この記事では、平均年収や必要なスキルも交え、セキュリティエンジニアの仕事内容を解説します。
国内におけるIT人材不足の深刻化を背景に、ITエンジニアであるプログラミングスキルがある人材の需要は増し、他の職種に比べ高い報酬を設けるケースが増えてきました。
なかでも、、セキュリティエンジニアという職種の存在を知り、関心を抱いている人も多いですよね。ただ、実際にセキュリティエンジニアがどんな職業なのか、イメージが湧かない人もいるはず。
そこで、今回はセキュリティエンジニアとはどんな職業なのか、その仕事内容を平均年収や将来性も交えて解説します。セキュリティエンジニアの目指し方も紹介するので、ぜひ参考にしてください。
- セキュリティエンジニアは脅威・攻撃からシステムを守る仕事
- 平均年収は約543万円程度と、国民全体の平均より高水準
- セキュリティエンジニアになるには幅広い知識と豊富な経験が必要
セキュリティエンジニアとは?
セキュリティエンジニアとは、ウィルスや悪意のある攻撃からシステムやネットワーク・データなどを守る仕事を担当するITエンジニアです。ユーザーが安心してシステムを利用できる環境を作る上で、セキュリティエンジニアは重要な役割を果たしています。
セキュリティエンジニアの仕事は、そのシステムを利用するユーザーの目には触れません。このような仕事を「バックエンド」と呼びます。したがって、セキュリティエンジニアはバックエンドエンジニアの一種ということもできます。
セキュリティエンジニアの仕事内容
ここからは、セキュリティエンジニアの主な仕事内容を、5つにまとめて紹介します。
情報セキュリティポリシーの策定
セキュリティエンジニアの仕事内容の一つとして、情報セキュリティポリシーの策定があります。総務省によると、情報セキュリティポリシーとは下記のようなものです。
情報セキュリティポリシーとは、企業や組織において実施する情報セキュリティ対策の方針や行動指針のことです。情報セキュリティポリシーには、社内規定といった組織全体のルールから、どのような情報資産をどのような脅威からどのように守るのかといった基本的な考え方、情報セキュリティを確保するための体制、運用規定、基本方針、対策基準などを具体的に記載するのが一般的です。
引用:総務省「情報セキュリティポリシーの概要と目的」
情報セキュリティポリシーの一例としては、「社内PCに外部から持ち込んだUSBメモリを接続できないようにする」「重要情報には役職者以外アクセスできないようにする」といった規則などが挙げられます。
セキュリティエンジニアは情報セキュリティポリシーを適切に定めることで、企業内のデータやシステムを保護できるようにします。
セキュリティを考慮したシステムの設計
セキュリティを考慮したシステムの設計も、セキュリティエンジニアの重要な業務の一つです。セキュリティリスクを最小限に抑えながら、必要な機能と性能を提供するシステムを構築します。
セキュリティは高ければ高いほどよいというわけではなく、多くの場合利便性とのトレードオフとなります。極端な話、ログインに20桁のパスワードが必要なシステムは安全性は高いですが使いにくいですよね。必要十分なセキュリティを確保した上で、使いやすいシステムになるように配慮して設計します。
また、データ保護や不正アクセス防止といったサイバーセキュリティ対策も必要です。通信の暗号化やファイアウォールの設置などによって外部からの攻撃を防ぎます。
設計したシステムの実装
設計が完了したら、それに基づいて実際にシステムを構築します。具体的な作業は、必要なハードウェアやソフトウェアの導入、セキュリティ部分のコーディングなどです。
セキュリティエンジニアは担当範囲が広いため、実装は他の開発者に任せることもあります。その場合、セキュリティエンジニアはそれらの成果物をレビューする役割にまわります。
実装されたコードだけでなく、使用しているライブラリやフレームワークなどに脆弱性が含まれていないかをしっかり確認することが重要です。
実装したシステムのテスト・運用
システムの実装が完了したら、そのシステムが設計通りに機能するか、そしてセキュリティ要件を満たしているかを確認するためにテストを行います。機能テストや負荷テストなどに加えて、脆弱性診断とも呼ばれるセキュリティ検査を実施します。
脆弱性とは、プログラムの不具合や設計ミスにより発生したサイバーセキュリティ上の欠陥のことです。脆弱性をそのままにしておくと、攻撃者にそこを狙われてハッキングやデータ改ざんの標的にされてしまいます。
テスト段階でしっかりと脆弱性を洗い出し、プログラムの修正やライブラリのバージョンアップなどによって対策しておくことが重要です。
実装したシステムの管理・保守
システムが運用フェーズに入ったら、継続的な管理と保守が必要です。具体的には、セキュリティパッチの適用やシステムのアップデート、セキュリティ監視などを行います。
ウィルスやハッカーらの攻撃手法は日々進歩しています。そのため、セキュリティ対策は一度実施して終わりではなく、継続的なアップデートが必要です。
使っているライブラリの新たな脆弱性や最新の攻撃手法などについて日頃からアンテナをはっておき、常に万全の状態を維持することが重要です。
セキュリティエンジニアの平均年収
セキュリティエンジニアの平均年収は、正社員の場合で約543万円です。
