「フルスタックエンジニア」という言葉を聞いたことはありますか。
フルスタックエンジニアとは、多くの技術を持つエンジニアや固定的な技術の専門家ではなく、システム開発でスペシャリストとして幅広く力を発揮できる人という意味です。
本記事では、フルスタックエンジニアとは何か、必要なスキル6つや平均年収などについてなど紹介していきます。フルスタックエンジニアに興味がある方はぜひ参考にしてみてください。
フルスタックエンジニアとは?
明確な定義はありませんが、開発するシステムに必要な複数の分野に跨って担当やサポートできるエンジニアを「フルスタックエンジニア」や「マルチエンジニア」と呼ぶことがあります。
フルスタックエンジニアがほかのエンジニアとどう違うのか、またフルスタックエンジニアが必要とされる理由を見ていきましょう。
フルスタックエンジニアはほかのエンジニアと何が違う?
フルスタックエンジニアはほかのエンジニアと異なり、開発で携わる分野が幅広いのが特徴です。
一般的にフロントエンドエンジニアはフロントエンド開発のみ、バックエンドエンジニアはバックエンド開発のみ、といった具合に、エンジニアの職種によって担当する分野が限られていることが多いです。
一方「フルスタックエンジニア」は、フロントエンドのブラウザ側の処理からWebアプリケーション、データベース、Webサーバー、OSなども含めたバックエンドのサーバー側の処理まで担当したり、サポートしたりします。
フルスタックエンジニアが必要とされる理由
従来の業務システム開発は、顧客の要求事項、コストや納期などが定められ、ウォーターフォール型開発で工程ごとに進行していくことが多いです。
このときそれぞれの作業が分業制になり、その分野の専門性を高め、また多くの経験を有する職人的エンジニアの存在が重要になります。プロジェクトの規模が大きくなればなるほどその傾向は高まるでしょう。
一方、段階的にサービスをリリースし検証を経て改善していくWebサービスの開発では、プロジェクト立ち上げ時には流動的な要件も多く、ウォーターフォール型開発が適していません。
そこで、アジャイル型開発などでスピーディーに改善サイクルをまわしていくためには、Webシステムの開発から運用まで、関係する言語、ソフトウェア、サーバやネットワークに対する知識やスキルで柔軟に対応できるフルスタックエンジニアの存在が重要になります。
フルスタックエンジニアの需要・将来性・年収とは?
企業から必要とされるフルスタックエンジニア。しかしその需要が実際どれほどあるのか、イメージできない方は多いかもしれません。
また、次々と新技術が登場し入れ替わりが激しいIT業界で、フルスタックエンジニアの将来性や実際の年収について、不安を感じる人も少なくないでしょう。
ここからは、フルスタックエンジニアの市場価値や将来性、年収について解説します。
フルスタックエンジニアの市場価値
特に、転職市場におけるフルスタックエンジニアの価値は高くなっています。
日本には「器用貧乏」という言葉があります。何でも器用にこなす反面、これといった特技や専門性を持たないために、特定の分野で大成できない…という意味で使われます。
フルスタックエンジニアに対してもこうした「器用貧乏」という批判があり、「フルスタックエンジニアなんていらない」といわれることもあるようです。
しかし日本国内では求人が増えていることからも、企業側には確かな需要が存在していると考えられます。ことに少数精鋭のベンチャーや、業界に新規参入するスタートアップなどでは、短期間にサービスを立ち上げなくてはならない上、投下できるコストが潤沢ではないことが多いもの。
そうした環境では、フルスタックエンジニアは実に頼りになる存在です。この傾向は今後も続くものと見られます。
フルスタックエンジニアの平均年収
フルスタックエンジニアと一言でいっても年収には個人差があります。
「IT関連産業の給与等に関する実態調査結果」を見ると、エンジニア・プログラマの平均年収は592.2万円で日本人の平均年収より高くなっています。
フルスタックエンジニアとして開発の広範囲にかかわったり、作業時間が増加したりする場合、さらに高年収が期待できるでしょう。スキルによっては、年収1,000万円の大台に乗せることも決して不可能ではありません。
フリーランスのフルスタックエンジニアの需要は?
フリーランスのフルスタックエンジニアとして活躍することも可能です。
正規雇用という安定性はなくなるものの、月単価にして60万円から80万円以上と、さらなる高収入が期待できます。
ただし、フルスタックエンジニアに限ったことではありませんが、フリーランスとして継続的に収入を得るには実績やコネクション、営業活動が必要です。
フルスタックエンジニアの仕事内容とは?
