こんにちは! 侍エンジニア編集部ライターのTAKUMAです。
最近様々なメディアで見かける「IoT(アイオーティー)」ですが、みなさんは具体的に説明することができますか?
IoTという言葉はなんとなく聞いたことがあるけど、具体的にどんな分野で活用されているのかは知らない。
IoTの具体的な仕組みはどうなっているの?
IoTにはどんな課題があるの?
などの疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。そうした方のために、今回の記事では、IoTの基本的な仕組み・活用事例・業界動向などを紹介していきます。
新しい技術についてしっかりとした知識があれば、今度の対応の仕方も変わってくるのでこの機会に是非ともIoTの活用事例やその意味について理解しておきましょう。
IoTとは?
IoT(アイオーティー)とは「Internet of Things」の略で、「モノのインターネット」とも呼ばれます。簡単に言うと、「物がインターネットに繋がっている状態」のことを言います。私たちの身の回りの「モノ」をインターネットに接続することによって、遠くにいながらにしてモノの状態を確認したり、動作を遠隔で操作したりすることができます。
それにより、もっと効率的にモノを操作することができるようになったり、人の手がいらなくなったり、より良いデータが収集できたりと様々なメリットを生み出します。また、IoTを活用することによって、「モノ」が「モノ」に対して直接指示を出すようにする「M to M(Machine to Machine)」が可能になり、生産性の向上や余計な人件費の削除などに役立っています。
このようにIoTには様々な可能性があり、今後未来の私たちの働き方や生活に大きく影響を与えるテクノロジーの一つとして期待されているのです。
IoTとITの違いは?
IoT(アイオーティー)とよく混同される言葉として、IT(アイティー)がありますが、この二つは似て非なるものです。ITとは、「Information Technology」の略で、パソコンやスマートフォン、インターネットなど、情報技術の総称を意味します。
つまり、「モノのインターネット」であるIoTは、ITというカテゴリーの一分野で、ITが進化したことによって可能になった技術の一つなのです。
IoTの市場規模は2022年には約12兆円
IoTの市場規模は2017年時点で5兆8160億円に達し、2022年には12兆円近くまで大きくなることが予想されています。特に、ソフトウェアやサービス関連の分野は著しく成長することが予想されているので、IoT用のアプリの開発や、システムのIoT化などが、今後ますます増加していくことでしょう。
現在でも、スマートホームやペットの見守りシステムなど、様々な分野で画期的なサービスや商品が次々に開発されています。
IoTを使ってできること
それでは、IoTを使って具体的にどんなことができるのでしょうか。
大まかに分類すると、IoTを活用することによって、以下の4つのことが可能になります。
- モノの状態を確認する
- モノを操作する
- モノの動きを検知する
- 機械同士がつながる (M to M)
それぞれの働きについて、実際の例を交えながら見ていきましょう。
IoTでモノの状態を確認する
モノにセンサーを取り付け、そのデータをインターネット上で送受信することによって、遠くにいながらモノの状態を確認することができます。例えば、植木鉢にIoTデバイスを取り付けておけば、土の状態をセンサーが感知して、水やりをする適切なタイミングを教えてくれます。
また、ペットの首輪にIoTデバイスを取り付けておけば、ペットの行動を把握することができ、留守中にちゃんとペットがご飯を食べたか、トイレをしているかなどが確認できます。さらに、ドアにIoTデバイスを取り付けておけば、ドアを長時間開けっぱなしにしていたり、鍵を閉め忘れたりした時に、アラートを受け取ることができるなど、防犯対策に活用することができます。
