ChatGPTをビジネスに活用することはできるの?
どうビジネスに活用すればいいのか、イメージが湧かない…
「ChatGPT」は、公開からわずか2ヶ月で1億人以上のユーザーを獲得し、世界的に大きな話題となっています。文章の作成や要約・プログラミングなど、さまざまな用途で活用できることから、TwitterなどのSNSでは日々ChatGPTの活用法にまつわる情報が発信されています。
ただ多様な使い方ができる反面ChatGPTをビジネスにどう活用できるのか、具体的にイメージが湧かない人は多くいますよね。
もちろん、ChatGPTはあらゆるビジネスシーンに活用可能です。これまで手作業で取り組んでいた業務の自動化や、数時間を費やしていた業務が数十分で終えられるなど、活用の仕方次第では業務の自動化・効率化を実現できます。
そこで、この記事ではChatGPTのビジネス活用例をわかりやすく解説します。ChatGPTをビジネスに利用するコツや注意点も紹介するので、ぜひ参考にしてください。
なお、次の記事ではそもそもChatGPTとは何なのか、その特徴をサービスの仕組みやできること、料金なども踏まえ詳しく解説しているので良ければ参考にしてください。
→ ChatGPTとは何かをわかりやすく解説!仕組みやできることも簡単に紹介
ChatGPTはあらゆるビジネスに利用可能
冒頭で触れたとおり、ChatGPTはあらゆるビジネスシーンで利用可能です。
下記の野村総合研究所が調査した「日本のChatGPT利用動向(2023年6月時点)」からも、ChatGPTが幅広い業界で活用されているのがうかがえます。
現状、業界ごとでChatGPTの利用率には差があります。ChatGPTがITツールであることから、情報通信業界が利用率32.8%と最も高いです。次いで製造業が19.2%、官公庁が17.5%でした。
反対にに最も利用率が低いのは、飲食店・宿泊業界1.4%です。
情報通信業界など利用率の高い業界は、日常的にITツールやインターネット環境を使う傾向があります。日常的にITツールやシステムを活用していれば、新しい技術やツールも導入しやすいでしょう。
一方、飲食・宿泊などサービス業の場合、ITツールを活用できる場面は限定的です。ChatGPTは、接客などのやり取りでは活躍の場が多くありません。ChatGPTは便利なツールではありますが、利用しにくい業界もある点は理解しておきましょう。
実際に、ChatGPTは下記のような目的で利用されています。
情報収集や文章作成など、活用しやすい作業は業界問わず利用率が高いです。
業界別で見ると、情報通信業界は「プログラミング」の回答が多いです。加えて、利用率が低い飲食・宿泊業界は、人の代わりにコミュニケーション相手としての利用を想定した声が多くあります。
現状では、ChatGPTが登場したばかりであり、各業界で利用方法を模索しているようです。利用率が高まることで、新しい使用方法が誕生する可能性もあるでしょう。
ChatGPTのビジネス活用例18選
ここからは、ChatGPTのビジネス活用例を18個紹介します。
- 1.問い合わせ対応
- 2.メールへの応答
- 3.レポート/報告書等の作成
- 4.コンテンツの作成
- 5.業務マニュアルの作成
- 6.予約の受付/管理
- 7.SNSのアカウント運用
- 8.文書資料の翻訳
- 9.データの分析/解析
- 10.会議内容の文字起こし
- 11.会議/資料の要約/校閲
- 12.履歴書等のスクリーニング
- 13.給与の計算
- 14.デザイン制作
- 15.ソフトウェアの開発
- 16.プロジェクトの管理
- 17.アイデア出し
- 18.プレゼン資料の作成
なお、簡単に各活用例の概要が知りたい人は次の一覧表を参考にしてください。
1.問い合わせ対応
ChatGPTは、顧客からの問い合わせ対応サービスに利用されています。
ChatGPTはインターネット上にある情報をもとに、質問に対する回答を作成できるため、その機能を活用すれば営業時間外のサポートが可能です。24時間365日問い合わせに対応できれば、利用者の要望に最大限答えることができます。
また、ChatGPTを活用すれば、今まで人で対応していたカスタマーサービスを自動化して人件費を削減可能です。コールセンターなど外部サービスを利用する必要もないため、外注費も必要ありません。
実際にアメリカや日本の企業では、チャットや電話での問い合わせシステムにChatGPTを活用しようとしています。
アメリカの企業エイダでは、予約サービスや製品の注文時に質問などに対応するカスタマーサービスを自動化するシステムを開発中です。さらに、日本の株式会社IVRyで提供されている「IvRy」は、電話での問い合わせ対応を自動化しています。
従来の自動対応サービスでは、返信内容の精度に不安がありました。しかし、ChatGPTは高い精度で対応できることから、多くの企業で活用がスタートしています。
2.メールへの応答
ChatGPTは、メールへの応答サービスにも活用されています。