「フルスタックエンジニア」と呼ばれるには、開発するシステムに関係する幅広いスキルや知識が必要でしょう。
では、具体的にどのような作業を行うのでしょうか? 一つひとつの工程とその内容を、簡単にご紹介しましょう。
要件定義
本来要件定義とは、顧客が要求することを要件としてまとめる工程です。一般的には、事業者が支援しながら進められることが多いです。
一方段階的なサービス開発では、最終的に目指す姿がありながら、各サイクルで発生した改善点などを要件化する必要もあります。
これには機能の追加だけでなく、応答時間を早めるなどの性能の話もあるでしょう。そのときはサーバーの台数追加やロードバランサーの導入などのインフラ構成やデータベースのインデックス設計の見直しまでも検討されることがあります。
そのためにも個々のプログラムの機能、さらにネットワークやデータベースについてなど、広範囲な知識が求められます。
設計
アジャイル開発では、重厚な設計図書を作成する代わりにチケットでタスク管理しながら実装を進め、必要なドキュメントを別途まとめていくこともあります。
このとき、各タスクの整合性や抜け漏れがないかを確認しながら、全体の進ちょくを管理することが重要になります。
実装
実装とは、コードを書いてプログラムを作成し、それぞれを組み合わせてシステムを構築していく作業です。
まず個々のパーツを作って、それらを組み立てて全体を仕上げる…という工程です。
フロントエンド・バックエンド開発
ユーザーが直接目にし、操作する画面を作っていく作業です。デザイナーが作成したデザインをもとに、入力エリアやボタン、メッセージやアラートなどを表示する仕組みなどを作成します。
バックエンド開発とは、フロントエンドとは対照的に、ユーザーの目には触れない領域を組み立てていく工程です。ユーザーの入力に応じて、データベースから情報を呼び出したり書き込んだりといった、舞台裏の仕組みを構築します。
テスト
「テスト」はプログラマーが作成した成果物(=プログラム)に対して、仕様や設計通りに作られているか確かめる工程です。
プログラム単体で行う単体テスト、複数のプログラムを組み合わせて行う結合テスト、全体の動きを確認するシステムテストと、3段階で行われます。
リリース
テストで問題がなければ、システムのリリースとなります。リリースした後でも、エンジニアの仕事が完了したわけではありません。
リリース後に不具合が発生した場合にも、備えておく必要があります。
この段階で起こる不具合やトラブルはさまざまですが、フルスタックエンジニアが担当していれば、テスト段階と同様に早期の修復や改善を図ることができます。
フルスタックエンジニアに必要な6つのスキルとは?
フルスタックエンジニアとして活躍するために必要なスキルは、下記の6つです。
- 1.上流工程のスキル
- 2.プログラミングスキル
- 3.OSのスキル
- 4.ミドルウェアのスキル
- 5.クラウドサービスのスキル
- 6.セキュリティのスキル
それぞれ、どのようなシーンで求められるのかを解説します。
1.上流工程のスキル
フルスタックエンジニアには、要件に基づいた設計や選定を行う上流工程のスキルが必要です。
また、プロジェクトリーダーとしての役割を求められることもありますから、エンジニアとしての知識や技術に加え、ステークホルダーとのコミュニケーションスキルも必要です。
2.プログラミングスキル
フルスタックエンジニアには、プログラミングスキルも必要です。
JavaScript、PHP、Ruby、Pythonなど、開発するシステムに使われている言語のスキルを習得する必要があります。複数の言語のプログラミングスキルを習得すれば、フルスタックエンジニアとしての市場価値を高めることに繋がります。
3.OSのスキル
フルスタックエンジニアには、システムが稼働するサーバーのOS(オペレーティングシステム)を設定などするスキルも必要です。
OSとはWindows、Linux、iOS、Androidなど、パソコンやスマートフォンを動かすための基本となるソフトウェアのことです。
4.ミドルウェアのスキル
フルスタックエンジニアとして仕事する上では、Webサーバー、アプリケーションサーバー、データベースサーバーなどのミドルウェアのスキルも必要です。
5.クラウドサービスのスキル
AmazonのAWSやMicrosoftのAzureなどのクラウドサービスについてのスキルは、フルスタックエンジニアの仕事でも必要性が高まっています。
クラウドサービスは今後ますます普及すると予測され、スキルがあればフルスタックエンジニアとしての市場価値も高まるでしょう。
6.セキュリティマネジメントのスキル
