ICT教育とは、インターネットと接続されたPCやタブレット端末などの情報通信技術(ICT)を利用した学校教育の手法をいいます。
ICT教育は、教育現場にとってメリットが大きい反面、ICT機器などの導入・セュキュリティ対策・故障対応などの費用負担がデメリットです。
ICT教育とは
「ICT教育」とは、学校教育の現場でインターネットに繫がったコンピュータやタブレット端末などを使って授業することをいいます。
文科省は、2018年度からICT教育の環境整備5カ年計画をスタートさせ、2020年度の新学習指導要領では、情報教育・教科指導のICT活用・校務の情報共有化の3本柱の目標を設定し、ICT機器の操作・情報活用・プログラミング学習などを取り入れていきます。
ICTとITの違い
IT(情報技術)は、PCのハードウェア・アプリケーションソフト・インターネットなどを利用した幅広い技術の総称であり、ICT(情報通信技術)は、ITの中でもインターネットを利用した情報通信や伝送などコミュニケーションに係る技術を指しています。
なお、一般的にITとICTの用語を厳密に使い分けることはあまり意味がなく、どちらの用語を使ったとしても大きな間違いになることはないでしょう。
先進校のICT教育活用事例3選
ICT教育と聞くと、遠い将来の話のように思えるかもしれませんが、既に全国20校で実証研究が終了し、2020年度から小学校を皮切りに一斉にスタートすることになっています。
ICT教育の一般的なやり方は、インターネットに接続されたPCやタブレット端末を使いクラウド上のサーバーから必要な情報や資料などを検索したり、必要に応じて電子黒板やプロジェクターを使って先生と生徒がディスカッションをしたりします。
先進校のICT教育活用事例1:生徒1人1台のタブレット導入
先進校のICT教育活用事例1は、東京立正中学校・高等学校における「生徒1人1台のタブレット導入」を実践した先進的な事例です。家庭でも積極的にeラーニング授業の活用を図ることも目的とされています。
タブレットの機種選定にあたっては、生徒たちが将来的にも利用する可能性高いと考えられるWindowsタブレットが選択されました。
先進校のICT教育活用事例2:自分に合ったスタイルで学習
先進校のICT教育活用事例2は、神田女学園中学校・高等学校における「自分に合ったスタイルで学習」を実践している先進的な事例です。特に英語の4技能をバランス良く伸ばすため「自分に合ったスタイルで学習」という目的を掲げています。
この目的を達成するため、校内に開放的な生徒ラウンジ(自立型学習施設)を設置しています。
先進校のICT教育活用事例3:一斉授業と個別指導学力向上
先進校のICT教育活用事例3は、瀧野川女子学園中学校・高等学校における「一斉授業と個別指導学力向上」を実践している先進的な事例です。iPad Proとクラウド(協働学習支援アプリ)を利用しています。
ちなみに、一斉授業は、大画面の電子黒板、個別指導はiPadと電子タッチペンを使いますが、同時並行的に授業を進める極めて先進的な事例でしょう。
ICT教育の意義6選
ICT教育が普及すると、生徒の机から紙製の教科書やノートが姿を消し、電子黒板やタブレットなどのICT機器を使った授業に変化していくでしょう。近い将来の5G通信システムの汎用化に伴って、ICT教育の内容が大きく変貌することが予想されます。
技術の進化には、必ず弊害が伴うものですが、先進的なICT教育の導入事例には一体どのような意義があるのでしょうか。ICT教育の意義を6つ解説していきますので、参考にしてください。
ICT教育の意義1:学習の活性化
電子黒板やプロジェクターによる音声や画像を使った授業内容に変わるため、生徒の授業態度や学習意欲が向上し、学習の活性化が図れる事例が挙げられます。
特に小・中学生は、先進的なICT機器に興味を持ちやすいため、面白さや興味が湧き集中して学習に取り組めるでしょう。また、画像データを見る機会が増えるため、課題への理解が深まりやすくなります。
ICT教育の意義2:個別に最適な学習が可能
先生がタブレットを見ることで生徒の回答を個別に確認できるため、一斉授業をしながら生徒一人ひとりに合った個別指導が可能な事例が挙げられます。