日本全体の一般労働者の平均年収が約442万円(※1)、ITエンジニア全体の平均年収が480万円(※2)である点を踏まえれば、セキュリティエンジニアの給与水準は比較的高い傾向にあるといえます。
求められる専門性の高さは年収が高い理由の1つ
セキュリティエンジニアの年収が高い理由として、求められる専門性の高さが挙げられます。
サイバーセキュリティの脅威は日々進化しており、それに対応するためには最新の技術トレンドを常に追いかけ、新しい攻撃手法に対する防御策を研究し続ける必要があります。また、セキュリティインシデントが発生した際の迅速な対応や、事前のリスク分析といった能力も求められます。
これらの高度なスキルや専門知識を得るには、長年の経験や継続的な学習が必要です。こういった稀少性が、高い報酬につながっていると考えられます。
専門性を磨けば年収はさらに増す
セキュリティエンジニアの中でも、さらに専門性を磨き、上流工程の仕事を担うことができる人材は、より高い年収を期待できます。具体的にはホワイトハッカーやセキュリティコンサルタントといった仕事です。
ホワイトハッカーは、企業や組織の依頼を受けて、そのセキュリティシステムをテストする専門家です。彼らは、悪意のあるハッカー(ブラックハッカー)と同様の技術や手法を用いてシステムの脆弱性を探し出しますが、その目的はシステムを守ることにあります。
セキュリティコンサルタントは、企業のセキュリティポリシーの策定やリスク管理計画の立案、セキュリティシステムの設計といった、より戦略的な役割を担います。彼らは企業のセキュリティ体制全体を見渡し、経営層に対してセキュリティに関する専門的なアドバイスを提供します。
高い年収を狙いたい人は、最終的な目標としてこれらのポジションを目指すというのも選択肢の一つです。
セキュリティエンジニアの需要・将来性
現在のセキュリティエンジニア需要は高いといえます。これはセキュリティエンジニアが高い専門性を要求され、誰にでもなれる職業ではないからです。
IPAの「情報セキュリティ白書2023」からもわかるとおり、高度なサイバーセキュリティスキルを備えた人材の不足は深刻な状況です。
日本における2022年のサイバーセキュリティ関連従事者は約38.8 万人と推定され、40.4%増加しているが、サイバーセキュリティ人材の不足は 5.6 万人で、前年よりも37.9%不足数が増加している。
引用:IPA「情報セキュリティ白書2023」
裏を返すと、高度なサイバーセキュリティスキルを得られれば、多くの企業から好待遇を提示されることが期待できます。
今後も高い将来性が期待できる
セキュリティエンジニアは今後も高い将来性が期待できるでしょう。なぜなら今後どのようなシステムにも、情報セキュリティ対策は必須であるからです。
情報セキュリティ対策の重要性は、総務省も喚起しています。
企業や組織にとって、情報セキュリティに対するリスクマネジメントは重要な経営課題のひとつと考えなければなりません。特に、個人情報や顧客情報などの重要情報を取り扱う場合には、これを保護することは、企業や組織にとっての社会的責務でもあります。
引用:総務省「情報セキュリティ対策の必要性」
近年のAI技術発達により、エンジニアの仕事の一部はAIに取って代わられるといわれていますが、セキュリティエンジニアの高度なスキルはまだまだAIで代用できるものではありません。当面はセキュリティエンジニアの需要が低下することはないと考えられます。
他ITエンジニア職種へのキャリアパスも豊富
セキュリティエンジニアは、他のITエンジニア職種へのキャリアパスも豊富にあります。セキュリティの知識やスキルは幅広い分野で有用だからです。
一例を挙げると、下記職種への転身が可能です。
ITエンジニア職種 | 説明 |
ネットワークエンジニア | ネットワークのセキュリティに関する深い知識を持っている点から、ネットワークエンジニアへの転換は比較的容易といえる。 |
システム管理者 | システムの保護に関する知識を持っている点から、システム管理者としての職務も適任とされます。 |
プログラマー | セキュリティの高いコードを書けるスキルがあれば、プログラマーとしても重宝される。 |
セキュリティエンジニアに求められる知識の範囲が広い分、学んだことをさまざまな領域で発揮できる点は大きな強みであるといえます。
セキュリティエンジニアになるには
セキュリティエンジニアとしてのキャリアを築くには、段階をおってスキルや知識を積み重ねる必要があります。そのため、未経験からいきなり目指せる職種ではないことは理解しておきましょう。
セキュリティエンジニアになるまでの具体的な道のりは下記のとおりです。
- 1.ネットワークセキュリティ関連の資格を取得する
- 2.セキュリティオペレーターとして経験を積む
- 3.セキュリティアナリストにキャリアアップする
- 4.セキュリティエンジニアに転身する
このように複数のステップを踏む理由は、セキュリティエンジニアに求められるスキルの幅が多岐にわたるためです。システム・ネットワーク・脆弱性診断など、セキュリティに関するあらゆる分野を理解するためには、オペレーターやアナリストを経て着実に経験を重ねる必要があります。
なお、セキュリティエンジニアになる具体的な手順は次の記事で詳しく解説しているので、良ければ参考にしてください。
セキュリティエンジニアにまつわるFAQ
最後に、セキュリティエンジニアによくある質問へまとめて回答します。
セキュリティエンジニアを目指すうえで取得すべき資格は?
