応用情報技術者試験とは? IT業界で上を目指すなら取得したい資格を紹介

応用情報技術者試験ってどんな資格? 持っているメリットは?
基本情報技術者試験とどこが違うの?
難易度はどれくらいなの?

こんにちは。文系出身で現役エンジニアの佐藤です。

みなさんは「応用情報技術者試験」という資格試験をご存知ですか?IT企業にお勤めの方はご存知かもしれませんね、そうではない方にとってはどんな資格なのかいまいちわからないなと感じている方もいらっしゃるかもしれません。

興味を持って「応用情報技術者試験とは何か?」と調べようとしている方に向けて、この記事では資格の概要と取得するメリットを解説していきます。

また、独学で取得を目指そうとお考えの方に向けて、学習法やおすすめの書籍を紹介していきますのでぜひ最後までご覧ください。IT業界で上を目指したいなら取得しておきたい資格がどのようなものなのか、さっそく見ていきましょう。

目次

応用情報技術者試験とは?

この章では応用情報技術者試験の概要を解説していきます。まずはどんな試験なのか把握しましょう。

ワンランク上のITエンジニアであることを証明する資格

応用情報技術者試験は情報処理技術者試験の一区分である国家試験です。受験に条件はありません、誰でも受験することが出来ます。

引用元:IPA 情報処理推進機構 情報処理技術者試験 試験要綱

情報処理技術者試験という枠組みには他にも高度な専門的知識に関する資格(データベーススペシャリストなど、ピンク色の部分)もありますが、応用情報技術者試験はその中でも基本情報技術者試験の上位に位置する資格です。

ITエンジニアの登竜門といわれる基本情報技術者試験と違い、応用情報技術者試験はITエンジニアとしてワンランク上を目指したい人の為の資格になっています。

統計資料には応用情報技術者試験を受験した人の平均年齢は20代後半とあるので、大体の人が社会人として数年キャリアを積んでから試験に臨んでいるということが分かります。

この資格を持っていれば、社内での評価、提案の説得力は増すでしょう。また、この資格の難易度を知っている相手からの信頼度はぐんと上がります。メリットについては後述しますが、スペシャリスト系の試験の一部免除、会社によっては手当の対象になることもあります。

ITエンジニアとしてキャリアを積み、この先ワンランク上のエンジニアになりたいと考えているなら資格取得に挑戦することをおすすめします。取得すれば絶対損はない資格ですが、気になるのは難易度ですよね。次に難易度について解説していきます。

記述問題もあり合格は狭き門

画像:Shutterstock

応用情報技術者試験は、合格率だけ見ると大体20%くらいと基本情報技術者試験とそこまで変わらない率になっています。

平成30年度秋の結果を見てみましょう。

応募者数受験者数合格者合格率合格者平均年齢
52,21933,9327,94823.4%29.2

参照元:IPA 情報処理推進機構プレス発表

合格率は基本情報技術者試験と同じですが、受かりやすさは全く異なります。数年キャリアを積んだエンジニアですら4人に一人の合格率ということなんです。

応募者数と受験者数の違いにも注目です、応募したけど何らかの理由で受験しなかった人が2万人ほどいます。その中には途中で挫折したという人もいるでしょう。それだけ難しい内容の試験になっているということです。

難しさの理由は、午後の試験は「記述式の問題」だからです。基本情報技術者試験までは4択問題しかありませんでした。応用情報技術者試験からは午後の試験は記述式、つまり自分の言葉で解答する試験です。


参照元:IPA 情報処理推進機構31年度春季 過去問

4択であれば、もし分からない問題でもなんとか正解することができるかもしれません。でも、記述式はそうはいきませんよね。しっかりと自分の中で理解できていないと自分の言葉で解答することができない、という点が難易度をあげています。

しかしながら、基本情報技術者試験の午後試験にあったプログラミングについての問題を応用情報技術者試験では分野の選択次第では回避することができます。文系出身という方も、対策をしっかりすれば合格できる可能性は大いにある資格になっています。

次に、どんなジャンルの問題が出るのか確認しましょう。

試験内容・受験料

ここでは試験の内容について詳しく見ていきます。

午前の問題内容

午前の問題は基本情報技術者試験と変わらず4択問題になっています。問題ジャンルは同じく大きく3つですが、範囲はさらに広がっています。

  • テクノロジ系

ハードウェアからプログラミング・アルゴリズムなど、IT技術に関する非常に幅広い知識が問われます。ここでは計算問題も出題されることがあります。

  • マネジメント系

プロジェクトマネジメント、サービスマネジメント、システム監査などの問題が出題されます。

  • ストラテジ系

企業活動や法務、システム戦略、企画などに関する問題が出題されます。

詳しい出題範囲については公式のシラバスを確認しましょう。シラバスは更新されることもあるので、試験勉強の前にはチェックを忘れずに!

