この記事では画像認識の仕組みも交え、画像処理におすすめの無料AIツールを紹介します。
手軽に画像処理できるAIツールってあるのかな?
AIでの画像認識はどんな仕組みなんだろう?
昨今ではAI(人工知能)の発展・普及が進んでいますが、画像処理の分野でも例外ではありません。しかし、AI画像処理についてはハードルが高いイメージもあり、上記のような疑問を抱えている人が多いのではないでしょうか。
AI画像処理を取り入れた製品は増えていますが、実際に自分で開発することは簡単ではありません。しかし昨今では、AI画像処理を手軽に取り入れられるツールが登場しており、導入しやすくなっています。
そこでこの記事ではおすすめツールの紹介も交え、AIによる画像処理の基礎知識を解説します。AIによる画像処理の仕組みや活用事例も紹介するので、ぜひ参考にしてください。
なお、そもそもAIとは何かを詳しく知りたい人は、先に次の記事を読むと良いでしょう。
- AI画像処理によって画像認識や画像補正、画像生成が可能
- 独自のAI画像処理の実現にはAIモデル構築やトレーニングが必要
- AI画像処理を手軽に取り入れるなら無料ツールの活用がおすすめ
AI(人工知能)による画像処理とは
AI(人工知能)による画像処理とは、AIに画像データを入力(インプット)し、さまざまな処理を行わせる技術のことです。AIは、インプットした画像を認識・加工したり、新たな画像を出力(アウトプット)したりできます。
従来の画像処理では、あらかじめ処理方法をプログラム化したツールなどを人間が用いて処理していました。いっぽう、AI画像処理ではAI自身に画像の処理能力を習得させることで、高度な処理の自動化を実現します。
たとえば、写真に含まれる物体を検出する「物体検出」では、画像データを与えるだけでAIが自動的に物体の有無を判断してくれます。こうした便利なAI画像処理は製造や医療など、幅広い業界で活用されています。
画像処理におすすめの無料AIツール5選
専門的な知識が欠かせない点から、AIによる画像処理システムの開発は簡単ではありません。そのため、手軽にAI画像処理を取り入れたい場合はツールの活用がおすすめです。
上記を踏まえ、ここからは次のトピック別に、画像処理におすすめの無料AIツールを紹介します。
なお、今回紹介するツールはいずれも無料で利用可能です。ただし、無料のプランには利用回数などに制限があるため、より快適にAI画像処理を行いたい場合は有料プランの利用も検討しましょう。
おすすめサイト
AI画像処理サイトはインストールが不要で、ブラウザから使えます。画像の加工や生成など、具体的な用途に合わせて選ぶと良いでしょう。ここでは、おすすめのAI画像処理サイトを3つ紹介します。
「MyEdit」は、オンラインでAIによる画像編集ができるサイトです。背景や衣装の変更、実写画像のアニメ化、余計なものの削除など、さまざまな画像編集をAIの力で行えます。
「Stable Diffusion Online」は、画像生成AI「Stable Diffusion」をオンラインで使えるサイトです。言葉による指示を与えるだけで手軽に利用でき、AIが高品質な画像を生成してくれます。
「EzOCR」は、AI技術を利用した画像上の文字を認識する「OCR(光学文字認識)」をオンラインで使えるサイトです。PDFファイルなどの文字を認識し、テキスト化してくれます。
おすすめアプリ
AI画像処理アプリは、インストールすることでスマートフォンやタブレットから手軽に使えます。用途はもちろん、普段使いのしやすさも加味して選ぶと良いでしょう。
ここでは、おすすめのAI画像処理アプリを2つ紹介します。
「AIピカソ」は、AIによる画像加工や画像生成が行えるアプリです。アップロードした写真をイラスト風に加工したり、言葉による指示でアーティスティックな画像を生成したりできます。
「SNOW」は、AIによる自撮り写真の加工に特化したアプリです。AIが写真に写った顔を認識し、見栄えを良くするためのさまざまな加工を施してくれます。
AI(人工知能)による画像処理を支える技術
ここからは、AI(人工知能)による画像処理を支える2つの技術を紹介します。
機械学習
「機械学習」とは、AIにデータを与えて学習させる技術のことです。膨大なデータの中からAIが規則性やパターンを見つけ出し、知識として活用することで、予測や分析といったタスクの処理能力を身につけます。
機械学習では、AIに「特徴量」と呼ばれる「注目すべき情報」も教える必要があります。学習用のデータとともに特徴量を与えることで、AIが学習の方向性を理解し、タスクの処理精度を向上させていくのです。
機械学習の特徴をより詳しく知りたい人は、次の記事を参考にしてください。
深層学習(ディープラーニング)
