この記事では、リスキリングとリカレントの違いをわかりやすく解説します。
リスキリングとリカレント教育は何が違うの?
リスキリングには取り組むべき?
「昨日まで当たり前だった仕事が、明日には大きく変わるかもしれない」そんな漠然とした不安を感じている方もいるのでは。
デジタル化の波が、私たちの仕事を大きく変えつつある今、そんな思いを抱く人が増えています。
事実、日本国内では2030年までにデジタル人材が80万人近く不足すると予測されており、この深刻な人材不足を埋めるために多くの企業がリスキリングに本腰を入れ始めています。
そんななか、新しいスキルを習得したい気持ちはあるものの、リスキリングやリカレント教育などさまざまに飛び交う言葉の違いがわからず混乱している人も多いのではないでしょうか。
そこで、本記事ではリスキリングとリカレント教育の違いをわかりやすく解説します。リスキリングと混同しやすい用語も紹介するので、ぜひ参考にしてください。
- リスキリングは新しい職や現業務で必要なスキル獲得を目指すこと
- リカレントは生涯にわたり研鑽を行い教育と就労を繰り返すこと
- リスキリングは補助金を利用してITスキルを学ぶのがおすすめ
リスキリングとリカレント教育は根本的な意味が違う
結論、リスキリングとリカレント教育では根本的な意味が異なります。
リスキリングは企業が従業員に対して学び場を提供すること、リカレント教育は個人が生涯にわたり教育と就労を繰り返すことを指します。
なお、リカレント教育と学び直しは、どちらも社会人になったあとも学びを続けるという意味合いを持つ言葉です。以降では、リスキリングとリカレント教育それぞれの違いを、より詳しく解説します。
リスキリングとは
リスキリングとは、技術革新や産業構造の変化に対応するため、現在の仕事を続けながら実践的な職業スキルを学び直すことです。
海外ではすでにリスキリングは浸透しつつありますが、日本では政府がリスキリングへの取り組みを呼びかけている最中です。
また、近年ではとくにデジタル化と同時に生まれる新しい職業や、仕事の進め方が大幅に変わるであろう職業に就くためのスキル習得を指すことが増えています。そのため、今後はリスキリングによって能力やスキルを伸ばしていく人が増える傾向にあります。
リスキリングについてより詳しく知りたい人は、次の記事を参考にしてください。
リカレント教育とは
リカレント教育とは、学校教育を終えた社会人が生涯にわたり学び続け、学習と就労のサイクルを繰り返す取り組みです。
リカレントが注目される背景として、技術革新の進化と日本人の平均寿命が伸びていることが大きいです。今までは、学校で勉強した後に就職し、定年退職するなどの流れが普通とされていました。
しかし、技術革新が進み平均寿命が伸びた現代では、社会に出た後も会社を休職して留学したり定年後も新たな仕事を始めたりするなど、キャリアチェンジの傾向もあるためリカレントの取り組みが注目されています。
なお、リカレント教育で学習する内容は以下がおすすめです。
- プログラミングスキル
- ビジネス系スキル
- 外国語
上記のスキルは、技術革新が進んでいく現代で需要が高い傾向のあるスキルのためおすすめです。ぜひ、自分に合いそうなスキルを学習しましょう。
リスキリングとリカレント教育の違い5つ
ここからは、次のトピック別に、リスキリングとリカレント教育の違いを紹介します。
1つずつ紹介します。
実施目的
次のように、リスキリングとリカレント教育では実施目的の点で大きな違いがあります。
- リスキリング:新しい職種への転換
- リカレント教育:スキルの更新・拡張
リスキリングは、技術革新などにより現在の職種がなくなるリスクに直面している労働者が、新しいスキルや職種に適応するための教育を指します。つまり、雇用の継続性や今後のキャリア転換に対応できるための新たなスキル習得が焦点です。
一方で、リカレント教育はすでに持っているスキルの更新や拡張、さらには新しい知識の習得を通じて、個人のキャリアアップや生涯学習を促進することが目的です。これは、現在の職業においても、将来的に他の職業にうつる場合においても継続的な学習と成長を支援することを意図しています。
このように、リスキリングとリカレント教育は、個人のキャリアや学習ニーズに応じた異なる目的を持っています。
学習内容
リスキリングとリカレント教育では、学習内容にも違いがあります。
学習内容 | |
リスキリング | ・プログラミングスキル ・ビジネス系スキル ・外国語 |
リカレント教育 | ・専門知識の更新と拡張 ・コミュニケーション能力 ・問題解決能力 ・ソフトスキル |