午後の問題内容

午後は先ほども紹介したように記述式問題になっています。全て解答するわけではなく、解答する問題を4つ選択する方式です。この中で「情報セキュリティに関すること」は必須問題になっています。

内容まで記載すると非常に長くなってしまうので、大きな項目だけ紹介しています。詳細は公式の試験要綱を確認しましょう。

  • 経営戦略に関すること
  • 情報戦略に関すること
  • 戦略立案・コンサルティングの技法に関すること
  • システムアーキテクチャに関すること
  • IT サービスマネジメントに関すること
  • プロジェクトマネジメントに関すること
  • ネットワークに関すること
  • データベースに関すること
  • 組込みシステム開発に関すること
  • 情報システム開発に関すること
  • プログラミングに関すること
  • 情報セキュリティに関すること(必須解答問題)
  • システム監査に関すること


これだけ見ても非常に範囲が広いですよね。試験勉強の前にどの分野を解答するのか選択して、絞って学習することが大切です。

合格点について

応用情報技術者試験も午前100点満点、午後100点満点で採点されます。合格するには午前で60点以上、午後でも60点以上取る必要があります。

どちらかを捨てよう、ということはできないようになっているので午前、午後まんべんなく学習しましょう。

試験の方法について

試験の方法については基本情報技術者試験と変わりません

試験は申し込み時に選択した地域の中にある試験会場で行います。試験の当月頃に届く受験票に受験会場が記載されていますので、会場については必ずチェックしましょう。

会場では、いわゆるマークシートで解答していきます。必ず鉛筆と鉛筆削り、消しゴムは持っていきましょう。マークシートの段ずれなどにも注意が必要です。

生年月日や受験番号のマーク漏れにも必ず注意します、マークが漏れていると一切採点されないという悲しいことになってしまいます……気を付けてくださいね!

受験料について

受験料は5,700円になっています。払い戻し等は出来ないので、体調管理等には気を付けて試験まで過ごしましょう。

試験の時間・実施時期

画像:Shutterstock

試験の時間や実施時期についてここでは解説していきます。

試験時間について

応用情報技術者試験も午前の試験と午後の試験に分かれて実施されます。午前午後ともに150分間の試験なので、合計で5時間(300分)の試験時間です。

基本情報技術者試験をパスした方なら、長時間の試験にも慣れたかもしれませんが午後は記述式なので、150分でも短いと感じることもあります。学習段階で時間を意識して学習して。時間に慣れておきましょう。

実施時期について

こちらも基本情報技術者試験と変わらず年に2回、春と秋に実施されます。大体毎年4月の第3日曜日と10月の第3日曜日に試験が行われているようです。

秋の試験は7月頃から、春の試験であれば1月頃から申し込みが出来ますので公式の案内ページをチェックしておきましょう。

もちろん、インターネットからも申し込みができます。以上で応用情報技術者試験についての概要解説は終了です。どんな試験なのか把握することが出来たでしょうか?

次は、応用情報技術者試験と基本情報技術者試験、他のスペシャリスト系の試験のどちらを先に受けるか悩んでいる、という方に向けての解説です。

基本情報技術者試験と応用情報技術者試験

基本情報技術者試験は「IT技術を提供する側」なら取っておきたい基礎的な資格で、ITエンジニアとしてのキャリアを始める時に取得する資格といわれています。

この基本情報技術者試験を飛ばして、応用情報技術者試験を受けようか悩んでいるという方の声をよく耳にします。もしあなたが、キャリアの長いエンジニアであれば基本情報技術者試験をスキップして応用情報技術者試験を受験しても良いかもしれません。

逆にキャリアをまだ積んでいない、初心者であるという方は、遠回りに感じるかもしれませんが基本情報技術者試験からの取得をお勧めしています。基礎的な知識がつく前に、暗記だけで応用情報技術者試験に臨んでもこの先の業務に生かし切れません。記述式問題も非常に難しいと感じるでしょう。

今後のキャリアを考えるなら、バランスよく知識量を増やせるよう基本情報技術者試験を受験しましょう。基本情報技術者試験についてはこちらの記事で詳しく解説しています。

応用情報技術者試験の過去問を解いてみて余裕で解ける問題が多いならば、基本情報技術者試験をスキップして応用情報技術者試験を受験してみましょう。

応用情報技術者試験とスペシャリスト系試験

先程と同じように応用情報技術者試験をスキップしてスペシャリスト系の試験を受けても良いか悩んでいる、という方の声も耳にします。

こちらも、バランスの良い知識の育成を考えるなら応用情報技術者試験から取得するべきです。さらに、応用情報技術者試験に合格していればスペシャリスト系の午前試験の一部免除を受けることが出来ます。

