LinuCってどんな試験なんだろう?
取得するメリットはあるのかな…
LinuCは、Linuxを含むシステム構築や運用における知識を認定する資格試験です。受験を検討している人のなかには、どれくらいの難易度なのか、本当に役に立つのかなどといった疑問を抱いている人も多いですよね。
そこで、本記事ではそもそもLinuCとはどんな資格なのか、その特徴を難易度や試験の内容・取得するメリットなども交えわかりやすく解説します。LinuC取得に向けたおすすめの勉強法や同じLinux資格「LPIC」との違いなどを解説するので、ぜひ参考にしてください。
この記事の監修者
フルスタックエンジニア
音楽大学卒業後、15年間中高一貫進学校の音楽教師として勤務。40才のときからIT、WEB系の企業に勤務。livedoor(スーパーバイザー)、楽天株式会社(ディレクター)、アスキーソリューションズ(PM)などを経験。50歳の時より、専門学校でWEB・デザイン系の学科長として勤務の傍ら、副業としてフリーランス活動を開始。 2016年、株式会社SAMURAIのインストラクターを始め、その後フリーランスコースを創設。現在までに100名以上の指導を行い、未経験から活躍できるエンジニアを輩出している。また、フリーランスのノウハウを伝えるセミナーにも多数、登壇している。
本記事の解説内容に関する補足事項
本記事はプログラミングやWebデザインなど、100種類以上の教材を制作・提供する「侍テラコヤ」、4万5,000名以上の累計指導実績を持つプログラミングスクール「侍エンジニア」を運営する株式会社SAMURAIが制作しています。
また、当メディア「侍エンジニアブログ」を運営する株式会社SAMURAIは「DX認定取得事業者」に、提供コースは「教育訓練給付制度の指定講座」に選定されており、プログラミングを中心としたITに関する正確な情報提供に努めております。
記事制作の詳しい流れは「SAMURAI ENGINEER Blogのコンテンツ制作フロー」をご確認ください。
LinuCとは
LinuCとは、Linux技術者としてのスキルを証明できる新しい認定資格です。「LPIC」を提供していたLPI-Japanが2018年3月にスタートさせました。
国際基準の資格試験であるLPICに比べ、LinuCは仮想化技術などシステム開発の現場で使える実践的なスキルを問う試験であると言えます。
LPICが国際基準の資格試験である一方、LinuCは日本で作られている試験のため、問題がわかりやすい日本語で書かれています。また、試験問題も日本のITエンジニアが参加するコミュニティの協力を得て作られており、実践的な試験であるといえます。
LinuCの概要
ここからは、次のトピック別にLinuCの取得試験における概要を紹介します。
試験内容
LinuCはLPICに比べ、クラウド時代における即戦力の証明に重きを置いた資格試験です。試験の技術対象領域は、Linuxに関する知識やスキルだけではなく「クラウド環境」「オープンソースのリテラシー」「システムアーキテクチャ」なども含まれています。
LinuCの試験はレベルによって次の4段階に分かれており、初めて受験する人は、まずLinuCレベル1の合格を目指すことになります。
- LinuCレベル1
- LinuCレベル2
- LinuCレベル3
- LinuCシステムアーキテクト(レベル4相当)
また、LinuCに認定の有効期限はありませんが、5年間の「有意性の期限」があります。
有意性の期限を設けることで「現役のシステム設計・開発・維持にマッチするスキルを保持している」と証明することが可能です。
有意性の期限により、資格の認定から5年以内に同レベルもしくは上位レベルの再認定を受けることが必須となります。上位レベルの認定を受けるときは、下位レベルの有意な認定を持っていることが条件となるため、受験時期には十分注意してください。
対象者
試験は誰でも受験でき、実務経験などの条件はありません。ただし、いきなり上位レベルの試験を受けても、下位レベルの試験認定を取得するまでは上位レベルの試験認定も取得できません。
そのため、初めて受験する場合はLinuCレベル1からチャレンジすることになります。
受験費用
LinuCの1試験あたりにかかる受験費用(税込み)は次のとおりです。
- LinuCレベル1~3:1万6,500円
- LinuCシステムアーキテクト:2万7,500円
各費用の支払い方法は、クレジットカード・コンビニ払い・銀行振込から選べます。