「深層学習(ディープラーニング)」とは、機械学習をさらに発展させ、AIにより高度な学習をさせる技術です。人間の脳を模倣した「ニューラルネットワーク」と呼ばれる構造を用いる特徴があります。
通常の機械学習とは違い、深層学習ではAI自らがデータから特徴量を抽出してくれます。つまり、人間が特徴量を細かく設定する負担を抑えつつ、AIに効率的な学習経験を積ませることが可能です。
深層学習の特徴をより詳しく知りたい人は、下の記事を参考にしてください。
AI(人工知能)による画像処理の仕組み
独自にAI画像処理システムを開発したい場合は、その仕組みを把握しておくことが大切です。ここからは、AI(人工知能)による画像処理の仕組みを、3つのステップにまとめて解説します。
- ステップ1:AIモデルの構築
- ステップ2:トレーニング(学習)
- ステップ3:推論
ステップ1:AIモデルの構築
まずは、AI画像処理に欠かせない「AIモデル」を構築します。AIモデルとは、入力されたデータを処理し、結果を出力する仕組みのこと。AIモデルは、AIの具体的な処理方法を決める重要なプログラムです。
AIモデルの構築では、AIに処理させたいタスクに合わせてプログラムを作ります。たとえば顔認証システムのAIモデルには、入力された画像をアルゴリズム(計算方法)で解析し、認証結果を出力するプログラムが必要です。
ステップ2:トレーニング(学習)
構築された時点のAIモデルは、まだ何も学習経験を積んでいません。人間が勉強して賢くなっていくのと同じように、AIモデルにもトレーニング(学習)が不可欠です。
トレーニングでは、処理させるタスクに合ったデータを与え、結果を出力する練習をさせます。出力内容が期待どおりかを人間が評価し、課題があればプログラムやパラメータなどを調整してトレーニングを繰り返します。
AIモデルに高精度な処理能力を習得させるためには、大量の画像データを用意しなければなりません。たとえば顔認証システムの場合、顔の有無や位置、年齢、性別といった条件が異なる画像データを用意します。
具体的なAIのトレーニング(学習)手順を詳しく知りたい人は、次の記事を参考にしてください。
ステップ3:推論
AIモデルに十分な学習経験を積ませたら、いよいよ本番です。AIモデルの運用段階では、未知の入力データを与えて処理させる「推論」と呼ばれるプロセスを繰り返し行います。
AIモデルは学習経験から得た知識を活用し、実際に与えられたタスクを処理していきます。たとえば顔認証システムの場合、カメラからの画像データを実際にAIモデルが解析し、本人かどうかを認証していきます。
このように、AI画像処理の実現には構築→トレーニング→推論といったステップが必要です。
AI(人工知能)による画像処理の種類
AI画像処理は、大まかには次の3種類にわかれています。ここからは、AI(人工知能)による画像処理の種類を見ていきましょう。なお、具体的な活用事例は後ほど紹介します。
画像認識
AI画像認識は、どのような画像なのかをAIに把握・分析させる技術です。AI画像認識では、トレーニングで得た知識を手掛かりに、入力された画像データの規則性やパターンを分析して画像を認識します。
AI画像認識によって、画像における物体の有無や位置、画像の種類などを正確に判断できるようになります。
画像補正
AI画像補正は、既存の画像をAIに改善させる技術です。AI画像補正では、トレーニングで得た知識を活かして入力された画像データの問題点を特定し、適切な修正を加えた画像データを出力します。
AI画像補正によって、ノイズ(余計なもの)を取り除いたり、色味などを調整したりできます。
画像生成
AI画像生成は、指示にもとづきAIに新たな画像を生成させる技術です。AI画像生成では、入力されたプロンプト(指示文)を解析して指示を把握し、トレーニングで得た知識を組み合わせて新たな画像データを出力します。
ほかの種類とは違い、必ずしも元の画像を入力する必要がないのが特徴です。AI画像生成によって、イメージしている画像を日本語の指示だけで形にしたり、画風を変更したりできます。
AI画像処理の活用事例1:画像認識
ここからは次の種類別で、AI画像処理における「画像認識」活用事例を紹介します。
画像分類
「画像分類」は、画像の内容を特定のカテゴリーに分ける技術です。「人物の写真」「犬の写真」「風景の写真」など、画像の特徴をAIが把握し、どのカテゴリに属する画像なのかを特定します。
画像分類の代表的な応用例は、キーワードで画像を検索できる「Google画像検索」です。Web上の画像データをGoogleのAIがあらかじめ分類しておくことで、検索キーワードに応じた画像を素早く表示してくれます。
文字認識
「文字認識」は、画像データに含まれる文字を判別し、テキストデータに変換する技術です。AIは、トレーニングで学んだ文字の特徴と画像内の文字を比較し、パターンが一致する文字を特定します。
