この記事では作り方も交え、レスポンシブWebデザインの特徴を解説します。
レスポンシブWebデザインってどういうもの？
初心者からでも作れるのかな？
Webデザインを学んでいくなかで「レスポンシブ」という言葉を見聞きする機会が増えた人も多いのではないでしょうか。
レスポンシブWebデザインはパソコンやスマートフォン・タブレットの画面幅に応じた最適な形で、Webサイトを見せる技術です。とはいえレスポンシブにすると何が良いのか、実際にどうWebサイトへ実装すればいいのかなど、あいまいな点が多い人もいますよね。
そこでこの記事ではメリット・デメリットも交え、レスポンシブWebデザインの特徴を解説します。レスポンシブWebデザインの作成手法や作り方も紹介するので、ぜひ参考にしてください。
- レスポンシブWebデザインは、端末の画面幅に応じてサイトの見え方を最適化できる
- スマートフォンが普及した現代には必須の技術
- 独学・スクールのどちらで学ぶかは目的による
レスポンシブWebデザインとは
レスポンシブWebデザインはCSSとHTMLを使い、どのようなサイズの画面上でもサイトを自動的に見やすく調整する技術です。
スマートフォンの登場から間もないころは、一つのサイトをパソコン用とスマートフォン用に作り分けていました。しかし、レスポンシブの登場により、一つのCSSとHTMLを作るだけで済むようになったのです。
こうしたコーディング力は、Webデザイナーに求められがちなスキルでもあります。
レスポンシブWebデザインのメリット3つ
ここからはレスポンシブWebデザインのメリットを、3つにまとめて解説します。
今ではサイトのレスポンシブ化は当然の流れが生まれていますが、その理由は多くのメリットを享受できるためです。
メリット1：端末に応じて表示が最適化される
端末に応じて、表示が最適化されることのメリットは次の通りです。
- 操作の快適さ：あらゆる端末で最適な表示がされれば、スクロールやズームの手間が省けるため、快適にサイトを閲覧できます。
- 販売の促進効果：小さな画面上でも快適に利用できるため、スマートフォンからの購入や申し込みが増える可能性があります。
- 未知の端末にも対応しやすい：新しい端末が登場しても、レスポンシブWebデザインなら柔軟に対応できます。追加の開発作業が不要な場合が多いです。
こうしたメリットにより、レスポンシブWebデザインは多くのサイトで導入されています。
総務省の「令和3年 情報通信白書」によれば、インターネットへのアクセスはスマートフォンが68.3％。次いでパソコン、タブレットなどの画面サイズの異なる端末が並びます。今や、スマートフォンへの対応（レスポンシブ化）は必須だといえます。
メリット2：サイトの管理を効率化できる
サイトの管理が効率化すれば、制作者とクライアントにたいして次のようなメリットが生まれます。
- 更新が簡単になる：レスポンシブWebデザインは、1つのCSSとHTMLですべての端末に対応するため、サイト更新の際、複数のファイルを管理する手間が省けます。
- 新しい端末への対応：将来新しい端末が登場しても、レスポンシブWebデザインなら比較的少ない手間で対応できます。これにより、追加の開発費も抑えられます。
サイト運営者には、問い合わせ対応や広告運用などの多くの仕事があるため、各工程を効率的に進められることはメリットです。クライアントにとっては、新しい端末が登場した際に新たにサイトを作らなくて済むことが、サイト運営費用の節約に繋がります。
メリット3：SEOへの対策につながる
サイトが検索結果の上位に表示されれば、SEO（Googleといった検索エンジンでサイトを上位表示させる技術）の観点で次のようなメリットがあります。
- 認知度の向上：検索結果の上位に表示されれば、多くの人がサイトを閲覧します。これは会社やブランド名の認知向上に繋がります。
- 売り上げの向上：多くの人がサイトを訪れれば、商品やサービスが購入される可能性が増します。
- 信頼性の向上：ユーザーは上位表示されているサイトを信頼する傾向があるため、競争力が高まります。
また、Googleはモバイルファーストインデックス（以下MFI）を推進しており、公式に次の説明がされています。
Googleのインデックス登録とランキングでは、スマートフォン エージェントでクロールしたモバイル版のサイト コンテンツを優先的に使用します。これをモバイルファースト インデックスと呼びます。
Google 検索セントラル
要するに、この文章はGoogleはスマートフォン用のサイトを基準に検索順位を決定しますという意味です。
