文部科学省が提示するプログラミング教育のねらいがいまいちわからない
プログラミング教育のねらいを達成できる授業内容や、実践例を知りたい
小学校で必修化されたプログラミング教育で子供が将来活用できる能力を育むには、ねらいを正しく理解する必要があります。
しかしプログラミング教育のねらいについて、明確に理解できていない方もいるのではないでしょうか。
この記事では、文部科学省が提示するプログラミング教育のねらいについてわかりやすく解説します。ぜひ、最後までお読みください。
プログラミング教育について、下記の記事で詳しく、わかりやすく解説していますので、ぜひご覧ください。
プログラミング教育とは?必修化の背景
プログラミング教育が必修化された背景には、IT人材不足があります。
「IT 人材需給に関する調査」の調査報告書によると、2030年、約16万~79万人のIT人材が不足すると懸念されています。
国の生産性低下を防ぐために、文部科学省(日本政府)は、初等中等教育・高等教育等を通じて日本人全体の ICT活用力を底上げし、IT人材不足の解消を目指しているのです。
プログラミング教育必修化の背景について、詳しくは下記の記事をご覧ください。
文部科学省が提示するプログラミング教育のねらい・目的
文部科学省が提示するプログラミング教育の主なねらいや目的は、下記の4つです。
- プログラミング的思考力を鍛える
- テクノロジーの仕組みに対する理解を深める
- ITを活用する力を育む
- IT社会に積極的にかかわる人材を育む
ひとつずつ、詳しく解説します。
プログラミング的思考力を鍛える
文部科学省が提示するプログラミング教育のねらいの1つ目は、プログラミング的思考力を鍛えることです。
プログラミング的思考力とは「何らかの動きを実現するために、どのような動きをどのような順番で組み合わせるべきかを、論理的に考える力」のことです。
プログラミング的思考力は、普段の生活や勉強、仕事で作業効率化を図ったり課題解決したりする際に役立ちます。
テクノロジーの仕組みへの理解を深める
テクノロジーの仕組みへの理解を深めることも、プログラミング教育のねらいです。
例えば、部屋のスイッチを押せば照明がつく仕組みなど、身の回りのさまざまなシーンにテクノロジーが介在しています。
プログラミング教育は、子供が私たちの生活を支えるテクノロジーに興味を抱くきっかけとなります。
ITを活用する力を育む
文部科学省が提示するプログラミング教育の3つ目のねらいは、ITを活用する力を育むことです。
情報化社会では、ITを理解するだけでなく上手に活用する力が求められます。プログラミング教育によって、将来どのような仕事についても活かせる力が身につきます。
IT社会に積極的にかかわる人材を育む
文部科学省が提示するプログラミング教育の4つ目のねらいは、IT社会に積極的にかかわる人材を育むことです。
今、巷では「いずれ人間の職業が AIに奪われる」という不安の声があります。予測できない変化を受け身で捉えるのではなく前向きに受け止め、主体的に向き合う人材の育成が求められているのです。
プログラミング教育でITに触れ、苦手意識をなくすことで、社会の変化に対応できるようになります。
プログラミング教育で育まれる能力
プログラミング教育によって育まれる能力は、下記の4つです。
- 思考力
- 課題解決能力
- 表現力
- 積極的に学ぶ力
プログラミング教育のどのようなシーンで上記の能力が身につくのかを解説します。
思考力
プログラミング教育では、思考力が鍛えられます。音楽の授業でリズムを作ったり、算数の授業では正多角形をかいたりなど。
意図したことを達成するための手段を導く過程で、思考力が鍛えられます。
課題解決能力
プログラミング教育は、課題解決能力を育む効果もあります。
プログラムでは、処理や手順を間違えると動作しなくなります。トライ&エラーを繰り返し、正しい処理・手順を導き出す過程で複雑な問題を解決する力が身につきます。
表現力
表現力も、プログラミング教育で育まれる能力のひとつです。
プログラミングでは絵を描いてキャラクターを作る、作成した造形物を動かす、といった風に考えたことを形にします。
また授業で作ったものを発表する過程で、自分の考えを相手に伝える力が身につきます。
積極的に学ぶ力
プログラミング教育をとおして、積極的に学ぶ力も身につくでしょう。特にゲームやロボットなど、子供が興味を抱きやすい教材を扱うと効果的です。
新しいゲームを作りたい、ロボットを動かしたい、という希望を叶えるため、子供はみずから学習したいと思います。
ねらいは達成されている?プログラミング教育の実践例
小学校でプログラミング教育が必修化されて、1年以上経過しました。文部科学省が提示したねらいは、達成されているのでしょうか?