ChatGPTでは、テキストで質問をすれば適切な内容の文章を自動で生成可能です。この機能を利用すれば、メールの内容をもとに最適な返信ができるシステムも作成できます。
正しいビジネス文が生成されているか確認は必要ですが、長時間かかる文章作成を短時間で行えるのはメリットです。
また、メールの返信を自動作成できれば、返信作業の効率化やコスト削減が可能です。さらに、今までメール返信に使用していた時間を他業務に充てられるため、企業全体で業務効率アップにつながる可能性もあります。
たとえば、株式会社KandaQuantumでは、GPT-3.5の機能を活用してビジネスメールが自動作成できるサービス「CalqMail」を無償で公開しています。
Googleが提供するブラウザChromeで利用できる拡張機能「ChatGPT Writer」にも、ChatGPTが搭載。入力したメール内容に合わせて、自動で返信文を作成できます。
ChatGPTをうまく活用できれば、日常的に行う雑務の時間を短縮できるのです。
3.レポート/報告書等の作成
ChatGPTを活用すれば、レポートや報告書の作成を効率化できます。
ChatGPTに役割を与え、テンプレートに従い質問を行うことで、レポートや報告書の自動作成が可能です。たとえば、実施した取り組みの感想や学びを箇条書きで記載。レポートの体裁や文字数制限など条件を与えることで、違和感のないレポートを作成できます。
それ以外にも、以降の項目で詳しく解説しているChatGPTのプラグイン「Code interpreter」を利用すれば、CSVファイルからデータを読み取りグラフや表を作成可能です。手作業では時間のかかるプレゼン資料や、報告書も簡単に作成できます。
レポートや報告書の作成は必要な業務ではあるものの、直接的に利益につながらない雑務の一面もあります。ChatGPTを活用すれば、書類作成の効率化が可能です。空いた時間を新しいビジネスに活用すれば、企業の利益につながります。
なお、ChatGPTの活用例として、アメリカのクラウドサービスを展開する企業「Box」が資料やレポート作成を自動化できるサービス「Box AI」を開発しています。
Box AIでは、すでに提供しているクラウドストレージサービス「Box」に保存しているデータを活用し、自動で資料を作成可能です。企業の戦略資料や、財務報告書の要約資料など、細かい数値が含まれる資料を簡単に生成します。
ChatGPTを活用したツールを利用すれば、一瞬でプレゼン資料やレポートが作成できる時代もすぐそこです。
4.コンテンツの作成
ChatGPTは、コンテンツ作成にも活用できます。
ChatGPTに条件を与えたうえで質問することで、ブログやメディアなどに掲載する記事を自動で作成できます。無料版では文字数制限がありますが、有料版を使えば数千文字のコンテンツも作成可能です。
ブログ・メディア記事以外にも、PR文や契約書などの作成もできます。1から文章を作成するだけでなく、既存文章の添削や要約も可能です。
理想的なコンテンツを作成するためには、
- 文字数
- 目次や記載内容の指定
- 参考にするサイトの指定
など、できるだけ条件を絞ることが大切といえます。コンテンツ作成を自動化できれば、文章作成を効率化できるのです。また、今までライターに依頼していたコンテンツ作成を自動化できれば、経費削減にもつながります。
企業名 | 株式会社legalOn Technologies |
サービス名 | LegalForce |
活用内容 | レビュー後の契約書に、修正がある場合、訂正案を表示する |
コンテンツ作成の事例としては、契約書作成サービス「LegalForce」が挙げられます。LegalForceでは、以前から契約書の添削サービスは提供しています。ただし、従来はレビューした契約書に修正が必要な場合、参考になるサンプル文をもとにユーザーが修正文を作成していました。
ChatGPTを活用することで、修正内容を反映した訂正案が提示できるように改善されています。細かいリーガルチェックは必要ですが、作業時間を削減できる点はメリットでしょう。
5.業務マニュアルの作成
ChatGPTは、業務マニュアル作成に活用できます。
ChatGPTの文章自動作成機能を活用すれば、作業マニュアルや営業のノウハウなどを自動作成できるのです。たとえば、説明画像や解説動画をアップロードすれば、自動でマニュアルテキストを作成できます。
企業では安定的に業務を行うために、職種や作業ごとにマニュアルを準備しなければいけません。ただし、手作業で作成するのは手間がかかります。
ChatGPTを活用して作業を自動化できれば、マニュアル作成に使用していた時間を別業務に割り当てられるのです。さらに、マニュアル作成を外注している場合であれば、経費の削減にもつながります。
実際に民間企業や国でも、ChatGPTを活用したマニュアル作成が実用化されています。