MFIの影響で、スマートフォン向けに最適化されていないサイトはSEO的に不利な結果に。レスポンシブ化以外の対策に注力しても、検索上位は獲得できません。
レスポンシブWebデザインなら、あらゆる端末でサイトの表示が最適化されるため、検索順位の低迷を防ぐことができます。
レスポンシブWebデザインのデメリット3つ
メリットに続き、ここからはレスポンシブWebデザインのデメリットを、3つにまとめて紹介します。
デメリット1：初期制作段階は労力とコストがかかる
労力とコストがかかることには、制作者とクライアントの双方に次のようなデメリットがあります。
- リソースの圧迫：コーディングとデザインの複雑さが増すため、制作チームのリソースが圧迫されます。
- 人件費の増加：多くの作業が必要になるため、人件費が増します。
- 長期間の制作：あらゆる端末に対応するための検証・調整が必要なため、制作期間が延びます。
制作工程が多いレスポンシブWebデザインは、レスポンシブ化されていないサイトよりも制作費が高額になります。しかし、高額な制作費用と長期間の制作は、クライアントにとって望ましくないことが多いです。
デメリット2：デザインの自由度が低い
デザインの自由度が低くなる点も、レスポンシブのデメリットです。具体的にはデザインの自由度が低くなることで、次のようなデメリットが生まれます。
- ブランドイメージの損失：世界観が充分に表現されないことで、個性がぼやける可能性があります。特にラグジュアリーブランド・ビューティー・アーティスト・エンターテイメント等のサイトでは避けたいところです。
- 競争力の低下：視覚的な魅力が乏しいサイトはユーザーの関心を惹きにくく、競争力が低くなります。
レスポンシブWebデザインは、1つのHTMLファイルですべての端末に対応するため、端末ごとに大きく構成を変えることができません。
どの画面から見ても正しく表示されることを優先すると、適応できるデザインはありふれたものになりがちです。複雑なデザインにすると、特定の端末で表示が崩れるリスクがあるため、見せ方にとことんこだわりたい場合には不向きです。
デメリット3：表示速度が落ちる可能性がある
表示速度が落ちる可能性がある点も、レスポンシブのデメリットです。具体的には表示速度が落ちることで、次のようなデメリットが生まれます。
- ユーザーがページから離脱する：表示速度の遅さは、ユーザーがサイトを離れる原因になります。サービスの購入やフォーム送信の前に離脱すれば、サイトの目的が損なわれます。
- 再訪問率の低下：一度でも表示が遅いと感じたユーザーは、再訪問する可能性が下がります。
- 検索順位の低下：検索エンジンはサイトの読み込み速度を評価に含めるため、表示が遅いサイトは検索結果の順位が下がり、訪問者が減少します。
レスポンシブWebデザインは、1つのCSSがすべての端末に対応するため、ファイルには多くのコードが書かれています。また、画像はパソコンでも綺麗に見えるよう、高解像度のものを使用します。主に、これらが原因でサイトの表示が遅くなります。
表示速度を上げるには画像解像度を下げたり、タブレットにはスマートフォン用の記述を読み込ませるなど、サイト表示にかかる時間を短くする配慮が必要です。
レスポンシブWebデザインの作成手法4つ
ここからはレスポンシブWebデザインの主な作成手法を、4つにまとめて紹介します。
レスポンシブレイアウト
- 表示切替サイズ（ブレイクポイント）を数値で指定する
- 画面幅を指定して一部コンテンツを表示・非表示にできる
レスポンシブレイアウトは、端末ごとの画面幅を指定し、そのサイズになれば自動的に画面表示を切り替える方法です。
パソコンでサイトを閲覧した際、画面を縮小したら急にサイト表示が変わることがありますよね。あれは、レスポンシブレイアウトが使用されているからです。
この方法には、端末ごとに表示するコンテンツを増やしたり減らしたりできるメリットがあります。
リキッドレイアウト
- サイトが画面の幅いっぱいに表示される
- 横スクロールがない
- 全ての端末で同じ要素が表示される
リキッドレイアウトは、サイトの各表示単位を％で記載することで、画面幅に応じて表示を変更します。サイトが画面の幅いっぱいに表示され、横スクロールもありません。
レスポンシブレイアウトとの違いは、一部コンテンツを非表示することができない点です。
情報量が多いサイトの場合、全てのコンテンツが表示されることでスマートフォンでの縦スクロールが増えすぎてしまい、それがユーザー離脱の原因になる可能性もあります。しかし、情報量が多くなりすぎない限り、パソコンから見た時と同じ情報を提供できるのはメリットともいえます。
フレキシブルレイアウト