ICT機器による画面共有アプリを使った授業では、生徒一人ひとりの回答の導き出し方を見られるでしょう。回答が間違っている場合は、つまずいた箇所をその場で指摘でき、すぐに個別指導ができるようになります。
ICT教育の意義3:過疎地・学習障害の支援
過疎地(遠隔地)や学習障害のある児童や生徒に対する学習支援としての活用事例が挙げられます。ICT機器を使った教育においては、離島や山村などの遠隔地や過疎地で授業を受ける生徒にとってのハンディキャップが解消される大きなメリットがあります。
また、障害のある児童や生徒にとっても、学習意欲や集中力を高めるための学習方法や機会が広がるメリットがあるでしょう。
ICT教育の意義4:安全・安心して使える
クラウド上のアプリを利用することによって、授業に不要なアプリの利用制限、有害なURLのブロック、ログアウト後のデータ消去など、セキュリティ対策の整備が大前提にある点でしょう。
ICT教育においては、ICT機器の取扱いに不慣れな先生にとって、安全・安心に使えることが大前提です。そのため、ICT教育の円滑な運用においては、トラブル対策の充実、バックアップ体制の構築や整備が不可欠です。
ICT教育の意義5:利用量の増減にも柔軟に対応
将来的な生徒数の減少などを勘案し、利用量の増減にも柔軟に対応できるシステム構築を進めることです。ICT教育を活用する場合、生徒の学びを活性化・最適化・支援できる機能が不可欠と言えるでしょう。
学校の整理統合などによって利用量が変動した場合、スケーラブルなクラウド型システムでは、システム拡張や縮小のためのコストが不要でしょう。
ICT教育の意義6:時間・場所問わず活用
インターネットの接続環境が整っていれば、家庭学習や旅行中の宿題など「いつでも」「どこからでも」利用できる高い利便性が挙げられます。ICT教育においては、特別なアプリを用意する必要がありません。
モバイル型の端末からクラウド上のWEBサイトにアクセスするだけで、宿題をやったり知りたい情報を調べたりすることが可能となります。
教育以外のICTの活用事例3選
ICTの技術は、教育の現場以外にも、様々な場面で活用できるでしょう。端末とネットワーク環境が整っていれば、離れていても通信できるので、国際交流できたり、地域でネットワークを形成して見守りシステムとして活用したりできます。
また、災害などの緊急時に備えて、ネットワーク環境を整えておくなど防災にも活用されています。
ICTの活用事例1:国際交流
2010(平成22)年度から始めた大阪府河内長野市立天見小学校(小規模特認校)における国際交流授業や遠隔授業への取り組みです。
天見小学校では、生徒たちが狭い日本だけでなく、大きな視野を持って国際感覚を養うことを目的として、国際交流授業・国内交流授業・遠隔授業などに取り組んでいる事例です。
ICTの活用事例2:高齢者見守りシステム
岩手県滝沢市におけるICTを活用した「おげんき発信」による高齢者見守りシステムの事例です。
この見守りシステムは、滝沢市の前川地区における生活支援者のネットワーク作りの一環として始めた活動であり、大学・社会福祉協議会・地域住民・民間事業者を交えて継続的な対話の場として機能している事例です。
ICTの活用事例3:防災
宮崎県小林市の霧島連山の麓に位置する小林・須木・野尻の3つのエリアにおいて、防災用の「フリーWi-Fi」を整備した事例です。防災用Wi-Fi整備は、新燃岳の噴火に伴う、降灰被害の防災対策を契機としています。
引用元:防災Wi-Fiで安心なまちづくり
当初は危険度の高い17カ所を優先しましたが、さらに9カ所追加し、平時やエリアのイベント時にも活用しています。
ICT教育で多様な学習能力を身につけよう
ICT教育の実践においては、AI(人工知能)には代替できない総合的な判断力を持つ、多様な人材を育成することにあります。ICT教育と聞けば、ICT機器やシステムのことに目先が向きがちですが、あくまで人材育成のための一手段に過ぎません。
教育現場の関係者においては、独創的なビジョン策定と強力なリーダーシップの発揮が望まれるでしょう。