Orange Moon株式会社の提供する業務マニュアル作成支援サービス「ManualForce」は、業務マニュアルのタイトルと説明文を自動生成できるツールです。パソコン内で完結する作業であれば、操作を自動で動画記録。記録したデータをもとに、自動でマニュアルを作成します。
農林水産省では、補助金制度の変更に伴うマニュアルの修正や改定にChatGPTを活用する方針です。農林水産省は、ツールを活用して利用者にわかりやすいマニュアルを短期間で作成したいとしています。
マニュアルが変更されるときは短期間で対応しなければならないため、質が低下しやすいのです。しかし、ChatGPTをうまく活用することで、作業効率が上がるだけでなく、利用者が使いやすいマニュアルを作成できるのはメリットでしょう。
6.予約の受付/管理
ChatGPTは、ホテルやレストランなど予約の受付や管理機能に活用されています。
予約であれば、Webサイト上で可能なサービスは多いです。しかし、現状では目当ての店舗やサービス探しは、利用者が行わなければいけません。
その点、ChatGPTを活用すれば、サービス上の登録データを活用。短時間で条件に合う店舗やサービスをリストアップできます。提案のなかで予約したい店舗・サービスがあればすぐに予約できるため、利用者の予約にかかる手間を軽減できるのです。
予約する店舗・サービスを探すのは時間がかかるため、途中で辞めてしまうケースもあります。予約の受付までの工程を簡略化することで、利用者の購買意欲が高いうちに予約まで進んでもらえるのです。
実際、ホテルやレストランの検索・予約サイトを運営する企業のなかには、ChatGPTを活用する動きも出ています。
たとえば、株式会社カカクコムが運営する「食べログ」では、ChatGPTを使い最新の空席情報を検索できる機能を提供しています。希望エリアや料理ジャンル、日時と利用人数を設定して検索でき、直感的に店舗を絞り込めるサービスです。希望の店舗が見つかれば、すぐにWebサイト上で予約ができます。
さらに、ホテルの予約サイト「エクスペディア」では、ChatGPTを使い対話型で旅行プランの提案を実施。ホテル情報と合わせて、空席状況なども確認できます。2023年夏以降には、提案されたホテルの画像や価格帯など追加情報が表示され、旅行をイメージしながら予約まで進めるようになる予定です。
現状の予約サービスは、利用者が条件に合う店舗を探す手間がかかりました。しかし、ChatGPTを活用することで、予約までのハードルが下がる可能性があります。
7.SNSのアカウント運用
ChatGPTは、SNSのアカウント運用にも活用されています。
従来のSNSアカウント運用は、担当者が手作業で実施していました。予約機能を活用すればリアルタイムに投稿する必要はないですが、投稿ごとに文章や構成を考え投稿するのは手間がかかります。
ChatGPTを活用することで、SNSに投稿するテキストや画像を自動で生成可能です。文字数制限や記載内容を箇条書きで記載すれば、一瞬でコンテンツを作成できます。また、ハッシュタグやコメントへの返信内容の添削など、SNS運用時のアイデア出しにも活用できるでしょう。
SNSに投稿するコンテンツ作成を自動化できれば、運用担当者は他の広報活動に時間を使えます。さらに、作業効率が上がれば投稿数を増やせるため、結果的に売り上げや利用者増加につながる可能性もあります。
加えて、SNS運用業務を効率化すれば、担当者の人数も少なく済みます。その分の人件費を削減でき、新しい事業やアイデアにコストを回せるようになるのです。
8.文書資料の翻訳
ChatGPTは、文書資料の翻訳に活用できます。
ChatGPTに翻訳専門の機能はありませんが、チャットで翻訳を指示すれば入力したテキストやPDF資料などを翻訳可能です。日本語から英語への翻訳以外にも、フランス語やスペイン語など多言語化もできます。海外の顧客へのメール作成や、海外の資料を分析するときに、短時間で翻訳できるのが魅力です。
また、翻訳する文章のスタイルを指示すれば、ビジネス向けの文章や友達向けのくだけた文章も作成できるのです。今まで翻訳家や、言語を理解できる社員に依頼していた翻訳業務を自動化できれば、業務の効率化ができます。さらに、外部の翻訳家に依頼している場合は、依頼料を削減できる点もメリットです。
ただし、ChatGPTは海外企業のツールであるため、英語からの翻訳に比べると日本語からの翻訳は精度が低い傾向があります。翻訳内容は正しいとは限らないため、ビジネスで利用するときは複数回確認する必要があるでしょう。
9.データの分析/解析
ChatGPTは、データの分析や解析にも活用されています。
ChatGPTに実装されている「Noteable」や「Code Interpreter」を活用すれば、ChatGPT内でデータ分析を実行可能です。日本語で分析したい内容を指示し、必要に応じてCSVやデータベース情報をアップロードするだけで、簡単に分析できます。