- 全ての端末で同じ要素が表示される
- 指定したサイズを上回る画面では、左右に余白を作れる
フレキシブルレイアウトもリキッドレイアウトと同じく、各要素サイズを％で指定します。しかし、最小幅と最大幅も指定できる点がリキッドレイアウトとの違いです。
なぜこの最小幅と最大幅を指定するかというと、大きなパソコンの画面でサイトを見ると、各要素が大きく表示されすぎて見づらくなることがあるためです。この問題を避けるために、指定した横幅以上に大きな画面では左右に余白をつけ、見やすさを維持できるところが利点です。
グリッドレイアウト
- 一覧性が高い
- 整然とした統一感のある印象が出る
行と列に分け、ボックスを整然と配置してレイアウトする方法をグリッドレイアウトと呼びます。元々は雑誌や新聞のレイアウトに使われていただけに、統一感のあるデザインを作ることに長けています。
一方でデザインの自由度が低く、コンテンツごとの強弱を表現しにくいデメリットもあります。一覧性が高く、一度に多くの情報を表示できるため、情報量が多いサイト向けだといえるでしょう。
ただし、情報量が極端に多い、もしくは少ない場合にはUXが損なわれるため注意が必要です。
レスポンシブWebデザインの作り方【3ステップ】
ここからはレスポンシブWebデザインの作り方を、3つのステップにまとめて紹介します。
- ステップ1：対応させる端末サイズを決める
- ステップ2：HTMLファイルにmeta viewportタグを追加する
- ステップ3：CSSファイルに表示方法を記述する
ステップ1：対応させる端末サイズを決める
まずはパソコン、スマートフォン、タブレット等に対応させるサイズを決めます。一般的には次のサイズ指定がされています。
| スマートフォン | ~599px |
| パソコン | 1,025px以上 |
| タブレット | 600~1,024px |
タブレットは普及率が低いため、パソコンとスマートフォンのみに対応しているサイトも多いです。初めのうちは、パソコンとスマートフォンのみに対応させると効率的です。
ステップ2：HTMLファイルにmeta viewportタグを追加する
次に、HTMLの＜head＞タグ内にviewport（ビューポート）と呼ばれるmetaタグを記述します。このタグで、端末に合わせてサイト表示を切り替えます。
<head>
<meta name=”viewport” content=”width=device-width,initial-scale=1.0″>
</head>これは、レスポンシブWebデザインには必須の記述だと覚えておきましょう。
HTMLの基礎を知りたいかたは、こちらも合わせてお読み下さい。
→ HTMLの書き方を初心者向けに徹底解説！ルールや基本を総まとめ
viewpotについて詳しく知りたいかたはこちらを参考にして下さい。
→ vhやvw単位で大きく変わる！CSSデザインについて解説
ステップ3：CSSファイルに表示方法を記述する
次に、CSSにメディアクエリと呼ばれる記述をします。これで、デバイスの画面幅に応じたCSSスタイルが適用されます。
@media screen and (min-width:480px) {
/*画面幅が480pxまでの記述*/
}@media screen and (min-width:1024px) {
/*画面幅が1024pxまでの記述*/
}あとはHTMLを記述すれば、CSSで指定したレイアウトが画面幅ごとに反映されます。
なお、CSSがわからないかたはこちらの記事を参考にして下さい。
レスポンシブWebデザインの勉強方法4つ
ここからはレスポンシブWebデザインの主な勉強方法を、4つにまとめて紹介します。
方法1：無料の学習サイトを活用する
- 費用がかからない：有料コースを利用しなくても質の高い学習ができる。
- アクセスしやすい：インターネットがあれば、時間も場所も問わず自分のペースで学べる。
- 段階的に学べる：入門レベルから段階的にレベルアップできる。
- 選択肢が幅広い：CSS/HTMLだけでなく、プログラミングやデザイン、ツールの使い方など幅広い学習が可能。
無料の学習サイトは、レスポンシブWebデザインを勉強する方法の1つです。
ネット上には、無料でレスポンシブWebデザインを学べるサイトがたくさんあります。動画解説や画像とテキストで学べるものなど、試しに次のような無料サイトを活用してみるのがおすすめです。
有料コースにもメリットとデメリットがあるため、加入する場合は、条件が自分の目的に合っているかを確認する必要があります。
上記を含め、Webデザインが学べるおすすめの無料学習サイトを詳しく知りたい人は、次の記事を参考にしてください。
