物件をクラスで共有し、その後、発表します。このような学習は、必要な情報をインターネットで検索する訓練になります。

また、実際の物件写真など、生の教材が使われることになるため、活き活きとした授業が期待できます。

取り組み例3:動画を利用した理科の実験

3つめは、動画を利用した理科の実験の例です。

顕微鏡で細胞分裂を観察します。細胞分裂の過程をタブレットなどで撮影し、後から再生することで、何度も繰り返しその経過を確認できます。また、分裂の過程をコマ割りにすると、特定の細胞に注目できます。

編集ツールでしるしをつければ、簡単に細胞の数が確認できます。教科書の写真を見るよりも鮮明な画像は、子どもたちの理解を助けるでしょう。

取り組み例4:お手本を動画で確認する体育の授業

4つめは、体育の授業でICTを活用する例です。まず、お手本として、正しい動作をしている動画をタブレットなどで確認します。

例えば、バレーボールのスパイクの打ち方です。次に、生徒が実際にスパイクを打つ場面を撮影します。その動画と、お手本の動画を、動画比較機能を使って並べます。

並べてみることで比較が簡単になり、生徒はどこを修正すればいいのか目で確認することができます。

ICT教育実践例

東京で実施されているICT教育の例を見てきましたが、地方の公立・私立の学校でもICT教育が実践されています。

意欲的に取り組んでいる二つの学校の例を見てみましょう。

ICT教育実践例1:北海道教育大学附属函館中学校

1つめの例は、北海道教育大学附属函館中学校です。この学校では全生徒にタブレットが配付されています。校内には各所に無線LANのアクセスポイントが設置されており、どこからでもインターネットに接続できるようになっています。

電子教科書を使用し、課題や教材もすべて生徒が各自で持っているタブレットに送られます。サーバー上にあげられている連絡事項や今後の予定を確認することもできるため、学習面だけでなく、学校生活のあらゆる面で有用に使われます。

全生徒にタブレットを配布

北海道教育大学附属函館中学校での授業ではタブレットを大いに活用しています。特に使われているのはカメラ・レコーダーの機能です。

資料を作成する際には、各自のタブレットで撮影した画像が使われます。発表をタブレットで撮影しておけば、後から簡単に見直すことができます。

録画をチェックすることで次の発表をよりよいものにするのに役に立ちます。情報通信技術を身近に利用することで、実践的な力が身につくことが期待されています。

ICT教育実践例2:秋田県立秋田南高校学校

秋田県立秋田南高等学校は県内屈指の進学校です。教育に力を入れている公立の学校ですが、特に特徴的なのが、2017年度から導入されている学習支援プラットフォームClassiです。

「Classi」を導入したことにより、生徒は自分の学習の振り返りをしやすくなりました。また、教師の業務を効率化するなど、学校内での成果が確実に上がっているようです。

全学年で学習支援プラットフォームClassiを導入

ClassiはClassi株式会社が提供する教育プラットフォームサービスです。それぞれの学校の実情に合った機能を選び、組み合わせて使うことができます。

生徒は学びを振り返るポートフォリオを通じて、自分の学力を客観的・多面的に評価することができます。これは教師とも共有され、進学の際の資料として有効に使われます。

海外のICT教育について

海外でのICT教育は現在どの程度進んでいるのでしょうか。日本の教育現場では紙とペンで資料を作成したり、原稿用紙に作文を書かせたりすることは普通ですが、ICT先進国ではすでにICT機器を利用した授業をおこなっています。

オーストラリアとデンマークのICT教育の例をみていきましょう。

オーストラリア

オーストラリアはICT教育の先進国です。オーストラリアでは、国が教材をインターネット上にアップしています。教師はそこから使いたい教材をダウンロードして授業を行います。

幼稚園のころからパソコンやタブレットなどに触れる機会を設けているため、子どもは幼いころからデジタル機器に慣れることができます。

デンマーク

デンマークもICT教育に力を入れている国のひとつです。デンマークの小学校では、低学年のうちからからパソコンで作った資料を用いて発表を行うなど、今後に生かせる経験をたくさん積んでいきます。

デジタルネイティブという言葉もありますが、早いうちからデジタルに触れることで自然と情報技術を使いこなすことができるようになります。

ICT教育の事例を参考にしよう!

日本国内と海外でのICT教育の事例をご紹介してきました。

日本の公立学校ではまだ十分とはいい難いICT教育ですが、今後加速度的に進んでいくことが予想されます。

ICT教育は様々な可能性を秘めている教育方法です。子どもの未来のための教育がどのようになっていくか、今後の進歩を見守りましょう。

この記事を書いた人

【プロフィール】
DX認定取得事業者に選定されている株式会社SAMURAIのマーケティング・コミュニケーション部が運営。「質の高いIT教育を、すべての人に」をミッションに、IT・プログラミングを学び始めた初学者の方に向け記事を執筆。
累計指導者数4万5,000名以上のプログラミングスクール「侍エンジニア」、累計登録者数1万8,000人以上のオンライン学習サービス「侍テラコヤ」で扱う教材開発のノウハウ、2013年の創業から運営で得た知見に基づき、記事の執筆だけでなく編集・監修も担当しています。
【専門分野】
IT/Web開発/AI・ロボット開発/インフラ開発/ゲーム開発/AI/Webデザイン

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