利用者はプログラミングを行う必要はなく、Pythonのコード作成経験がなくても活用可能です。また、分析後は間違いがないか確認するだけでよいため、クリエイティブな作業に時間を使えます。
ChatGPTは顧客データの分析や新商品のA・Bテスト分析など、幅広い分析業務に活用できます。
企業名 | 株式会社ネオマーケティング |
活用内容 | マーケティング業務で行う調査・分析業務の効率化 |
たとえば、マーケティングをメインに行う株式会社ネオマーケティングでは、ChatGPTをマーケティングの調査・分析に使用すると発表しました。
時間のかかる競合分析や市場規模調査などの作業時間を削減できるため、クライアントのマーケティング支援に専念できるのです。
Pythonやプログラミング作業の時間を短縮でき、クライアントへの対応に時間を使えるのは、満足度を高める意味でも大きなメリットでしょう。
10.会議内容の文字起こし
ChatGPTは、会議内容の文字起こしにも利用されています。
ChatGPT自体には音声認識機能はありませんが、別サービスと連携すれば音声のテキスト化が可能です。会議中にメモを取る必要がないため、議論に集中できます。また、筆記の時間も不要であるため、会議時間も短縮できるでしょう。
実際、すでに議事録作成サービスにChatGPTが活用されています。
OTTER.AIでは、英語での会議音声を自動で文字起こしできる「Otter」を提供しています。音声を文章にするだけでなく、発言者と発言内容をリンクさせて記録可能です。あとで議事録を見返したときに、発言者が確認できるのはメリットでしょう。
さらに、議事録はリアルタイムで作成されるため、会議中に発言を振り返ることもできます。ChatGPTを会議に活用すれば、進捗を効率化できるのです。
11.会議/資料の要約/校閲
ChatGPTは、会議内容の要約や校閲にも活用されています。
ChatGPTを活用すれば、会議内容の要約や資料文章の校閲を自動で行えます。議事録は必要な資料ですが、作成作業は新しい価値につながらない雑務です。議事録の要約や資料作成を自動化できれば、担当者は他業務に専念できます。
人材を有効に稼働させられると業務効率が上がるほか、人材削減による費用も軽減できるでしょう。
なお、ChatGPTの活用事例として、議事録作成サービスに利用する企業も出てきています。
株式会社時空テクノロジーズが運営する「ログミーツGPT」は、会議の録音から文字おこしを自動生成し、文章の要約まで行うサービスです。
文字おこしまではAIツールで行い、要約や議事録の分析などをChatGPTで行います。議事録と資料の作成を自動で行えるため、会議後の雑務を軽減できるサービスです。
また、株式会社Poeticsが運営する「JamRoll」はChatGPTと連携することで、従来の文字おこし機能に加え商談内容の要約やフィードバックが可能になりました。とくにフィードバック機能は便利で、商談の進め方や営業の話し方などを分析し、改善点と良かった点を教えてくれます。
ChatGPTを活用すれば、議事録作成の作業効率をアップできるほか、議事録データを分析して新しい機能に活かすことも可能です。
12.履歴書等のスクリーニング
ChatGPTは、履歴書などのスクリーニングに活用される可能性があります。
企業の採用活動では、求職者の履歴書を確認して採用判断をしなければいけません。しかし、膨大な数の履歴書を確認するのは時間がかかるため、採用期間が長期化しやすいです。また、採用担当者の負担も増えます。
そのなかで、ChatGPTを活用すれば、採用にかかる負担を軽減できます。履歴書の確認作業を効率化できれば、採用可能性のある人材の確認に時間を使えるのです。
たとえば、あらかじめ採用条件をデータとしてChatGPTに与えたうえで、履歴書データをアップロード。採用条件と履歴書の整合性を数値化して分析できれば、簡易的な履歴書の振るいわけができます。
現状では個人情報やセキュリティの問題から、ChatGPTと連携して履歴書のスクリーニングができるサービスは確認できませんでした。しかし、今後ChatGPTのセキュリティ問題が解消されると、採用支援サービスに採用される可能性はあるでしょう。
13.給与の計算
ChatGPTは、給与の計算にも活用できます。
企業の給与計算は複雑かつ膨大な量を行うため、基本的に給与計算サービスを利用するのが一般的です。基本的な項目は既存サービスでも自動入力できますが、一部例外的な計算は手作業で行う必要があるケースもありました。
ChatGPTを活用することで、手作業で行う業務を自動化できるため、経理作業は簡略化できます。複数人で作業をしている場合、手が空いた社員は他の業務に取り組めるでしょう。
企業名 | 株式会社マネーフォワード |
サービス名 | マネーフォワードクラウド給与 |
活用内容 | 給与計算で発生する端数処理・四則演算などの複雑な計算式を自動生成 |
会計ソフトで有名な株式会社マネーフォワードでは「マネーフォワードクラウド給与」でChatGPTを活用しています。