リスキリングは、現在の職業や職務に不可欠なスキルが陳腐化した際に、新たな職種や業界で求められるスキルを身につけることが焦点です。主に、プログラミングスキルをはじめとしたITスキルや簿記・FPといったビジネス系スキル、外国語など急速に進化する市場に追いつくためのスキルが対象となります。
一方、リカレント教育は、個人のキャリア全体を通じて学習を継続することを目的としており、専門知識の更新や拡張だけでなくコミュニケーション能力や問題解決能力などのソフトスキルの向上も含まれます。
これにより、現在の仕事におけるパフォーマンスの向上や、長期的なキャリア形成のサポートが可能です。
このように、リスキリングは急速な市場変動に対応するため「技術的・専門的スキル」の獲得に焦点を当てている一方、リカレント教育は「継続的な学習」を通じて、幅広いスキルセットを身につけることを目指しています。
実施方法
リスキリングとリカレント教育では、その実施方法と形式に大きな違いが見られます。
リスキリングは、技術革新などによって必要とされる新しいスキルセットを身につけることが目的です。そのため、オンラインコースや短期集中講座など、効率的に特定のスキルを習得できるプログラムが多く設けられています。
一方でリカレント教育は、一生涯にわたる学習を推進するための教育です。個人のキャリア発展や、社会的な変化への適応を目指しています。通信教育、夜間講座、オープン大学など、柔軟な学習方法が提供されていることが特徴です。
このように、リスキリングとリカレント教育はそれぞれ異なる目的と形式を持ち、キャリアアップやスキル習得において重要な役割を果たします。
対象者
リスキリングとリカレント教育では、対象者とその需要に大きな違いがあります。
対象者 | |
リスキリング | 技術革新や市場の変化により新たなスキルが必要となる人々 |
リカレント教育 | 自身のスキルや知識を更新し、キャリアアップを目指す就業者 |
リスキリングを必要とするのは、主に技術革新や市場の変化によって、現在持っているスキルが陳腐化したり、職を失う可能性がある人々です。これらの人々は、新しい分野や業務に移るために必要なスキルを身につける必要があります。リスキリングの需要は、特に急速に変化する業界や職種で高まっています。
一方で、リカレント教育は、既に就業している人々が自身のスキルや知識を更新し、キャリアアップやキャリアチェンジを目指したい人が対象です。リカレント教育の対象者は、職場で更なる成長を望む全ての労働者と言えます。これは、個人の将来性を高めるだけでなく、企業の競争力維持にも貢献します。
以上から、両者の最大の違いは、対象者の現在の職業やスキルレベル、およびそれぞれが抱える需要が異なるという点にあります。
実施効果
リスキリングとリカレント教育の効果と成果は、それぞれの目的に沿って異なります。
リスキリングの効果は、新たな職業や業界への転職を可能にすることです。これにより、個人は技術革新によって陳腐化した旧来のスキルから脱却し、新しいスキルを身につけることができます。成果としては、雇用の機会が拡大し、より高い収入を得られる可能性があります。
一方、リカレント教育の主な効果は、既存の職において専門性を高めることです。これにより、現在の職場内での昇進やキャリアの拡大が期待できます。
成果としては、仕事の充実感が高まり、職場でのポジションが向上することが挙げられます。これらの違いを理解することで、個々人が自身のキャリアプランに合わせた適切な教育形態を選択することができます。
リスキリングと間違えやすい類似用語
リカレント教育のほかにも、リスキリングと混同しやすい言葉はあります。
そこで、ここからはリスキリングと間違えやすい類似用語を2つ紹介します。
学び直し
学び直しとは、主に社会人が自身のスキル向上や知識拡充を図るために再度学習を行うことを指しています。
学び直しは、リカレント教育においてよく使われている単語です。仕事をしつつ教育も受け、学習するだけで終わることなく、新しく得た知識やスキルを駆使して「キャリアアップやキャリアチェンジする」のを目標とした言葉でもあります。
リスキリングと異なる点は、学び直しの対象となる分野が、リスキリングのように急速な市場変動に対応するための技術やスキルに焦点を当てていません。
学び直しにおいては、自分が興味を持つ分野やテーマを学び直すという意味も含まれています。
生涯学習
生涯学習は、文字通り一生学び続けることを指す言葉です。
リスキリングとは目的が大きく異なります。文部科学省が告示している平成30年度文部科学白書において生涯学習とは、「一人ひとりが、自己の人格を磨き、豊かな人生を送ることができるようにすることが目的」とされています。
リスキリングには取り組むべき?