方法2：本で勉強する
- 体系的な学習：一貫性のあるカリキュラムに基づいて書かれているため、初心者も段階的に学習を進められる。
- 詳細な説明：本はインターネットよりも深い解説がされていることが多い。
- 信頼性が高い：有名な著者や出版社の本は、質の高い情報が提供されていることが多い。
本・書籍も、レスポンシブWebデザインを勉強する方法の1つです。
CSSやHTMLの参考書は数多く出版されています。参考書の利点は、情報が体系的にまとめられているところです。
これからレスポンシブWebデザインを勉強しようと考えている人は1冊持っておくと良いでしょう。なお、おすすめの書籍は以下の3冊です。
レスポンシブWebデザイン入門 マルチデバイス時代のWebデザイン手法
- レスポンシブWebデザインという言葉は知っていても、詳しいことはわからない、制作は初めてという人向け。
- テキストだけでなく画像を織り交ぜた分かりやすい解説も魅力的。
- レイアウトと、その作り方が解説されているので、本に掲載されたサンプル作りながら学べます。
本は他の学習手段を組み合わせることで、バランス良く課題を進めることができます。コーディングは基礎が大切。難しく考えず、基本がしっかり解説された本を選んでください。
また、あまりにも古い本は今では役に立たない知識が記載されている場合があるため、できるだけ新しいものを選びましょう。
上記を含め、Webデザインが学べるおすすめ本をより詳しく知りたい人は、下の記事を参考にしてください。
方法3：動画で勉強する
- 無料で利用できる：優れたコンテンツが無料で何度でも視聴できる。
- 視覚・聴覚で理解できる：目で見て学べ、丁寧な言葉で解説されているので学びが進みやすい。
- 多彩なコンテンツ：目的に沿った学習動画が数多く見つかる。入門から上級レベルまで幅広い学習ができる。
YouTubeの動画も、レスポンシブWebデザインを勉強する方法の1つです。
YouTubeでは、数多くのチャンネルがレスポンシブWebデザインのチュートリアル動画を配信しています。入門者から上級者向けのものまで幅広く配信されており、自分のペースで勉強を進められるところが魅力です。
なお、次のチャンネルはレスポンシブWebデザインを学ぶのにおすすめです。
- Webデザイナーに必要なスキルや知識を幅広く配信するチャンネル。
- 配信者のヒロさんは、HTML/CSSの本も出版している。
- 動画は長くても15分程度なので、疲れず視聴できる。
YouTube動画での学習は、段階的な学習をいかに補完するかが課題です。ほかの学習手段と組み合わせて、徐々にレベルアップしていきましょう。
方法4：テンプレートを模写・改造してみる
- 実践的に学べる：完成されたコードを編集することで、初心者も何をどの箇所に記述すれば良いかを実感できる。
- 直感的理解の補助：テンプレートを模写・改造する過程で、直感的に理解が進む可能性がある。
テンプレートの模写や改造も、レスポンシブWebデザインを勉強する方法の1つです。
本や動画、無料講座で効率よく学ぶには、実際にコーディングしてみることが欠かせません。そんな時こそテンプレートの模写・改造（模写コーディング）が活かせます。
おすすめの無料テンプレート配布サイトを紹介しますので、実践的な学習の参考にして下さい。
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模写コーディングの詳しいやり方を知りたい人は、こちらもあわせてお読みください。
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まとめ
今回はメリット・デメリットも交え、レスポンシブWebデザインの特徴を解説しました。
初心者の頃は、レスポンシブWebデザインの習得に不安を感じるかもしれません。しかし、コーディングの基礎を理解すれば、決して難しくないことがわかります。
今や、レスポンシブWebデザインはマークアップエンジニアの必須スキル。習得すれば、Web業界での副業や転職、独立時に役立ちますよ。
本記事の解説内容に関する補足事項
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この記事の監修者
株式会社SAMURAI
情報系の大学を卒業後、HR関連のサービスを複数展開する事業会社に勤務。コミュニケーションデザイン領域のデザイナーを4年ほど務め、LPやバナーデザインの制作、コーディング等を経験。現在は株式会社SAMURAIでWebデザイナーとして、バナーデザイン制作やLP改善、Instagram運用等に従事。