基本の給与計算などは従来から自動化されていましたが、一部端数処理や四則演算など複雑な計算式は自分で入力する必要がありました。経理の専門知識があれば問題ありませんが、利用者のなかには計算式の作成が難しいという声も。
そのなかで、ChatGPTのAPIを導入し、日本語でやりたい計算を記載するだけで計算式を自動生成できる仕組みを構築しています。現状では手間がかかるイメージのある給与計算ですが、ChatGPTを活用すれば簡単にできる業務になる可能性もあるでしょう。
14.デザイン制作
ChatGPTは、デザイン制作にも活用できます。
ChatGPTを活用すれば、インターネット上のデザインコンテンツを分析して、最適なデザイン案を自動生成可能です。イラストや画像など物理デザインの作成や、Webデザインの構成ができます。
また、Webデザインでは、HTMLやCSSなどデザインを構成するコードも自動で生成できるのです。デザイン制作にChatGPTを活用することで、制作業務の期間を短縮。さらに、作業に必要な人材数も減らせるため、クリエイティブな業務に力を入れられます。
実際にクラウドサーカス株式会社では、Webデザイン制作を支援するサービスにChatGPTを活用しています。
企業名 | クラウドサーカス株式会社 |
サービス名 | LP Builder |
活用内容 | 作成したいWebサイトの概要を記載することで構成/テキスト/HTML/CSS/Webデザインを自動生成 |
「LP Builder」では、これまでテンプレートを利用したWebサイト制作が可能でした。
ChatGPTの導入後は、テキストで作成したいWebサイトのイメージを伝えるだけで、ワイヤーフレームやデザインを自動生成できます。利用者が直感的にWebサイトを制作でき、作業時間を大幅に短縮できるサービスとなりました。
今まではWebサイト制作を1から行う必要がありましたが、ChatGPTを活用すればアイデアを考えるなど、よりクリエイティブな業務に専念できるかもしれません。
15.ソフトウェアの開発
ChatGPTは、ソフトウェア開発にも活用できます。
ソフトウェアを開発する場合、コーディングやエラーの修正などをITエンジニアが作業するのが一般的です。しかし、ChatGPTを利用すれば、テキストでプログラムの詳細を指示するだけでコードを自動生成できます。
コードの作成だけでなく、作成したコードのエラーやバグの特定や、改善案の提案も可能です。すべてのコーディングを自動化できないものの、手間のかかる作業を軽減できるため、作業時間と人件費の削減につながります。
なお、ChatGPTをソフトウェア開発に活用している事例は見つかりませんでした。しかし、TwitterなどのSNSやWebサイト上には、ChatGPTをプログラミングに活用している声も多いです。
今後のIT業界では、単純なプログラミング作業はAI生成ツールに任せ、ITエンジニアはよりクリエイティブな作業に専念することになるかもしれません。
なお、次の記事ではプログラミングを効率化するChatGPTの活用術を、言語別のコード例も交え詳しく紹介しているのでよければ参考にしてください。
16.プロジェクトの管理
ChatGPTは、業務のプロジェクト管理にも活用されています。
通常、業務のプロジェクトを管理するには、スケジュール管理ツールへの入力や管理担当者への連絡が必要です。しかし、プロジェクトメンバーの数が多い場合、進捗管理やスケジュール調整が難しくなります。
チャットやWeb会議などで進捗を報告したつもりでも、管理ツールで共有されておらずメンバー内で混乱が生じるケースも。
その点、ChatGPTをプロジェクト管理ツールと連携して活用することで、進捗管理やスケジュール調整を自動化できます。プロジェクト管理が簡略化できれば、タスクの漏れや進捗の遅れを防げるのです。
たとえば、下記の企業ではタスクやプロジェクト管理ツールにChatGPTを活用し、進捗管理の自動化を目指しています。
Repsonでは、チャット内のコメントを要約し、残りのタスクを明確化できるサービスを提供しています。チャットのやり取りが流れてしまい、進捗が把握できない問題を解消できるのです。
また、株式会社KandaQuantumが提供する「CalqTalk」では、ミーティングの内容を要約したうえで、タスクを自動割り当てできます。
割り当てはリアルタイムで行われるため、生成されたタスクを見ながら話し合いも可能です。加えて、議事録と割り当てられたタスクを確認すれば、会議に参加していない人でも内容を把握できます。
このように、会議やミーティングの会話をもとに自動でプロジェクトの進捗や担当者を管理できれば、個別に管理ツールなどに記載する手間はかかりません。ChatGPTを活用すれば、プロジェクト管理の負担やミスも減るでしょう。
17.アイデア出し
ChatGPTは、ビジネスやコンテンツ制作などのアイデア出しにも活用されています。