セキュリティマネジメントのスキルはフルスタックエンジニアにも必要なものです。セキュリティマネジメントとはコンピューターの情報を安全に守るスキルのことです。
未経験からフルスタックエンジニアになるには?転職成功ロードマップ
あらゆる場面で活躍でき、高収入も望めるフルスタックエンジニア。
もちろんそこに至る道は険しく、それだけに「自分には無理だ……」と感じてしまうかもしれません。
しかし適切な手順を一つひとつ踏み続けることで、簡単ではありませんが、フルスタックエンジニアになるというキャリアの実現は可能です。
まずは1つのプログラミング言語を究める
未経験から始めるなら、エンジニアとして一人前になることが第一です。まずプログラミング言語をひとつ選び、徹底的に勉強して自分のものにしましょう。
最初に、エンジニアとしての得意分野を作ることが重要です。それができたら、ほかの言語を学ぶのがおすすめです。
プログラミング言語にはいくつもの種類があります。習得の易しいものなら独学も良いのですが、そうでないものはスクールに通って習得するといいでしょう。
案件をこなして実績を積む
フルスタックエンジニアになるには、実績が必要です。
求人サイトを利用して案件をこなしたり、企業に属してプロジェクトに参加したり、エンジニアとしての経験を積みましょう。
次のスキルを身につける
自分の裁量で案件をこなせるようになってきたら、次の言語を習得しましょう。
JavaScriptを使ったフロント開発は難なくこなせるようになってきたので、次はPHPを使ったバックエンド開発のスキル、その次はデータベースのスキル、といった具合に一つずつ挑戦してください。
フルスタックエンジニアを目指す前に知っておくべきこととは?
フルスタックエンジニアになるのは、決して簡単ではありません。またフルスタックエンジニアとして仕事をしていくうえでも、注意すべきことはいくつかあります。
注意点は下記の2つです。
- 学習コストがかかる
- 年収が労働量に比例しない場合がある
ひとつずつ解説します。
学習コストがかかる
フルスタックエンジニアとして仕事をしていくうえでは、新しいスキルや知識を習得するために、時間や費用といった一定の学習コストが必要なことを覚えておきましょう。
年収が労働量に比例しない場合がある
次の注意点として、フルスタックエンジニアは年収が労働量に比例しない場合があります。
これは、「なぜフルスタックエンジニアが求められているか」という点に関連します。スタートアップやベンチャーのように低コストでスピーディな開発を目指した場合、結果として作業量と収入のバランスが悪くなる可能性があります。
そうした環境を許容するかどうかは、人それぞれでしょう。しかし仕事の量や品質に見合った収入を得たいと考えるのは、当然のことです。
どんな仕事でも、そこに何らかの無理があれば長く続けることはできません。「これは厳しいな」と感じたら、企業側に交渉し、場合によっては転職を考えるのも良いかもしれません。
日本の未来を支えるフルスタックエンジニアを目指そう!
日々コードを書き続けるエンジニアにとって、フルスタックエンジニアはまさにスーパーマンのような存在でしょう。
しかしそれは、決して手の届かないものではありません。実際に、フルスタックエンジニアとして仕事をしている人たちも、最初は誰もが未経験者だったのです。
ですからまずは、プログラミング言語をひとつ習得することです。それができたら、別の言語を……という具合に守備範囲を広げていきましょう。
そしてこれまでエンジニアとして手がけることのなかった、新たな領域にもチャレンジしてください。そうした努力の先に、フルスタックエンジニアとしてのあなたが待っているのです。
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この記事のおさらい
一部では「いらない」とまで言われるフルスタックエンジニアですが、企業側の需要は確実にあり、求人も増えています。年収額は企業側のニーズの高さとエンジニア自身の能力値、業務範囲によって幅がありますが、500万円から600万円、さらにそれ以上を狙うことも可能です。
複数のプログラミング言語やソフトウェアを扱い、ハードウェアやネットワークに関する知識も必要でしょう。業務を円滑に進めるためのコミュニケーション能力や管理能力も不可欠です。
どんなに優れたエンジニアでも、最初はみな未経験者です。まずはひとつのプログラミング言語、ひとつの作業領域を自分のものにして、焦らず着実に「できること」を増やしていきましょう。診断ツールで自分の状態を客観視し、スクールを活用して必要な知識やスキルを習得していくと良いでしょう。