小学校を中心としたプログラミング教育ポータルの実施例を参照すると、前述の内容を意識した授業が行われているのがわかります。
続いて、実施例をピックアップして紹介します。
- Scratch(スクラッチ)を使って画像認識を作ってみよう!
- 正多角形をプログラムを使ってかこう!
- データ分析で地域スポーツチームを応援しよう!
Scratch(スクラッチ)を使って画像認識を作ってみよう!
テーマ | AIとプログラミングで、身近な課題を解決しよう |
実施主体 | 町田市立町田第三小学校&グーグル合同会社 |
使用ツール | Scratch、AIブロック |
URL | https://miraino-manabi.jp/content/456 |
町田第三小学校は、グーグル合同会社と共同で、AIをテーマとしたプログラミング教育を実施しています。
授業で使うAIブロックは、画像認識ができる教材です。AIブロックに画像を複数枚読み込ませると、「学習データ」を作成し、与えた画像が対象物であるか否かを判定できるようになります。
子供はAIの仕組みや活用法のほか、AIが私たちに与える影響を学べます。
正多角形をプログラムを使ってかこう!
テーマ | 正多角形をプログラムを使ってかこう |
実施主体 | 杉並区立西田小学校 |
使用ツール | Scratch |
URL | https://miraino-manabi.jp/content/111 |
杉並区立西田小学校では、算数の時間に「正多角形をScratch(スクラッチ)で作図する」というプログラミング教育を実施しました。
普段、分度器やコンパスで作図する正多角形を、Scratchでかくにはどうすればよいのか考えるのが授業のテーマです。
授業で子供たちは、正多角形に対する理解を深めることができます。同時に、手書きでは難しい正多角形も、プログラミングを使えば正確かつ迅速にかけることを知るのです。
データ分析で地域スポーツチームを応援しよう!
テーマ | データ分析で地域スポーツチームを応援しよう |
実施主体 | 相模原市田名北小学校、ライブリッツ株式会社 |
使用ツール | Scratch |
URL | https://miraino-manabi.jp/content/467 |
相模原市田名北小学校がプログラミング教育で行ったのは、三菱重工相模原ダイナボアーズ というラグビーチームをデータ分析で応援することです。
三菱重工相模原ダイナボアーズを応援するためには何をすればよいのかを考えるところからスタートし、Scratchで応援アニメーションを作ることになりました。
子供たちは、チームを応援するために何を作るべきかを考え、プログラミングで実現する、という体験をしました。
プログラミング教育の問題点とは?
プログラミング教育の実施例を見ると、文部科学省が提示するねらいは達成されているように見えます。
とはいえ、現状プログラミング教育には、下記のような問題点があるのも事実です。
- ICT環境の整備不足
- 指導教員のスキル不足
ひとつずつ、解説します。
プログラミング教育の問題点について、下記の記事で詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
ICT環境の整備不足
プログラミング教育の1つ目の問題点は、ICT環境の整備不足です。
現在急ピッチでICT環境の整備を行っていますが、1人1台のパソコンを確保できない学校や無線LAN環境などが未整備の学校もまだまだ存在しています。
指導教員のスキル不足
プログラミング教育の2つ目の問題点は、教員のスキル不足です。
小学校のプログラミング教育は、実際にプログラミング言語を学ぶというものではありません。しかしプログラミングの基本的な考え方を教えるとき、教員にスキルがあるかないかで授業のクオリティに差がでます。
教員がプログラミング未経験の場合、研修が必要です。
まとめ
プログラミング教育は、ねらいを押さえて適切な教材や方法を選ぶ必要があります。
実践例や問題点も参考にしながら、子供の持つ能力をひきだし、将来活かすことができるような指導を行いましょう。
この記事のおさらい
プログラミング教育のねらい・目的は、主に「プログラミング的思考力を鍛える」「テクノロジーの仕組みへの理解を深める」「ITを活用する力を育む」「IT社会に積極的にかかわる人材を育む」の4つです。
プログラミング教育のねらいを意識して行われた授業の実践例が、全国から報告されています。しかし必修化され見えてきたプログラミング教育の問題点もあり、ねらいを達成するため、今後改善が期待されます。
プログラミング教育では、思考力、 課題解決能力、表現力、学習への積極性を育むことができます。