このIoTの利点を活用した最も身近な例は、自動販売機でしょう。今までは定期的に業者がペットボトルや缶の商品の補充を行なっていましたが、それだと早期に売り切れになった商品は次に業者が補充に来るまで待たなければ購入できませんでした。
しかし、IoTの導入により商品が品切れになると即時にそのデータが本部に届き、何がなくなっているのか確認してから補充に向かうことが可能になりました。そのため、より効率的に商品の補充を行うことができるようになり、コストやスタッフの労力などを軽減することができるようになりました。
IoTでモノを操作する
IoTを使えば、スマホなどのデバイスから、離れたところにあるモノを遠隔操作することができます。例えば、夏場に蒸し暑い部屋に帰りたくない場合は、電車の中から遠隔操作でエアコンをオンにして、部屋が涼しくなった時に帰る、なんて言うこともできます。
逆に、エアコンを付けっぱなしのまま家を出てきてしまった時は、職場にいながらにして、エアコンをオフにすることもできます。また、同じような方法で電気の消し忘れなども防ぐことができます。
IoTでモノの動きを検知する
IoTを使うと、モノの動きを検知して機械を動作させることもできます。センサーとIoT技術を組み合わせることで、重要な変化を見逃さないようにすることができます。
わかりやすい例としては、スマート照明が挙げられます。人がいないのに、電気がついていたらかなり電気代がもったいないですよね。
IoTを使えば、センサーが人の動きを検知したら自動的に電気をつけ、検知しなくなったら電気を消す、といったことが可能です。また、同じような機能を使えば、駅で公共交通機関を待っている人たちに、リアルタイムでバスや電車の運行状況や混雑情報を届けることもできます。
また、最近の車に搭載されている「衝突防止機能」もこれにあたります。車の前面部に搭載されたセンサーが、前の車や障害物を感知し、その情報を直接ブレーキを制御するシステムに伝えることで、人間がブレーキを踏まなくても、自動的に車を止めてくれます。
IoTで機械同士で繋がる(M to M)
センサーなどを搭載したモノ同士が直接インターネットで繋がることによって、人の手を借りなくても問題解決をしてくれるようになります。このように、直接モノ同士が繋がることを、MtoM(エムトゥーエム/マシーントゥマシーン)と呼びます。
わかりやすい例はスマート冷蔵庫です。すでにLGやシャープなどが実験的なモデルを出しているスマート冷蔵庫ですが、購入履歴に基づいて献立を提案する機能や、買い忘れ防止のアラート機能などを備えています。
将来的には、購入履歴と庫内の在庫情報に基づいて、ネットで自動的に注文を出してくれるようになることも予想されています。機械同士が連携して、自動的に必要な物を補充してくれるので、人間がわざわざ確認作業や発注作業をする必要はありません。
そうすると「朝起きてコーンフレークを食べようとしたら牛乳がなかった!」、「家に帰って晩酌をしようとしたら、ビールがなかった!」といったことも防ぐことができ、常に利用者にとって最適な状態が保たれるようになります。
IoTの仕組みと4つの要素
それでは、もう少し具体的にIoTの仕組みを見ていきましょう。
IoTが機能するためには、大きく分けて次の4つの要素が必要になります。
・モノ・デバイス
・センサー
・ネットワーク
・アプリケーション
モノ・デバイス
まずは、機能を持たせたい「モノ」そのものが必要です。一般生活の中であれば、車・照明・ドア・エアコン・ペットなどがこれにあたります。また、「スマートウォッチ」などのウェアラブルデバイスなどもここに相当します。
センサー
次に必要になるのが「センサー」です。
これによって、モノの状態を確認します。例えば、照明やエアコンがオンになっているかや、スマートウォッチを付けている人の脈拍などを感知するのがセンサーの役目です。
ネットワーク
その次に必要になるのが、WiFiなどの通信回線です。最近よく聞く「5G」などもこれにあたります。こうした通信回線を通して、モノからセンサーを通じて収集したデータを送信します。