ビジネスやコンテンツ作成では常に新しいアイデアが求められますが、活動を継続するうちにアイデアが枯渇するケースも多いです。ChatGPTを活用することで、自分では思いつかないアイデアを自動生成してくれます。
ChatGPTはインターネット上や与えたデータを活用し、テーマに合うアイデアを生成するため、常識にとらわれないアイデアが見つかる可能性もあるのです。うまくChatGPTを活用すれば、新製品の開発やイベントの計画、新しいコンテンツの作成が効率化できます。
実際にChatGPTを活用し、アイデアや企画が生み出せるサービスを開発する企業も増えています。
「IDEA GAEDEN」や「MEMES」では、テーマを3つ選択するだけで新しいアイデアを生成できます。直感的にアイデアを作成できるため、アイデア像がはっきりしない人でも利用しやすいです。
また「kamui studio」のように、動画コンテンツなど特定のアイデアに特化したサービスもありました。クリエイティブな作業は人間の仕事というイメージがありますが、アイデア出しもChatGPTで効率化できます。
18.プレゼン資料の作成
ChatGPTは、プレゼン資料や企画書の作成に活用できます。
ChatGPTだけでプレゼン資料を完成させることはできませんが、PowerPointなどの資料作成ツールと組み合わせることで、短時間で成果物を作成できます。
たとえば、ChatGPTにPowerPointで使用する文章を作成してもらう場合、目次と記載してほしい内容を入力すれば自動で文章を作成可能です。作成した文章をコピーし、スライドに貼り付ければ簡易的な資料ができます。
また、下記のようにChatGPTと連携している資料作成ツールを利用すれば、文章からデザインまでプレゼン資料を生成できます。
プレゼンでよく利用されるマイクロソフトの「Office365」であれば、チャットでスライド数やテーマを入力するだけで、資料を自動で作成できるのです。PowerPointだけでなく、WordやExcelなどでも利用できるため、企画書や報告書なども作成できます。
それぞれのツールで汎用性があるため、Wordの資料をもとにPowerPoint資料を作成することも可能です。ChatGPTを利用すれば、プレゼンや計画書作成にかけていた時間を削減し、新しいアイデアやプレゼン練習などに時間を使えます。
なお、次の記事ではChatGPTで効率化できる業務を導入事例も交え詳しく解説しているので、あわせて参考にしてください。
ビジネス活用には有料版のChatGPTがおすすめ
ChatGPTには無料版と有料版がありますが、ビジネスで活用する場合は有料版がおすすめです。
できること | |
有料 | ・GPT-4の利用 ・テキスト/音声/画像生成 ・最新機能の利用 |
無料 | ・GPT-3.5の利用 ・テキスト生成 |
有料版は、無料版のほうが使える機能がたくさんあります。たとえば、無料版で利用できるGPT-3.5は、1度にやり取りできるテキスト量に限度があり、長文を入力するには複数回にわける必要があります。
一方、有料版で利用できるGPT-4は長文にも対応しており、PDF資料を入力して添削・要約なども可能です。さらに無料版はテキストでのやり取りに限定されますが、有料版はテキスト・音声・画像でのチャット機能を使えます。音声生成や画像生成もできるため、利用範囲が広がるのです。
また、有料版ではプラグインといわれる機能を追加できるツールを利用できます。ChatGPTの有料版でも機能は充実していますが、プラグインを駆使すれば、活用の幅が広がるのです。
たとえば、直近でいうと2023年7月10日に注目のプラグイン「Code interpreter」が公開されました。
Code interpreterはプログラミングを支援するプラグインで、
- 画像やCSVファイルの読み込み
- Pythonコードの生成と実行
- 入力したデータからグラフや表を生成
など、手作業では時間のかかる作業を自動化できます。わかりやすい使い方としては、CSVファイルをアップロードすれば、ファイル内のデータをもとにグラフや表を作成可能です。
それ以外には、コードを読み取らせることで、修正や新しいコードの生成もできます。コーディングを自動化できれば、他の作業に取りかかれるため、全体的な業務効率アップにつながります。
このように、プラグインを追加すれば自分好みに機能をカスタマイズでき、さらに業務を効率化できるのです。ChatGPTのプラグインに関しては、次の記事で解説していますので、あわせてご覧ください。
なお、次の記事では8つの観点でChatGPTの有料版と無料版の違いを詳しく解説しているので、良ければ参考にしてください。
→ ChatGPT無料版と有料版の違い!8つの観点でわかりやすく解説
下の記事ではChatGPT4とは何なのか、その特徴を料金や「ChatGPT3.5」との違いも交え詳しく解説しているので、あわせて参考にしてください。
→ ChatGPT4とは?料金やできること、使い方もわかりやすく解説