自分のキャリアの為になる知識を付けることが出来る上に、午前試験の一部免除を受けることが出来ると考えたらメリットしかありませんよね。

こちらも遠回りと感じるかもしれませんが、応用情報技術者試験からの取得をお勧めします。

次に取得のメリットについて詳しく見ていきましょう。

応用情報技術者試験取得のメリットとは

画像:Shutterstock

応用情報技術者試験を取得できれば、自信を思って自分の知識の証明が出来ます。取得の過程で、知識をより深めることが出来るのもメリットでしょう。それ以外にもさまざまなメリットがあります。

基本情報技術者試験より大きなアピールポイントになる

応用情報技術者試験を取得していれば、就職・転職の際の大きなアピールポイントとなるでしょう。学生で取得できれば、企業の目に留まる可能性はぐんとあがります。

基本情報技術者試験は、ITエンジニアの転職にはそこまで有利に働くことはありませんでしたが、応用情報技術者試験なら別です。一定以上の知識を持った人と評価を受けることができますよ。

また、応用情報技術者試験は企業だけではなく省庁、官公庁などの公務員系の職種でも高い評価を受けています。教員系でも通用する資格になっているので自分のキャリアを広げるというメリットもあります。

高度試験の午前試験の一部免除

先程も紹介しましたが、スペシャリスト系の試験の午前試験一部免除を受けることができます。さらに先の資格取得を目指している人にとっては、知識を付けれる上に試験も免除されるのでメリットですよね。

企業によっては手当や報奨金の対象

企業によっては取得状況により一時金を支給してくれたり、手当として恒久的に給与に反映されるという制度を採用しているところもあるようです。

社内外の信用を得られる他、企業側もメリットも多いので意欲的に資格取得に取り組んでほしいということなんですね。

国家試験の一部免除を受けることが出来る

実は応用情報技術者試験を取得していると、次の国家試験の一部免除も受けることが出来るんです。

  • 中小企業診断士試験
  • 弁理士試験
  • 技術士試験


こちらも自分のキャリア選択の幅を広げる良いメリットですよね。

以上が取得のメリットになります。

ここまで紹介してきて、取得を検討し始めた方も多いかと思います。次からは独学での取得を目指すという方に向けて学習方法について紹介していきます。

独学で取得を目指す人へ

この章では独学で取得を考えている方へ参考になる情報をお届けします。こちらで紹介する方法を参考に自分に合った勉強を確立してみてください!

まずは過去問を解いてみる

ITパスポート、基本情報技術者試験を独学で取得してきた人なら当然かもしれませんが、まずは過去問を解いてみましょう。過去問を解くことで、自分のレベルが把握できます。そのうえで、学習箇所を絞ったり午後試験の分野選択を行いましょう。

過去問は公式サイトで公開されていますので、自由に解くことができます。

午前試験の学習はいつも通りに

ITパスポート、基本情報技術者試験を取得出来た人なら4択問題の学習は慣れていると思いますので、これまで通り自分に合った方法で午前試験の勉強をしましょう。

初めて学習する、という方は次を意識して学習することをお勧めします。

  • 同じ過去問・問題集を繰り返し解き、解説を確認して理解する。
  • 同じ教科書を繰り返し読み、内容を理解する

一冊読み終わった、解き終わったからといって新しい書籍を購入するのはおすすめしません。

購入した教科書一冊、問題集一冊を何度も読み込み、しっかり知識を身に付けることを意識して学習に取り組みましょう。本を読み終わることが目標になってしまわないようにしましょう。

午後試験の対策をする

午後試験は記述式の選択問題のため、事前から対策が必要です。

まず分野の選択をする

過去問や問題集を解いてみた印象で分野を決定する人が多いようです。何回か、過去問か問題集の午後問題をすべて解いてみましょう。解いてみて、行けそうだと感じたものの学習を進めていきます。当日、選択を予定していた分野の問題が難しく解答が厳しいという時のために、4つではなく5~6つ選んで学習しておく事をお勧めします。

もし、プログラミングに関する問題が苦手なら徹底的に避けて選択しましょう。データベースに関する問題は、比較的難易度が低いと言われているのでこちらを選択するもの手かもしれません。