アプリケーション
最後に必要になるのがアプリケーションです。モノから送られてきたデータを解析したり、人が見やすい形で表示したりするのが役目です。
スマホアプリや、パソコンで使えるソフトウェアのことだと思ってもらえれば大丈夫です。これを通してモノの状態を可視化したり、遠隔操作したりすることができるようになります。ここにAIが搭載することによって、より高度な解析や自動化を行うことができるようにもなります。
このように、これらの4つの要素が連携することによって、IoTは成り立っているのです。
IoTを使った分野ごとの活用事例
それでは、IoTは具体的にどのような分野で活用されているのでしょうか。
ここでは分野別にIoTの活用事例を見ていきましょう。
工業・工場
人手不足と人件費の上昇に伴って、現在「スマート工場」化がどんどん進んでいます。例えば、今までは人間が目視で確認していた機器の状態も、IoTを活用することで常にモニタリングすることができ、重大な問題が起こる前に対処することが可能になりました。
また、AIとIoTを組み合わせることによって、生産ラインの一部に問題が生じた場合でも、機械同士が連携して、自動的に効率的な生産方法をとるようなシステムも生まれています。これにより、安全かつ高品質の製品を作ることができ、また24時間稼働し続けることも可能になります。価格や生産スピードの向上が常にが求められる工業分野では、こうしたIoTを活用したシステムの導入が加速しています。
農林水
農業とIoTの事業は日本でも行われている取り組みの一つです。
従来であれば農家さんの長年の経験からくる勘や毎日畑を訪れて状態をみて判断することが多かったですが、IoTの導入によりすべてデータで判断し管理することが可能となってきています。これを「スマート農業」といったりもします。
まだまだ、取り組みとしては浅いですが今後はますますIoT事業の農業分野に対する取り組みは加速して行くと見られています。
その背景には、後継者不足や高齢化問題等の影響があり年々農業者が減少傾向にあるからだと言われていますね。実際にケニアではスタートアップ企業がソーラシステムとセンサーを駆使して、ハウス内の気温の管理や水量の管理など全てIoTで行なっている事例もあります。
地域ビジネス
IoTと地域ビジネスは今では様々な事例がありますが、その中でも「観光」に特に力を入れている市町村が多く特にユニークなのがIoTとビーコンを活用した「観光情報配信」ですね。
自分が気になる観光地へ行くと、現地に配置されているビーコンが反応して、自動的にご自身のスマホにその場所の観光情報を配信してくれると行った仕組みです。
自分で調べたりする必要もないので、とても楽な上に無駄な観光情報の提示などもしなくても全てネット上で完結することができます。この取り組みは「日光市」で実際に行われているので、お近くの方は実際に訪れてみてください。
防災
従来であれば災害が起きた時は人の手よって観測され、避難が必要な場合は注意喚起が行われていました。しかし、IoTの導入により全て現地に設置してある観測機が危険を察知し、危険値であれば瞬時に教えてくれるようになりました。
また、話題になった「Jアラート(全国瞬時警報システム)」もIoTによる衛星からの観測データを元に、緊急速報を瞬時に私たちへ配信することができるようになっています。
医療・介護・健康
医療においても様々な現場でIoTの導入が行われています。
代表的なのは救急患者の受け入れに関するIoTの導入でしょうか。今まで救急患者の受け入れに対して、いくつもの病院をはしごするような状態が何度も行われていたのですが、IoTの導入により最短で受け入れが可能な近くの病院の割り出しができるようになりました。
それもこれも全ての救急車にIoTが導入されたことで、病院とのデータのやりとりが可能となり全ての情報がクラウド管理できるようになったからです。そういった一分一秒を争う医療の現場においても、IoTという技術は大いに活躍しているのです。
IoTの今後の課題とは?