文字認識の代表的な応用例は、車両のナンバープレートを読み取る「Nシステム」です。カメラで映したナンバープレートに含まれる文字情報を認識してナンバーを特定することで、手配車両との照合などを高精度でおこないます。
物体検出
「物体検出」は、画像データから物体の有無や位置、種類などを特定する技術です。AIは、トレーニングで学んだ物体の特徴をもとに、入力された画像内に同様のパターンが存在しないか探します。
物体検出の代表的な応用例は「Phoenix Eye」をはじめとするAI外観検査システムです。不良品の特徴を学習したAIが、製造ライン上で異常を素早く検出するため、不良品を迅速に取り除けます。
AI画像処理の活用事例2:画像補正
画像認識に続き、ここからはAI画像補正における活用事例を2つ紹介します。
ノイズ除去
「ノイズ除去」は、画像内の余計な要素や乱れたデータを取り除く技術です。AIは、トレーニングで学んだ正常な画像の特徴と入力された画像内の異常な部分を比較し、ノイズを特定して除去します。
ノイズ除去の代表的な応用例は「Philips SmartSpeed」をはじめとする、医療画像の高画質化ソフトウェアです。MRI画像などに含まれるノイズを取り除くことで鮮明にし、より正確な診断を可能にします。
色補正
「色補正」は、画像の色味や明るさを調整し、自然な色合いを実現する技術です。AIは、トレーニングで学んだカラーバランスなどをもとに、入力画像の色や明るさを分析し、適切に補正を行います。
色補正の代表的な応用例は、スマートフォンなどのカメラに搭載されている自動補正機能です。撮影時に暗くなりすぎた写真や色が不自然に見える画像を、AIが自動的に調整し、鮮やかで見やすい写真に仕上げます。
AI画像処理の活用事例3:画像生成
最後に、AI画像生成における活用事例を2つ紹介します。
指示に沿った画像の生成
AI画像生成によって、言葉での指示に沿った画像を生成可能です。たとえば「猫の写真」という指示を与えると、AIがトレーニングで得た猫の特徴をもとに、新たな画像データを出力します。
なお、画像生成AIの開発ではGAN(敵対的生成ネットワーク)と呼ばれる手法がポピュラーです。偽データを生成する「生成器」と、その真偽をチェックする「識別器」を競わせ、より精巧な画像の生成方法を模索させます。
AI画像生成の代表的な応用例は、広告業界におけるデザイン制作です。たとえば、緑茶ブランドで知られる伊藤園は、パッケージデザインに画像生成AIを使ったことで注目を集めました。
画像のスタイル変更
AI画像生成によって、アニメ風やアート風など、画像のスタイルを変更可能です。入力された画像と、AIが学んだ画像のスタイルを組み合わせることで、元の画像をまったく異なるタッチの新しい画像として出力します。
画像のスタイル変更は深層学習によって急速に進化しており、さまざまなツールが登場しています。たとえば「ACartist」を活用すると、AIの力で元の画像をアート風に変換することが可能です。
まとめ
今回は、AI(人工知能)による画像処理をテーマに、次の6点についてお伝えしました。
- AIによる画像処理とは
- 画像処理におすすめの無料AIツール
- AI画像処理を支える技術
- AI画像処理の仕組み
- AI画像処理の種類
- AI画像処理の活用事例(画像認識/画像補正/画像生成)
AIによる画像処理は発展を続けており、今まで不可能と思われていたことも徐々に可能となっています。製造や医療など、さまざまな分野でAI画像処理のソリューションを導入する企業が増えています。
独自のAI画像処理システムを開発するのはハードルが高いものの、無料ツールを活用することでも導入は可能です。今回の内容を参考に、ぜひAI画像処理を取り入れてみてください。
この記事の監修者
フルスタックエンジニア
音楽大学卒業後、15年間中高一貫進学校の音楽教師として勤務。40才のときからIT、WEB系の企業に勤務。livedoor(スーパーバイザー)、楽天株式会社(ディレクター)、アスキーソリューションズ(PM)などを経験。50歳の時より、専門学校でWEB・デザイン系の学科長として勤務の傍ら、副業としてフリーランス活動を開始。 2016年、株式会社SAMURAIのインストラクターを始め、その後フリーランスコースを創設。現在までに100名以上の指導を行い、未経験から活躍できるエンジニアを輩出している。また、フリーランスのノウハウを伝えるセミナーにも多数、登壇している。
本記事の解説内容に関する補足事項
本記事はプログラミングやWebデザインなど、100種類以上の教材を制作・提供する「侍テラコヤ」、4万5,000名以上の累計指導実績を持つプログラミングスクール「侍エンジニア」を運営する株式会社SAMURAIが制作しています。
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