LinuCを申し込むときは「EDUCO-ID」を新規取得し「ピアソンVUE」のホームページで手続きに進みます。詳しくは申込みページを確認してください。
また、団体向けに「受験チケット(バウチャー)の一括購入」という制度があり、50枚以上の受験チケットを一括購入すると5〜10%割引になります。社員が同時に受験するなどのケースで活用してください。
LinuCの難易度
情報処理技術者試験、MicrosoftやOracleが主催する上級試験などと比べ、LinuCの難易度はそれほど高くありません。
エンジニアのITスキルを職種・専門分野ごとに測れるものさしとして、経済産業省が策定した「ITスキル基準(ITSS)」という指標があります。ITSSは難易度でさまざまな資格試験を7段階に分けており、ITSSによるレベル分けは下記のとおりです。
- LinuCレベル1
- LinuCレベル2
- LinuCレベル3
- LinuCシステムアーキテクト(レベル4相当)
上記に挙げた情報処理技術者試験などはレベル4ですが、LinuCの難易度はレベル1〜3と、Linuxの初学者にはチャレンジしやすい試験といえます。
合格点は非公表ですが、65〜75%の正答率が合格の目安と言われています。初学者の学習期間目安は下記のとおりです。
- LinuCレベル1:1〜3ヶ月
- LinuCレベル2:3ヶ月〜半年
- LinuCレベル3:半年〜1年
- LinuCシステムアーキテクト:半年〜1年
難易度や学習期間から考えると、LinuCレベル1は初学者でもしっかり準備をして臨めば、十分合格する可能性があると言えます。加えて、実務経験があるエンジニアであれば、合格はそれほど難しくありません。
一方で、LinuCレベル3は難易度が相当に上がり、転職シーンでも即戦力として十分アピールできるレベルとなります。Linuxやシステムアーキテクチャの設計に関して高度なスキルを持つ証明になるため、実務を積みながら取得を目指しましょう。
なお、次の記事ではレベル別にLinuCの難易度を詳しく解説しているので、良ければ参考にしてください。
LinuCとLPICの違い
次のように、同じLinuxの資格であるLPICとLinuCには試験内容や合否の判定方法などに違いがあります。
LinuCとLPICの難易度はそれほど変わりません。ただし、LinuCはLinuxを含むシステム構築や運用に関する知識やスキルを証明しLPICはLinuxの知識を問う試験のため、学習を通じて習得できるスキルは大きく異なります。
次の点を参考に、どのようなスキル・知識を習得したいのかを考慮し、受験する試験を選びましょう。
- 必要な知識はサーバーの構築・運用かLinuxか
- クラウド・仮想化などの新しい技術を身につけたいか
- システム開発の上流工程を担うシステムアーキテクトを目指すのか
詳しくは次の記事を参考にしてください。
また、LPIC取得済みの場合は、同レベルのLinuCの認定を受けられることがあります。詳しくはLinuC公式サイトでご確認ください。
LinuCにある4つの試験レベル
ここからは、LinuCにある4つのレベルをそれぞれ紹介します。
LinuCレベル1
LinuCレベル1はITエンジニアの基礎となる試験で、仮想環境を含むLinuxの基本操作とシステム管理が行える技術者を認定します。
LinuCレベル1には101試験と102試験の2つがあり、2試験両方に合格するとレベル1に認定されます。2試験を5年以内に両方合格する必要があり、受験する順番は問いません。
試験科目 | 101試験・102試験 |
認定条件 | 101試験・102試験両方の合格が必要 |
学習期間の目安 | 1~3ヶ月程度 |
スキルレベル | ・仮想マシンとコンテナを含むLinuxサーバーの構築と運用・管理ができる ・クラウドのセキュリティを理解し、安全に運用できる ・オープンソースの文化を理解し、業務に活用できる |
LinuCレベル2
LinuCレベル2も基礎的な内容となり、仮想環境を含むLinuxのシステム設計やネットワーク構築において、アーキテクチャに基づいた設計・導入・保守・問題解決ができる技術者を認定します。
LinuCレベル2には201試験と202試験の2つがあり「有意なLinuCレベル1の認定」を持ち、かつ2試験両方に合格するとレベル2に認定されます。加えて、2試験を5年以内に両方合格する必要があり、受験する順番は問いません。
試験科目 | 201試験・202試験 |
認定条件 | 201試験・202試験両方の合格が必要 |