ビジネスにChatGPTを活用する際の注意点
ここまで解説したとおり、ChatGPTはあらゆるビジネスシーンに活用することで、業務改善や効率化が実現可能です。ただし、活用方法を間違えてしまうと、情報漏洩や利用前以上にコストがかかる事態に陥りかねません。
そこで、ここからはビジネスにChatGPTを活用する際の注意点を、3つにまとめて解説します。
質問の仕方次第で回答の精度は変わる
ChatGPTにおける回答精度は「質問の仕方次第で変わる」点は、おさえておきましょう。
ChatGPTに質問を入力すれば、自動で最適と思われる回答が出力されます。しかし、質問内容があいまいな場合や、わかりにくい指示では回答の精度が低いケースも。
たとえば「PR用に自社サービスのキャッチコピーを文字数10文字以内で5つ考えて」と質問するとします。このまま質問すれば、キャッチコピーを考えて自動生成してくれます。
一方「自社サービスをPRできるキャッチコピーを5つ考えて」と質問した場合、文字数制限がないため、長いキャッチコピーが生成されてしまいます。
文字数を気にしない場合は良いですが、ポスターなどに記載する場合は文字数も重要なポイントです。求めるアイデアを生成するには、より具体的に指示しなければいけません。
あくまで例ですが、質問内容に具体性がない場合や、インターネット上で探すのが難しい情報が含まれるケースは回答の精度が落ちる可能性があります。
回答の精度が落ちると、何度もチャットのやり取りを繰り返す必要があり、作業効率が下がります。また、誤った内容のまま成果物を利用すれば、ビジネスに悪影響を及ぼすかもしれません。
そのため、ビジネスで利用するときは、入力内容により回答の精度が落ちることを理解してください。そのうえで、最適解をもらえるまで繰り返し質問するのがおすすめです。
なお、下の記事ではChatGPTへ質問する際におすすめのひな形を詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてください。
個人/機密情報の共有は慎重に
ChatGPTを活用した個人情報や機密情報の共有は慎重に行いましょう。
ChatGPTは質問内容や参照データを入力して使用しますが、個人情報や機密情報を入力すると情報漏洩のリスクがあります。ChatGPTのチャット履歴は、デフォルト設定ではAIモデルの訓練に使用されるため、設定を変更せず利用すれば情報漏洩の懸念があります。
もちろん、Chat GPTを運営するOpen AI社もセキュリティ対策は実施していますが、対策の漏れが発生する可能性はあるでしょう。とくにChatGPTは提供されてから時間が経過しておらず、リスクが明確ではありません。
個人を特定できる氏名や住所、企業の秘匿情報を入力した場合、モデル訓練に情報が使用されてしまい情報漏洩するリスクもあるのです。
実際、韓国の半導体メーカー「サムスン電子」では、ChatGPTに社内機密コードが流出した可能性があるとして生成AIツールの利用を禁止しています。
今後のアップデートでセキュリティの課題が解決される可能性はありますが、リスク管理の意味でも現状では個人情報や機密情報の共有は控えましょう。
情報の事実確認を怠らない
ビジネスにChatGPTを利用する際は、出力された情報の事実確認を怠らないようにしましょう。
ChatGPTは質問や出力条件を入力すれば、テキストや動画などコンテンツを簡単に作成できます。しかし、出力される内容はインターネット上の情報をもとに生成しており、事実と異なる情報が含まれる可能性があるのです。
たとえば、インターネット上には「おすすめの飲食店」を質問したとき、架空の店舗が含まれていたという話があります。私的利用であれば間違いも笑い話で済みますが、ビジネスで利用した場合は企業の信頼性や利益の損失につながるリスクがあるのです。
とくにChatGPTは自然な文章を作成できる反面、正しく見えるなかに間違いが混入するケースもあります。信頼できるコンテンツや文章を作成するためにも、ChatGPTで出力された内容は細部まで確認してください。
ChatGPTのビジネス活用を阻む3つの課題
冒頭で紹介したとおり、ChatGPTはさまざまな業界で活用されているものの、その利用率は15.4%と決して高い水準ではありません。つまり、いち会社・事業主単位ではChatGPTといったAIツールが活用しきれていないのが現状です。
そこで、ここからはChatGPTのビジネス利用を阻む課題を、3つにまとめて紹介します。
なお、今回紹介する課題は「帝国データバンク」で実施されたアンケートを参考にしています。データも交えて解説しますので、ぜひ参考にしてください。
活用できるイメージが湧かない
ChatGPTの活用に躊躇する理由として「活用できるイメージが湧かない」という意見があります。
帝国データバンクの企業を対象としたアンケート調査によると、生成AIの活用状況として「現時点では活用イメージが湧かない」が37.8%と最も多い結果でした。次いで「業務での活用を検討をしておらず今後も活用するつもりはない」が17%「活用を具体的に検討していく」が14%と続きます。