セキュリティエンジニアを目指すうえでは、言うまでもなくセキュリティ関連の資格が有効です。セキュリティ関連資格には下記のようなものがあります。
資格名 | 概要 |
CompTIA Security+ | 国際的に有名なセキュリティ資格で、設計・実装・運用と幅広い知識が問われる |
情報処理安全確保支援士試験 | サイバーセキュリティ全般に関する知識が問われる国家資格 |
情報セキュリティマネジメント試験 | ・企業や組織内で必要なセキュリティ対策やセキュリティポリシーに関する基礎知識が問われる国家資格・システムセキュリティの担当者向けの試験 |
初心者の人は、セキュリティの基礎を問われる情報セキュリティマネジメント試験を受けてみるとよいでしょう。他の2つは少し難易度が高すぎるかもしれません。
セキュリティエンジニアは「やめとけ」という噂は本当?
セキュリティエンジニアはシステムの根幹部分に関わる重要な仕事を担います。必然的に、トラブルが発生した際に問われる責任も大きくなります。
また、そもそもセキュリティエンジニアになるまでに相当な学習や努力が必要です。これらのことから、セキュリティエンジニアを目指すことに否定的な意見が出ることもあります。
しかしセキュリティエンジニアの仕事は、ユーザーが安心してシステムを利用するために必要不可欠なものです。大変な分、無事に仕事を完遂できたときの達成感は大きいでしょう。
また高いスキルが問われる分、給与面などで好待遇を期待できます。中途半端な覚悟で臨める仕事ではありませんが、やりがいや高収入を求める人にはおすすめです。
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今回はセキュリティエンジニアの仕事内容や平均年収、キャリアパスなどについて解説しました。
セキュリティエンジニアは幅広い知識と豊富な経験が必要な難しい仕事です。しかし担い手が少ない分、売り手市場ですし給与水準も高い傾向にあります。
初心者の人がいきなり目指す職業ではありませんが、さまざまな経験を積むなかで特にセキュリティについて興味関心を持った人は、最終的な目標としてセキュリティエンジニアを目指してみてはいかがでしょうか。
本記事の解説内容に関する補足事項
本記事はプログラミングやWebデザインなど、100種類以上の教材を制作・提供する「侍テラコヤ」、4万5,000名以上の累計指導実績を持つプログラミングスクール「侍エンジニア」を運営する株式会社SAMURAIが制作しています。
また、当メディア「侍エンジニアブログ」を運営する株式会社SAMURAIは「DX認定取得事業者」に、提供コースは「教育訓練給付制度の指定講座」に選定されており、プログラミングを中心としたITに関する正確な情報提供に努めております。
記事制作の詳しい流れは「SAMURAI ENGINEER Blogのコンテンツ制作フロー」をご確認ください。
この記事の監修者
フルスタックエンジニア
音楽大学卒業後、15年間中高一貫進学校の音楽教師として勤務。40才のときからIT、WEB系の企業に勤務。livedoor(スーパーバイザー)、楽天株式会社(ディレクター)、アスキーソリューションズ(PM)などを経験。50歳の時より、専門学校でWEB・デザイン系の学科長として勤務の傍ら、副業としてフリーランス活動を開始。 2016年、株式会社SAMURAIのインストラクターを始め、その後フリーランスコースを創設。現在までに100名以上の指導を行い、未経験から活躍できるエンジニアを輩出している。また、フリーランスのノウハウを伝えるセミナーにも多数、登壇している。