IoTは便利でとても画期的な技術である反面、とても課題の多い技術でもあります。IoTの今後の課題について以下から一つ一つみて行きましょう。
人的ミス(ヒューマンエラー)による事故
IoTにおける細かな「もの」の動作設定は大概は人の手によって行われます。
例を挙げると自動車などがよい例で、自動運転車には必ず動作設定が予め人によって行われます。この動作設定がもし間違っていた場合、プログラムがその通りに動作してしまうと大事故になりかねません。
実際に過去に自動ブレーキの設定をし忘れて、自動車が止まらなかった事件が起きています。そういった人的ミスはしっかりとダブルチェックするなりして、絶対に起きないようにするための対策が必要となります。
IoTにおける電力供給不足
2020年には500億個のIoTデバイスが利用されると予想されており、それぞれがインターネットに繋がっているので大量の電力が必要となります。そうなるとただでさえエネルギー不足と嘆いている日本には、大きな課題となります。
この課題をクリアするためにも、新しいエネルギーの開発やそれを補うエネルギーを補充しなければなりません。ただでさえ、東日本大震災の影響で原子力発電の継続的な稼働も危うい状況なのに、これ以上エネルギー不足になると本当に新しい技術導入さえ危ぶまれます。IoTの普及と合わせて、新しいエネルギー供給源の開発も同時に行っていく必要があります。
セキュリティ
みなさんは「総務省がIoT機器に潜入調査する」というニュースを聞いたことがあるでしょうか。一時社会を騒然とさせましたが、これは「IoTの脆弱性をチェックするための抜き打ち検査」を国が行う可能性がある、という内容でした。
IoTは便利である一方、インターネットにつながっている以上、常に犯罪と隣り合わせでもあります。自分のIoTシステムを乗っ取られて、家の情報が筒抜けになってしまったり、鍵を開けられてしまったりといったこともないことはありません。
情報の暗号化や定期的なソフトウェアのアップデートなどにより、そうした事態を防ぐ必要がありますが、あらゆるものがインターネットにつながった場合、その対応が追いつくのかということが懸念されています。
エンジニア不足
最後の課題は、IT人材(エンジニア)の不足です。
経済産業省の調査によると、2030年には日本のIT人材は約80万人不足すると言われており、IoT技術の導入においてもかなりの打撃となります。
どれだけシステムが優れていてもそれを導入したり、メンテナンスしたりする技術者がいないと話になりません。このような現状からそれぞれの企業では人材の取り合いとなっており、エンジニアのニーズは益々右肩上りとなっています。
エンジニアの今後の将来性やなり方については以下の記事で詳しくご紹介してますので、是非と参考にしてみてください。
IoTは今後学ぶべきなのか?
先ほども述べたように、これからIoTはどんどん私たちの生活の中に浸透していくことが予想されます。その中でエンジニア不足も深刻です。そのため、IoTの開発スキルなどを持っていると、今後需要の増加により、年収アップなども見込むことができます。
また、開発のスキルがなくても、今後IoTを前提としてサービスが作られるようになる可能性もあるので、IoTの仕組みを知っておくだけでも、大きなメリットとなるでしょう。
IoTについて知りたい人向けの書籍
IoTについてもっと学びたい場合は、まずIoTの詳しい仕組みや活用事例について勉強してみるといいでしょう。ここでは、オススメの書籍を三冊紹介します。
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専門的な用語が多く用いられているので、初心者には難しいかもしれませんが、これからIoTによって社会がどう変革していくのか、私たちはどのような発想でその変化に対応していけばいいのかがわかり、IoTについての理解を深めることができます。
まとめ
今回はIoTの仕組みや活用事例について解説していきました。
簡単にまとめると、IoTとは、「モノのインターネット」と呼ばれ、モノをインターネットにつなげることで、遠隔操作や的確なモニタリング、また機械同士の自律制御が可能になる技術を指します。
そのためには、デバイス・センサー・ネットワーク・アプリケーションなどが必要になり、これらがつながることで、IoTのシステムが作られます。現在IoTの市場は拡大中であり、2022年には12兆円近くになるなど、大きな成長が見込まれています。
その中で、セキュリティ対策や電力不足などの問題の他に、大幅なエンジニア不足と言う問題も浮上してきています。
こうした状況を背景に、IoTエンジニアへの需要はかなり拡大していますので、もしこの記事を読んでIoTに興味を持った人は、ぜひIoTについて学んでみることをお勧めします。IoTに必要な言語を知りたい方は、以下の記事も参考にしてみてください。