また、システム監査を選択するのも暗記事項が少なくお勧めです。セキュリティに関する問題は必須解答なので学習を忘れないように注意です。

実際に書いて練習しよう

最初は問題に慣れる必要があります。実際に紙に書いて解答してみましょう。

頭で解答を考える、PCに打ち込むより書くのは意外と時間のかかるものです。当日は150分の試験なので、時間を意識して書ききれるかという練習をする必要があります。

セキュリティに関する情報を熟読する

セキュリティに関する問題では、公式に記載のあるセキュリティ情報、10大脅威のページからの出題があります。こちらも忘れずに熟読しておきましょう。

システム監査を選択するなら

システム監査を選択しようと決めた方は、経済産業省の「新「システム監査基準」、「システム管理基準」」の内容が出題されます。そこまで長くはないので、こちらも合わせて確認しておきましょう。

おすすめの参考書

自分のレベルが把握でき、午後試験の選択問題を決定したら書籍を購入しましょう。

基本的に、基本情報技術者試験を取得した時に自分に合っていると感じた書籍の応用情報技術者試験版(最新)を購入すれば間違いないですが、おすすめを数冊ご紹介します。

やっぱり文字はたくさん読みたくない人へ

キタミ式イラストIT塾 応用情報技術者

定番の一冊です。ITパスポート、基本情報技術者試験版をお持ちの方も多いのではないでしょうか。

イラストが多く、解説が丁寧なため文字をたくさん読んで暗記するという苦痛を感じにくくなっています。単に用語の暗記だけではなく仕組みを理解させてくれるという点もおすすめするポイントのひとつです。

ただ、こちらも午前の試験の出題範囲ごく一部がカバーできていません。残りは自分で別の本から学習するか、インターネットでの学習を行いましょう。

解答解説を補完する辞書的な使い方をしたい人へ

平成31年【春期】/01年【秋期】応用情報技術者 合格教本

圧倒的な情報量で疑問を残さないように書かれている書籍になります。

一から読み暗記していくような使い方には向いていませんが、過去問・問題集を解いた後の解説で分からない部分があるときに役に立ちます。分からないところだけを読み、理解を深めていくことができる良本です。

午後試験の対策を重点的に行いたい人へ

応用情報技術者 午後問題の重点対策 (午後問題対策シリーズ) | Amazon

午後試験にだけ絞った参考書、問題集です。解説も分かりやすく、午後試験の対策にはぴったりの一冊になっています。また、すべての分野に対応しているので一冊で完結する点もおすすめポイントのひとつです。

おすすめ学習サイト

応用情報技術者試験でも学習サイトを利用して問題をたくさん解いていきましょう。

応用情報技術者過去問道場
https://www.ap-siken.com/apkakomon.php

おなじみの過去問道場です、過去問を大量に解くことができます。

年度別・ランダム・ジャンル別出題など苦手な分野の過去問を重点的に解いてみるということも可能です。スマホでも見ることが出来るので、移動中などにおすすめです。

まとめ

ワンランク上のITエンジニアであることを証明する「応用情報技術者試験」について解説しました。難しい試験ではありますが、学習すれば必ず取得できる資格です。自分のキャリアの為にぜひ、受験を検討してみてはいかがでしょうか?

合格を目指している方は、自分に合った学習方法で合格を勝ち取りましょう。それでは次の解説で!

応用情報技術者試験とは?

応用情報技術者試験は情報処理技術者試験の一区分である国家試験であり、基本情報技術者試験の上位に位置する資格です。

応用情報技術者試験の出題内容は?

ハードウェア・プログラミング・アルゴリズムなどのIT技術や、企業活動・法務・システム戦略のほか、プロジェクトマネジメント・サービスマネジメント・システム監査など幅広い知識が問われます。

応用情報技術者試験取得のメリットは?

応用情報技術者試験取得のメリットとして、ITエンジニアの転職が有利になる、スペシャリスト系の試験の午前試験一部や国家試験の一部免除を受けることができる、企業によっては手当や報奨金の対象となる、といった点が挙げられます。

この記事を書いた人

【プロフィール】
DX認定取得事業者に選定されている株式会社SAMURAIのマーケティング・コミュニケーション部が運営。「質の高いIT教育を、すべての人に」をミッションに、IT・プログラミングを学び始めた初学者の方に向け記事を執筆。
累計指導者数4万5,000名以上のプログラミングスクール「侍エンジニア」、累計登録者数1万8,000人以上のオンライン学習サービス「侍テラコヤ」で扱う教材開発のノウハウ、2013年の創業から運営で得た知見に基づき、記事の執筆だけでなく編集・監修も担当しています。
【専門分野】
IT/Web開発/AI・ロボット開発/インフラ開発/ゲーム開発/AI/Webデザイン

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