生成AI(ChatGPTを含む)を活用するイメージが湧かない人は多いものの、前向きに活用を検討している企業の割合は約6割を超えています。世界的に活用が進むなかで、活用は検討しているものの、具体的にどう導入すればよいかわからない企業が多いようです。
実際に企業のなかには、生成AIの具体的な使い方がわからず、詳しい社員もいないため静観しているケースもあります。さまざまな企業でChatGPTを含む生成AIの活用に関心が持たれていますが、事例の少なさ担当者が不在であるため、利用が進んでいない現状もあるのです。
社内での利用が禁止されている
現状では、社内で生成AI(ChatGPTを含む)の利用が禁止されている企業もあります。
調査結果では、業務での活用を検討していない企業のなかには、利用を認められていない割合が大企業で11.4%、中小企業で4.7%、小規模企業で4.3%となりました。
現状では、ChatGPTの活用事例が少なく、活用したときにどのようなメリット・デメリットがあるかわかりにくい点が活用に踏み切れない理由の1つといえます。
また、生成AIが便利な点は理解しつつも、得た情報や生成されたコンテンツの正確性に不安がある企業も多いです。中途半端に採用した結果、既存の業務が混乱するおそれもあるため、慎重に活用を検討する企業もあります。
さらに、個人情報や機密情報の漏洩リスクも指摘されつつあり、不安で活用に踏み切れない企業もあるのです。実際に日本だけでなく、世界でもChatGPTを含む生成AIの業務利用に制限や規制をかける動きも。
IT業界では比較的前向きに捉えられている生成AI技術ですが、不安要素があり活用に踏み切れないのは今後の課題でしょう。
使い方がわからない
ChatGPTの使い方がわからず、ビジネスに活用できない企業もあります。
先ほども解説したとおり、ChatGPTは2023年から本格的に注目された生成AIです。そのため、ツールを使いこなせている社員や経営者は多くありません。便利で活用したい気持ちのある企業でも、実際に使用できる人材がいなければ活用できないのです。
とくにChatGPTを含む生成AIは、必ず正しい出力がされるわけではないため、確認作業や用途など利用マニュアルも必要です。そのほか、セキュリティ対策の観点から活用計画を立てる必要もあり、すぐには利用できない現状もあります。
ChatGPTに関する研修や、使いやすいサービスが増えるとこの課題は解決しますが、しばらくは使い方がわからず活用に踏み切れない企業もあるでしょう。
なお、次の記事では初心者の人に向け、ChatGPTの始め方や使い方を詳しく解説しているのであわせて参考にしてください。
より効果的にChatGPTをビジネスへ活かすなら
効果的にChatGPTをビジネスへ活用するには、基本的な使い方を理解したうえで、プログラミングスキルも習得すると良いでしょう。
ChatGPTはテキストでも生成したいコンテンツや情報の指示が出せますが、コーディングができれば活用の幅が広がります。たとえば、Pythonを使用したデータ加工技術とChatGPTを組み合わせると、加工したデータを活用した資料作成を自動化できるのです。
それ以外にも、Excel・PowerPointなどで使用できるVBAを扱えれば、ChatGPTと連携してプレゼン資料の作成を自動化できます。
このように、ChatGPT単体でスキルを身につけるより、プログラミングスキルも学んだ方がビジネスで活かせる場面が多いです。これからChatGPTを活かせる人材を目指すのであれば、プログラミングも学ぶと良いでしょう。
ただ、どのようにプログラミングを学べばいいかわからない人もいるはず。そのような人には、SAMURAI ENGINEERがおすすめです。
SAMURAI ENGINEERの「業務改善AI活用コース」では、
- Pythonを活用したデータ処理/分析スキル
- ChatGPTの活用方法
を学べます。ChatGPTとPythonの連携やビジネスへの活用方法を、現役エンジニアから学べるため、未経験でも挫折しにくいです。また、講師だけでなく学習コーチとQ&A掲示板のサポートもあり、目標達成まで効率よく学べます。
ChatGPTとプログラミングの両方を効率よく学びたい人は、ぜひSAMURAI ENGINEERをご検討ください。
公式サイトで詳細を見るまとめ
今回は、ChatGPTのビジネス活用例を、利用するコツや注意点も交えて解説しました。
ChatGPTを含め生成AIの技術は世界的に注目されており、今後もビジネスをはじめとして関連サービスが多く登場すると予想されます。現状では活用する企業が多いとはいえませんが、早めに活用をスタートすれば、自社に合う活用方法を見つけられます。
ChatGPTを利用したことがない個人や、利用を検討したことがない企業の方は、この機会に活用を検討しましょう。
Twitterより引用