学習期間の目安 | 3ヶ月~半年程度 |
スキルレベル | ・Linuxシステムの設計、構築、監視、トラブルシューティングができる ・仮想マシンやコンテナの仕組みを理解し、その管理と運用ができる ・セキュリティとシステムアーキテクチャの基本を理解し、サービスの設計、構築、運用・管理ができる |
LinuCレベル3
LinuCレベル3は「エンタープライズレベルでの仕事ができる技術者」を認定します。Linuxを使って大規模システム構築・コンサルティングが行えるスキルがあるか確認できる試験です。
LinuCレベル3には300試験・303試験・304試験の3つがあります。レベル1・2と違い、レベル3は3試験すべてに合格する必要はありません。3試験の内いずれか1科目に合格し、かつ「有意なLinuCレベル2の認定」を取得していれば、レベル3として認定されます。
加えて、LinuCレベル3は初回受験が不合格だった場合、同一試験を5,500円(税込み)で再受験できます(1回限り)。
試験科目 | 300試験・303試験・304試験 |
認定条件 | 300試験・303試験・304試験のうち、いずれか1科目の合格が必要 |
学習期間の目安 | 半年~1年程度 |
スキルレベル | 300試験(Mixed Environment) ・Linux、Windows、UNIXの混在環境でのシステムインテグレーションやトラブルシューティングができる ・冗長構成でLDAP、OpenLDAP、Sambaを使ったシステムや認証サーバーを構築できる 303試験(Security) ・Linux環境での認証の技術及びシステムセキュリティを考慮したシステム計画、構成、設計、構築、実装ができる ・セキュアなシステムにするために、ぜい弱性及びその対策を評価し、トラブルシューティングができる 303試験(Virtualization & High Availability) ・仮想化の概念と技術を理解し、Linux/OSSを使って仮想化システムを構築、運用する専門家であることを証明できる ・負荷分散、クラスタ管理、クラスタストレージなどの高可用性のための技術をLinux/OSSを使って構築、運用できる能力を証明できる 304試験(Virtualization & High Availability) ・仮想化の概念と技術を理解し、Linux/OSSを使って仮想化システムを構築、運用する専門家であることを証明できる ・負荷分散、クラスタ管理、クラスタストレージなどの高可用性のための技術をLinux/OSSを使って構築、運用できる能力を証明できる |
LinuCシステムアーキテクト
LinuCシステムアーキテクトは、オンプレ・クラウド・物理・仮想化を含むLinuxの大規模システムのライフサイクル全体を俯瞰し、柔軟かつ拡張可能なアーキテクチャ設計ができる能力があるかを確認する試験です。
LinuCシステムアーキテクトにはSA01試験とSA02試験の2つがあり「有意なLinuCレベル2の認定」を持ち、かつ2試験両方に合格するとLinuCシステムアーキテクトに認定されます。加えて、2試験を5年以内に両方合格する必要があり、受験する順番は問いません。
試験科目 | SA01試験・SA02試験 |
認定条件 | SA01試験・SA02試験両方の合格が必要 |
学習期間の目安 | 半年~1年程度 |
スキルレベル | ・分散システムの処理構造について、典型的なパターンの特長を理解し使い分けられる ・プラットフォーム/ミドルウェア/ネットワーク/ストレージについて、Linux/OSSによる具体的な構成を決定し構築・設定でき、クラウドサービスの機能を用いたりリソースを動的に確保するなどの構成も必要に応じて選択できる。 ・非機能要件のそれぞれを実現するための要素技術を理解し、 Linux/OSSにより実践できる。また、クラウドネイティブな設計アプローチや開発手法を理解し、システムに採り入れられる。 ・安定稼働と継続的開発を見据えた監視やテスト体制を設計し、また運用中のトラブル対応を主導できる。 |
LinuCを取得する3つのメリット
なかには、LinuCを取得すべきか悩んでいる人もいますよね。そこで、ここからはLinuCを取得するメリットを、3つにまとめて紹介します。
就職や転職でアピールポイントになる
1つ目のメリットは、就職や転職でアピールポイントになる点です。
IT業界は就職・転職の際、経験者を優遇するケースがほとんどです。しかし「未経験者であっても資格試験を取得している」ことは、十分アピールポイントになります。