結論、今からでもリスキリングには取り組むべきです。
2018年に開かれた世界経済フォーラムにおいて、「2022年に全労働者の54%以上が大幅なリスキリングを必要する」という調査結果が発表されました。また、2020年に三菱総合研究所が発表した「目指すべきポストコロナ社会への提言」によると、2030年までの間でホワイトカラーの需要が大幅に減少するといわれています。
また、今現在多くの分野でIT人材は不足しており、今後も人手不足は深刻になるとも予測されています。こうした背景から、政府は個人がリスキリングに取り組みやすいよう、多くの補助金や助成金制度を設けているのです。
採用コストが削減できる点で、企業が従業員個人のリスキリングを促すことで得られる効果は大きいといえます。事実、リスキリングに力を入れている企業は増えています。
上記より、リスキリングは取り組むべきといえるのです。
なお、個人がリスキリングで使える補助金や習得するおすすめスキルなどを詳しく知りたい人は、次の記事を参考にしてください。
→ 個人向けリスキリング補助金・助成金まとめ【対象講座と給付手順】
→ リスキリングで何を学ぶ?おすすめの分野や決め方、学習方法も紹介
まとめ
この記事では、リスキリングとリカレント教育との違いや類似用語について解説しました。
リスキリングに取り組むと新しいスキルや知識を獲得でき、最終的には市場価値の向上につながります。今回紹介した内容をもとに、リスキリングを検討するのはいかがでしょうか。
また、リスキリングでITスキルを身につけたい人は、キャリアアップ支援事業を行っている侍エンジニアがおすすめです。受講料が最大で70%になるこの機会に、ぜひ、ご検討ください。
本記事の解説内容に関する補足事項
本記事はプログラミングやWebデザインなど、100種類以上の教材を制作・提供する「侍テラコヤ」、4万5,000名以上の累計指導実績を持つプログラミングスクール「侍エンジニア」を運営する株式会社SAMURAIが制作しています。
また、当メディア「侍エンジニアブログ」を運営する株式会社SAMURAIは「DX認定取得事業者」に、提供コースは「教育訓練給付制度の指定講座」に選定されており、プログラミングを中心としたITに関する正確な情報提供に努めております。
記事制作の詳しい流れは「SAMURAI ENGINEER Blogのコンテンツ制作フロー」をご確認ください。
この記事の監修者
フルスタックエンジニア
音楽大学卒業後、15年間中高一貫進学校の音楽教師として勤務。40才のときからIT、WEB系の企業に勤務。livedoor(スーパーバイザー)、楽天株式会社(ディレクター)、アスキーソリューションズ(PM)などを経験。50歳の時より、専門学校でWEB・デザイン系の学科長として勤務の傍ら、副業としてフリーランス活動を開始。 2016年、株式会社SAMURAIのインストラクターを始め、その後フリーランスコースを創設。現在までに100名以上の指導を行い、未経験から活躍できるエンジニアを輩出している。また、フリーランスのノウハウを伝えるセミナーにも多数、登壇している。