また、資格を取得したことは、基本的な知識が身についている客観的な証明と言えます。経験がなくても、自分で勉強して試験に合格した側面が評価される可能性もあるため、取得して損はありません。
加えて、LinuCは次の点から日本企業への就職を目指す人におすすめといえます。
- 試験内容が現在の開発の現場で必要とされている技術要素に合致している
- 試験問題の品質(問題文のわかりやすさ、漏えい対策など)が高い
日立ソリューションズ・NTTデータ・KDDIなどの大手IT企業でLinuCの取得を推進する動きもあるため、未経験者であれば積極的に資格取得を目指しましょう。
昇進や昇格などにつながる可能性がある
2つ目のメリットは、昇進や昇格などにつながる可能性がある点です。
勤務先が昇進・昇格の条件に資格取得を挙げる企業の場合、すでにITエンジニアとして働いている人でも、資格取得を目指すメリットはあります。
また、先ほど説明したとおりLinuC取得を推進する企業も多く、企業によっては資格手当・報奨金がもらえるケースもあります。
実務で役立つスキルを習得できる
3つ目のメリットは、実務で役立つスキルを習得できる点です。
LinuCの試験勉強をすることで、Linuxだけでなく現代のシステム開発・運用管理の現場で求められるクラウドやセキュリティなどに関連する基本的な知識を身につけられるのは大きなメリットです。
例えば、Linuxを使用するITエンジニアには、インフラ環境の要件定義や構築・運用などの業務があります。実際、試験には上記の業務に不可欠なネットワーク構成、サーバーのセキュリティ対応などに関する内容が出題されています。
LinuCは実務に役立つ内容が多く出題されるため、業務で使えるスキルを習得可能です。
LinuCを取得するための勉強法
下記に、LinuCの取得に向けたおすすめの学習ツールをまとめました。
参考書や勉強サイトを利用して学習する場合、好きなときに学べるメリットがあります。独学が不安な人は、プログラミングスクールで効率的に学ぶのもおすすめです。
なお、LinuCの取得におすすめの参考書・サイトを詳しく知りたい人は、次の記事を参考にしてください。
→ 【レベル別】LinuC取得におすすめの参考書7選!選び方も紹介
→ LinuCの問題集・過去問サイトおすすめ6選!勉強時の注意点も紹介
また、下の記事ではLinuCの取得に向けたおすすめの勉強法を、必要な学習時間も交え詳しく解説しているので、あわせて参考にしてください。
→ LinuCの勉強法ガイド!必要な学習時間や取得に向けたコツも紹介
LinuCに関してよくある質問
最後に、LinuCへまつわる疑問にまとめて回答します。
- LinuCの取得が意味ないと言われるのはどうして?
- LinuCの有効期限はある?
LinuCの取得が意味ないと言われるのはどうして?
結論から言うと、LinuCの取得に意味はあります。
「LinuCを取得しても意味がない」と言われるのは「難易度があまり高くないこと」「ITエンジニアは資格より経験を重視されること」などが原因と考えられます。
しかし、資格取得の際には「基礎的な知識を効率的に学べる」「自分で学習して資格を取得したことがアピールポイントになる」などは大きな利点です。特に未経験者はLinuCを取得するメリットが大きいため、ぜひチャレンジしてみてください。
LinuCの有効期限はある?
先ほど説明したとおり、LinuCに有効期限はありませんが、5年間の「有意性の期限」があります。
上位レベルの試験の認定には、下位レベルの有意な認定を持つことが条件となります。5年も期間が空くと再受験を忘れてしまうケースも考えられるため、十分注意してください。
まとめ: LinuCを取得してLinuxの知識を身につけよう
LPI-Japanが提供するLinuCは、新しく始まった資格なこともあり、これからのクラウド時代を色濃く反映した試験になっています。Linuxを学習しITエンジニアを目指す人は、ぜひチャレンジしてみてください。
「参考書や勉強サイトで独学するのが不安」「専門の講師のもとで効率的に学びたい」と考えている人は、プログラミングスクールを検討するのもおすすめです。
プログラミングスクール「侍エンジニア」では、現役のITエンジニアがマンツーマンで指導し、初学者も挫折させません。不安な点は無料カウンセリングで相談できるため、まずはお気軽にお問い合わせください。
公式サイトで詳細を見る